第3話 ギャルを亀甲縛り
「とにかく外に出ることは必須として、ここにはもう帰ってこれないよな」
狭いながらも我が家。就職して上京して、ずっと住み続けてきた家だ。愛着がないわけじゃない。だけど、ここには嫌な思い出ばかりが詰まっている。
リュックの中に下着、シャツ、ズボンを詰め込む。
使えそうな物は、ライター、果物ナイフ、爪切り、万能鍋、ガスコンロ、ガスボンベをリュックに巻き付ける。
「結構重量はあるけど、全然重く感じない。ステータスを上げた効果だよな。この家で使えそうな物はこれぐらいだ」
飲み物はビールとミネラルウォーターだけ。どっちもヌルくなっているが、無いよりはマシだろう。
準備は整った。
だが、窓の外を見れば、瓦礫だらけの街並み。遠くには黒い塔がそびえ立ち、モンスターの咆哮が響いている。
「ハァ〜普通、ビビるんだろうな。だけど、俺の心は鞭をあいつらに振るったらどうなるんだろうという気持ちだけだ」
オークを倒した時は吐いた。だけど、あの時の快感は忘れられない。
外に出なければ、あの快感が何度も味わえる。
だけど、その度に自分の命も狙われる。食料も寝る場所も確保しないと、それに生き残るためには、あの黒い塔の謎を解明しないといけないのかな?
「……やるしかないよな」
そう呟きながら、腰に革の鞭を括りつけた。ドアノブに手をかける。
廊下から足音が聞こえてきた。
「モンスターか?」
玄関を開けると、目の前にいたのは緑色の肌をしたモンスターだ。
「やめて! やめてよ〜」
「ギャギャ!」
緑色の肌をしたモンスターに人が襲われている。声からして女性だ。服を破られ、体を押さえつけられているようだ。
誰かが襲われているのに、俺はそれを冷静に分析していた。
玄関を開けたまま他にモンスターはいないのか? 左右の確認をして安全だと思って飛び出した。
金髪のギャルが小学生ぐらいの身長をした緑色の肌にツノが生えた醜悪な顔をしたモンスターに襲われている。
「ゴブリンだな」
俺は躊躇うことなく鞭を振るう。ゴブリンは、鞭を喰らって吹っ飛んだ。
オークと戦った時よりも、明らかに威力が上がっている。スキルを獲った影響なのか、鞭をどうやって扱えばいいのかも体が理解している。
「くくくあははははは」
気付けば笑っていた。俺が振るった鞭でモンスターが簡単に死ぬ。魔石と葉っぱになったゴブリン。その姿に高揚感が込み上げてきた。
あの動画に出てきた女王様のように、今の俺は笑えている。
さらに角から二匹のゴブリンが現れた。
今度は二匹のゴブリンに鞭を振るう。少しだけ加減を調整して、一撃では倒さない。
「ギャギャ!」
「ギュー!」
鞭は俺が思った通りに動いてゴブリンを瀕死にしてくれる。ピクピクと死ぬ寸前のゴブリンの一体に魔法を使う。
「火属性魔法:ひのこ」
ファイアーボールとでもお言えばカッコ良いのかもしれないが、俺が出せるのは蝋燭の火程度だ。それでもゴブリンの一体に着火して倒してくれた。
どういう原理なのかはわからないが、上手くいった。
「おい、そこの」
「ふぇ??」
自分が声をかけられると思っていなかったのか、金髪ギャルに声をかける。
「そうだ。このゴブリンを殺せ」
ギャルがモンスターを殺せば、固有ジョブを得られる。戦力増強ができるかもしれない。この状況はギャルにとっても助かるだろう。
「えっ?!」
俺の言葉に絶望を感じたような顔をする。
「いや、あの私……」
見た目に反してオドオドとした話し方をするギャルに違和感を覚える。
「お前、さっき襲われていたのを忘れたのか?」
「それはそうなんだけど……」
恐怖からかギャルは立ちあがろうとしない。俺はその態度に苛立ちを感じる。
「最後の忠告だ。さっきの声を聞いただろ?」
「はっ、はい!」
オドオドしたギャルっているのか?
「でっ、でも、難しく何を言われているのかわからなくて」
「はっ?
どうやら聞いていたようだが、理解はしていないようだ。
「ハァ〜簡単な話だ。世界は変わって、魔物が溢れるようになった。そして、お前がこいつを殺せば、力が手に入る。死にたくなければ、殺せ」
「えっ! 生き物を殺すんですか?」
先ほどと同じように絶望したような顔をする。どうやら命を奪うことに対して恐怖を感じているようだ。
どこか弱々しく、恐怖している顔に次第に怒りが湧いてくる。こっちは親切にやっているだけだ。それなのに動こうとしない。
俺は力を手に入れたんだ。なら相手の顔色を窺って、意見を聞く必要はないよな。
「拘束の縄よ。こんな女を縛れ」
《拘束の縄、亀甲縛りバージョンを発動する》
火属性の魔法に続いて試したかったから丁度いい。
「ひゃっ!?」
金髪ギャルは、制服だった物がゴブリンによって破かれて、上半身はブラだけ、下半身はスカートの状態で亀甲縛りされる。
「なっ!? 何するんですか? やめてください」
背徳的な状況で泣きそうな顔をしているギャルは動画に出てくる鞭だ叩かれる男のようだった。
「黙れ!」
「ひぅっ!」
俺が怒鳴ったことで、大人しくなるギャル。
見た目に反してどこまでも気弱なギャルに、俺は拘束の縄を操作して倒れているゴブリンの上に落とした。
「キャッー!」
寸前まで悲鳴をあげて泣き顔を浮かべていた。俺はその一つ一つに言いしれぬ高揚を感じてしまう。
「えっ、なにこれ!?」
ギャルが降ってきたことでゴブリンは魔石になった。
「また頭の中に声が聞こえる」
《最初の討伐を確認。ジョブ「ハウスキーパー」を授与します》
「これなんですか?」
彼女の言葉に俺は頬を緩めた。どうやらこの方法でも、倒したと認定は受けられるようだ。
「それが最初の声が言っていた力だ。お前はいいな。素質がある」
「素質?」
「ああ、俺の奴隷にならないか?」
「ドレイ? 奴隷!!!」
意味がわかって絶叫するが、俺はこのギャルを奴隷にしたい。
俺の心がそれを望んでいる。
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