第4話
そして、凉藍はその時どうすればいいのかを知っている。それは自分が辛い時にして欲しいことだ。凉藍は今も尚、泣きじゃくる幸宮の隣に座り彼女の膝で服をぐしゃぐしゃにしている手を優しく包み込んだ。驚いている幸宮に凉藍の出来る限り、優しい顔をして口を開いた。
「…人を叩いた時、叩かれた相手も叩いた方の手も痛くなる。そんな言葉があるけど、貴女の手と心も私と同じように痛かったのよね?許すも何も、もう家も出てそれはもう過去の話しよ幸宮。だから、過去のことはもう水に流してこれからは前より一層仲良くしてくれる?」
「え、いいのですか?だって私…!」
「良いも悪いも……貴女は何も悪く何て無いもの。許さないという方が無理なのではなくて?」
凉藍は少々、子供っぽく微笑む。流石に品がなかったかと心配になったが、その考えは杞憂だったようだ。幸宮の方を見やると泣きそうな顔をしながら「ありがとうございます!お嬢様!」と嬉しそうに微笑んでいた。
(良かったわ…これで幸宮……いいえ、
そして、それを皮切りに私と夏楓は雫家に着くまで仲良く話した。
(でも、本当に夏楓を信じてもいいのかしら?いいえ、もし裏切られることも予想した上でいた方がいいのかもしれないわね)
そう、凉藍はいつも「来る者拒まず去る者追わず」で人と接しることにしてるのだから。
その考え方は、付かず離れずの距離感で接することで裏切られたとしても自分に心のダメージが少なくて済む反面、本当の意味では人を信用出来ていないのではないかと言う考えに苛まれることがある。凉藍もそれは例外ではなく、夏楓には「仲良くしましょ?」と言い仲良くしながらもこの時間はいつまで続くのかとまで予想まで立てていた。
(本当の意味で人を信じられないだなんて私は本当にどうしようもない
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そして、馬車に程よく揺られながら夏楓は凉籃と仲良く話しながら凉藍は、何故今の今まで酷い扱いをしていた自分を微笑んで許してくれたのかという考えに思考を巡らせていた。普通なら怒ったり泣いたりするものだろう。だが、凉藍は恩を仇で返していた夏楓に何も恨み言を言わずに受け入れると言う判断をした。そんな凉藍の慈悲に殺される覚悟で来た夏楓は、凉藍の女性として…人としても格の違いを示されたことに気分が高揚していた。
(あぁ、凉籃様!!貴女は本当に…本当に!
―こうして、自分でもどの口で言っているのかと思う言葉を垂れ流しながら凉藍の完璧な女性さに喜び凉藍への忠誠を誓うのだった。その時、夏楓は気付かなかった。会話の際に凉藍を褒める発言をした時に凉藍が僅かに笑顔が引き攣っていたことを。
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無能と虐げられた私の結婚 紫野 葉雪 @Hayuki1007
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