第2話
そして、凉籃は由里から貰った鉄扇を懐に入れて自室へ向かった。
(一応別れの挨拶くらいはするべきかしら?でもあの2人は私の事嫌っているししなくてもいいのかもね)
凉藍は、2人の部屋に寄らずに真っ直ぐ自分の部屋に戻る。すると何故か実父…
(はぁ、また嫌味言われるでしょうね)
凉藍は嫌々ながら2人に挨拶をすると、凉藍の予想通り凉藍の罵ろうと考えた2人が凉藍の方に近づいて来た。そんな予想通りのみっともない姿を晒している2人に凉藍は呆れゴミを見る目になるのを我慢しながら毅然と見据えた。
「お前の荷造りは俺達がしておいた。お前はそれ持ってさっさと出ていけ!2度うちの敷居を跨ぐな!!」
亞奇富は凉藍に準備したであろう荷物を投げつける。それはもちろん、凉藍のお腹目掛けた物だった。今の凉藍なら受け止めることなど造作もないことなのは明白。だが、凉藍は敢えて受け止めずに荷物が入ったカバンがそのまま腹に当たりそのまま転ける振りをして見せた。
(何故かって?その方が痛みが最小限になるから)
すると、演技だと知らない冷河は転けている凉藍の元にやって来て私に耳打ちをした。
「ざまぁみろ、あんたみたいな女が姉とかこっちが嫌なんだよ二度と帰ってくんな。お前を愛そうとしていらっしゃるお母様の気持ちがわからないわ!」
亞奇富に聞こえない声で、顔が見えない位置で醜く微笑みながら言う冷河。その目の奥は由里が自分を愛していないのではないかと言う不安でどうしようもない様子だった。
(安心しなさい、冷河。お母様は私を愛そうとしていないわ。お母様は
凉藍はその言葉だけは、冷河に言っておくことにした。そうでなくては、冷河は由里のことをこの先もずっと誤解して生きていくことになってしまうから。流石の凉藍もそれは嫌だったのだ。例え、酷い扱いを受けたとしても。すると、冷河は凉藍から半歩下がり凉藍を怒鳴りつけた。
「はぁ?そんなの当たり前じゃない!!あんたに言われるまでもないわよ!この無能力者!この家の恥!私達家族の汚点っ!!!」
顔を真っ赤にしながら、言う冷河。すると、亞奇富は驚きながら冷河の肩を抱き凉藍に本気の蹴りを放った。それは凉藍の鳩尾を捉えた物だった。流石に不味いと考えた凉藍はカバンを自分と足の間に滑り込ませ威力を殺しながら、荷物と共に1mくらい後ろに飛んだ。モロに食らっていたら死んでいた。そんな蹴りだったのだ。凉藍は衝撃で震える体に鞭を打ち何とか立ち上がり、荷物を持ったまま美しいお辞儀をして2人から離れる。そんな中でも2人は何かを言い凉藍を罵る声が聞こえてきた。
(でも、私には関係ない。もうここの家の人間じゃない私にはもう関係ないとこだもの)
そう自分を納得させながら2人の声が聞こえなくなるまで足早に歩いた。居場所がないこの家から一刻でも早く逃げたかったのだ。すると凉藍はいつの間にか2人の声も姿を見聞きできなくなった所まで来ていた。それを知り凉藍は初めてホッと一息をした。そう、油断してしまったのだ。凉藍は、何者かがいる部屋の前を通り過ぎようとした。その刹那それを見計らったかのようにドアが開き、何者かによって凉藍は部屋に引き摺り込まれた。凉藍は何とか受け身を取り、その反動を利用し立ち上がる。すると、凉藍の目の前には意外な人物が相対した。凉藍はその人物に当然のことながら警戒を強めながらも、平静を装いながら話しかける。
「何か、御用?…この館の使用人長、
「奥様から余所行き用の着物をお持ちしました。凉籃
「…分かったわ」
そして、凉藍は不本意ながらも幸宮の待って来た美しく派手な着物を受け取り袖を通す。それを幸宮が手伝い30分程で終わった。その間も凉藍は、折檻をされるのではとビクビクしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます