【王と亜人族の子供たち】【三】


高貴な姿で現れたラボラスに戸惑いを隠せなかったが、幸いラボラスはまだこちらの事を認識していないようだった…。

しかし宿敵を前にレインは殺気を隠せずにいた。


シエル:「レイン…!今は抑えるんんだ、あいつは多分俺達を覚えてない…。」


レイン:「それはそれで腹が立つ…あんだけの事しておいて覚えてねえだと…!?殺すことをなんとも思ってねえクソ野郎が……!!」


ラボラス:「ん?なんだ…見ない顔だがそんなに俺を睨みやがって…過去になんかしたか??」


ロンディネル:「お二人…どうされました?"ベリアット"を睨んでいるようですが…。」


シエルーレイン:ーベリアット…?!ー


自分たちの勘違いであれば良かったのだが幻覚や人違いなんかではなく、あの時とは確かに見た目が違うものの…あの顔を間違えるはずが無く、恐らく偽名を使っていると疑った。


レイン:「すまない…目になにか入ってしまったみたいだ、勘違いさせてしまった…失礼だが、あなたに兄弟はいるだろうか?」


上手くごまかし鋭い質問をしたレインに無言で視線をおくった…。

この質問の答え次第でこの依頼の重要性が大きく変わる…。


レイン:ーどっちだ…似た顔の兄弟か…それとも偽装か…。ー


ラボラス:「いいや…すまねえが人違いだ、俺に兄弟は"いない"…」


ラボラスの言葉で疑惑が確信に変わる…こいつはレインの妹を殺したグラーシャ・ラボラス本人だ…と。


ラボラス:「王、最近街で騒がれいる件について話したかったのですが…今はお邪魔だったようですね。また後ほど伺います。」


ロンディネル:「すいませんベリアット、今はそうしていただけるとうれしいです。」


ラボラス:「わかりました。大臣…あんたも行くぞ?では客人、くれぐれも面倒はおこさないでくれよ。」


ラボラスはそう言ったあと大臣と共に部屋から出ていった。


ロンディネル:「すいませんでした、彼は騎士団の団長をしていまして…ここ最近街で兵が襲われたり、女性が姿を消してしまうという事が起きその対処を命じているのです。そのせいか彼も含め皆(みな)苛立っているようでして…。」


マキシス:「兵と女性?…兵は男も狙われているのか?」


ロンディネル:「はい、若い者が二人、あとはおりません。女性も若い者ばかり狙われているのです。最初は魔物かとも思いましたが姿を消した者は外に出ておらず国内で居なくなっているんです。しかし国内のどこを探しても見つからず手を焼いているんですよ…。」


シエル:「その件俺達にもすこし手伝わせて貰えないかい?」


ロンディネル:「え!?よろしいのですか?…しかし私の護衛もして頂くのに…流石に…。」


ロンディネルは考えたが申し訳なさそうな表情のまま黙ってしまった。

しかし解決すればある程度信用を得れると思ったシエルは引きさがろうとはしなかった。


シエル:「よし!そしたら依頼って形はどうだろう?ロンロンが俺達に依頼を出してよ!報酬があれば問題ないからさ!」


デイン:「ほう、シエルそれはいい考えだな。どうだろうか?」


ロンディネル:「そういう事でしたら、はい大丈夫です。報酬は考えておきますね。でしたらまずは街を見てきて頂きたい。ある程度街を把握しておけばなにか分かるかもしれないので、観光も兼ねてぜひ行ってみてください。」


ミリス:「やった!!んっん…失礼、でもせっかく来たもの…街をゆっくり見てみたいわ。」


シオン:「そうだね、私たち三人で動いていればもしかしたら敵に遭遇するかもだし!」


ノルン:「お…おとり作戦ってことなんだね…」


デイン:「あまり危険な事は避けてくれよ?もしもの時は俺達を呼んでくれ。」


レイン:「デインの言う通りだミリス、助けたのにまた居なくなられちゃ困るって話だ。」


シエル:「ミリスだけなんだ〜?へ〜??シオンとノルンも気をつけてね。」


レイン:「てっめ……。」


ミリス:「ありがとうレイン!もちろん気をつけるわ、お兄様達も気をつけて。」


マキシス:「どんな野郎か知らねぇが、まぁこんな臭ぇ男衆狙う馬鹿ではねぇだろ…ハッハ!」


ロンディネル:「皆さん、くれぐれもご無事で戻ってきてください。狙われるのは昼夜問わずとの事なので…。もしもの事があれば私は一生この事を後悔してしまいます。」


シエル:「安心してよロンロン!俺らそんなそこらのアサシンとは違うから!信じて待ってて!」


ロンディネル:「まったく…シエルさんは不思議なお方ですね…。あなたを見ていると本当になんでも出来てしまいそうです。分かりました、私はここで皆さんを信じて待っています。」


ロンディネルはそう言うと目を閉じたまま優しく微笑んだ。

俺達はロンディネルに見送られながら部屋を後にする。

王の間から出るとラボラスが扉の横の柱に腰掛けて立っていた。


ラボラス:「んあ?お前らどっか行くみてぇだが…話は終わったのか?」


シエル:「あぁ、終わったよ。騒がしくしてすまなかったね!」


デイン:「話は聞きました、団長殿。我々も貴方に協力させて頂きます。」


ラボラス:「なっ!?…ったく…面倒を押し付けやがって!この件は俺達だけで片付ける…要らねぇ事はしてくれんなよ?」


マキシス:「えれぇ上からじゃねぇか団長さんよ〜、そんなに俺らが信用できねぇか?」


ラボラス:「あ?なんだお前…でけぇ体しやがって。他所の国から来たやつをそんな簡単に信用出来るわけねぇだろ?面倒は嫌いなんだ…さっさと行けよ。」


ラボラスの態度にマキシスは落ち着いた態度で返したがレインはまた睨んでいた…。


シエル:「行くぞ…レイン、今は抑えるべきだ。」


レイン:「あぁ…わかってる。」


俺達はラボラスからの視線を感じながら外へと出ていく。


ラボラス:「あの紅髪……どっかで……。」


ー【ロンブルク魔法王国城下町】ー


ミリス:「うわぁー!すごいわ!!なんて素敵な街なのかしら!」


マキシス:「ハッハッハ!ミリス、嬉しそうだな!」


ミリス:「ここの空気はとっても気持ちがいいわ!お兄様方もそう思わないの!?」


デイン:「いや、俺もかなり前に一度訪れたが、街の造りもかなり変わっている。新鮮な気持ちだ。」


シオン:「ノルン!ミリス!行こいこ!」


ノルン:「もう〜一応下見なんだけどな…」


シエル:「大丈夫…じゃないよなレイン、よく耐えたよ。」


レイン:「……なんであいつが…こんな所に、しかもロンディネルに仕える騎士だと!?ふざけやがって…なにか隠してるに違いねぇ、絶対暴いてやる。」


シエル:「とりあえず今はロンロンの依頼に集中しよう。いいな?レイン。」


レイン:「あぁ…取り乱してすまなかった。」


シオン:「行くよ〜二人とも!まずはみんなで周ってみよ!」


はしゃぐシオンとミリスについて行きまずは落ち着いて街を見ることにした。


リオルでは見ない店や食べ物が並び、街の至る所で魔法が使われている。

それは俺達にとっても、すごく新鮮でどこを見ても何時間歩いてもまったく苦ではなかった…。


それからしばらくして、ミリスとノルンは宝石店へ、レイン達三人は武器屋を見に行っていた。

俺はシオンと話しながら途中売られていた甘く冷たいアイスキャンメー?を食べていた。


シオン:「ほんと綺麗な街だよね…でもこんな場所でも平和ではないって思うとなんか辛いな〜」


シエル:「この街も…救ってやらないと。ロンロンが王である間は絶対大丈夫だと思う…でももし今回守れなかったら…」


シオン:「めずらしいね…」


シエル:「…え?なにが?」


シオン:「シエルいつも弱音吐かないのに…なにかあった?こないだからちょっと変!」


シエル:「へ…変かなぁ…アハハ…まぁ、言われてみれば確かに、最近考えることが多くてね。」


シオン:「あんまり考えすぎちゃだめだよ…?今はシエルが良いと思う道を進んでみたら?私はそれで良いと思うな。」


シエル:「俺が良いと思う道…か…夢の中でもそう言われたな…アハハ!」


シオン:「…?夢の…中…?」


シエル:「そう!夢の中で…うわっ!」


突然子供が強く当たり、目の前で転けてしまい足から血を流しその場で泣いてしまった。


シエル:「君、大丈夫かい?」


子供:「うぅぅぅん!!うぅうううん!!えへ…えへ…うぅぅぅ…。」


シエル:「ありゃりゃ…お?君!こいつは大変だ!」


子供:「ひぐっ……ひぐ……え…?」


シエル:「こいつは足を痛くさせて子供の涙を餌にする魔物イタークだ!「グッへへガキノナミダハウマイゼー!」」

変な声でイタークと存在しない魔物の役をしていると子供が少しだけクスッと笑った。


シエル:「「ウワ!ナニヲスル…!オレサマヲドウスルキダー!」子供をこけさせて涙を流させやがって!お前なんかこうしてやる!!くらえ!俺の魔法!」


パチンッと指を鳴らし「グワァァー!!」と声を出すとさっきまで泣いていた子供はいつの間にか泣き止んで笑っていた。


子供:「フフッ…アハハハ!お兄ちゃんありがとう!魔物退治してくれたんだね!」


シエル:「もう大丈夫だ!俺の魔法で痛くするイタークはやっつけたからね!どうだい?もう痛くないかい?」


子供:「うん!大丈夫!お兄ちゃん不思議!どんな魔法使いなの?」


シエル:「ん?…え〜っと…」


子供:「教えて!教えて!」


シエル:ーん〜なんと答えよう…ー

そんなことを考えていると後ろでシオンがなにか嬉しそうに微笑んでいた。


シエル:ー俺が良いと思う道…ー


シエル:「ハッハッハッ!…お兄ちゃんはね、誰かを治したり、物を動かしたりする魔法は使えないけど、"誰かを笑顔にする事"が出来る…世界でたった一人の魔法使いさ!」


子供:「そうなんだ!!世界でお兄ちゃんだけなの!?すごいよ!!僕もお兄ちゃんみたいな魔法使いになりたい!!」


シエル:「お!それは嬉しいな〜アハハ!君も誰かを笑顔に出来る魔法使いになってね。応援してるよ!」


子供:「うん!!ありがとうお兄ちゃん!お母さんとみんなに自慢してくる!!お兄ちゃんまたね!!」


子供はそのまま無邪気に手を振りながら走り去り、どこかへ行ってしまった…。


シオン:「シエル〜さっきのなに〜?見てて面白かった!」


シエル:「あれしか思いつかなかったんだよ〜アハハ…」


シオン:「私はそれでいいと思うな…いつものシエルでも絶対ああした。ね?自分が良いと思う事を信じれば大丈夫なんだから。」


シエル:「そうだね、シオンの言う通りだよ。ありがとう…。」


シオン:「ううん!私は何もしてませ〜ん…エヘヘ、私はシエルのああいう優しいとこ、好きだな〜」


シエル:「ぅ…なんか恥ずかしいですな…アハハ…。」


そう言うと何故かシオンも顔を赤くし俺から視線を逸らしていた。


シオン:「と…とにかく!…やっといつものシエルに戻ったんだし、仕切り直そ!」


シエル:「そ…そうだね!おっし!依頼絶対達成するぞ!」


ノルン:「ん?どうしたの二人とも…なんかすごい楽しそうだけど…?」


ノルンに恥ずかしい所を見られた俺とシオンは顔を赤くしながら誤魔化す…。


シエル:「な、な〜んにも!ちょっとやる気出しただけ!」


シオン:「そう!な〜んにもないの!ほら!行くよノルン!」


ノルン:「え?えぇー!?ちょっ…ちょっと〜ぉ教えてよぉぉぉ…」


シオンはノルンの背中を強く押しながらどこかへ行ってしまった。


シエル:「シオンに助けられちゃったや…なんか…似てるな……あの子に…。」


サッッ………。


突然銭袋を付けていた所が軽くなるのを感じ視線を向けると…。


シエル:「……?…!?な!ない!!?俺のお金が!」


辺りを見渡すが怪しい者はどこにもおらず、鷹龍の目をつかい上空から自分から遠ざかる者を探す。


シエル:「み〜けた…!」


???:「ミーシア!急げ!!」


ミーシア:「ハァ…ハァ…待ってよお兄ちゃん…」


路地裏で息を切らす二人の小さい亜人がそこにいた…。


???:「もぉぉ!早くしないと…え?…」


男の子から四つの銭袋と自分のを瞬時に奪い見せつける。


シエル:「おぉ〜子供にしてはお金持ちですな〜?ど〜したのかな?こんな大金〜。」


ミーシア:「ヒッ……お、お兄ちゃん…。」


???:「やばい……どうしよ…」


シエル:ーな、なんだこの子たち…あ、頭に耳が生えてる!?…噂に聞く亜人族か…?ー


子供の一人が何かに気づき声を上げる。


???:「た…助けてぇぇ!兵隊さーーん!!」


シエル:「…!?お!おい!!」


兵:「おい!何事だ!?君達そこで止まりなさい!!」


???:「逃げるぞ!!」


ミーシア:「う…うん!!」


シエル:「あちゃ〜…ったく…俺も逃げるか」


瞬時に屋根の上へと逃げ、二人の子供を追う。


???:「ハァ…ハァ…ハァ…ここまでくれば…大丈夫だろ…。ん?どうしたミーシア……え…!?」


シエル:「ったく…足早いな君たち〜、危うく怒られるとこだったよ…アハハ。」


???:「あ…あんた…何者だよ……」


シエル:「ん?教えな〜い!教えて欲しかったら謝ってもらわなきゃ〜…」


ミーシア:「ごめんなさい…!!お願いします…殺さないで…」


???:「ごめんなさい!!ごめんなさい!」


二人は泣きながら土下座し何度も謝る。


シエル:「こ…殺しはしないけど…」

シエル:ーな…なんだこの状況…俺が悪いみたいじゃないか……ー


シエル:「殺したりなんかしないさ…それよりなんでこんな事を?」


???:「……この街で見かけない顔だったし……旅行客だと思って……」


ミーシア:「お金が……いるから……」


シエル:「君たち亜人族なのかい?その耳…」


ミーシア:「あじんぞく??」


???:「ペティーシャの事だよ…」


シエル:「ペティーシャ??聞いた事ないな…君たちの種族のこと?」


???:「うん…外ではよくわかんない呼び方されてるけど…オレたちペティーシャ族って言うんだ…」


シエル:「知らなかったな…で、君たちどこから来てるの?街に住んでる訳じゃなさそうだけど…」


ミーシア:「私たち…近くに村があって……」


???:「ミーシア!なんで言っちゃうんだよ!!」


ミーシア:「だ…だって……悪い人じゃなさそうだから…」


シエル:「ん〜…君たちさえ良かったら、村まで案内してくれないかい?俺はシエル!アサシンだよ。」


シエル:ー国外だし…アサシンって名乗ってもいいよな…?ー


???:「アサ…!アサシン!?」


ミーシアはよく分からないのか首を傾げる。


ミーシア:「アサシンって…なに?」


シエル:「わるーい人をこらしめてるんだ!君たちもわる〜い事したらお兄ちゃんがこらしめちゃうんだぞぉ〜〜!」


ミーシア:「ヒッ……ご…ごめんなさぃぃぃ…」


???:「もう!ミーシアをいじめるな!!」


シエル:「アハハ…ごめん。」


アイル:「うぅ…オレはアイル…ガミラス・アイル。」


シエル:「よろしく!アイル、ミーシア!怖がらせてごめんね?」


アイルとミーシアは無言で頷く。

どうやら許して貰えたようだ…。


二人と話しながら街から離れた村へと向かった。

村には二人ともう一人の子供しかおらず、大人達は街へ入れないため二人が街から色んな物を盗んでいるという事だった。

しかし大人達はその事を知らず、バレてしまうと外へ出して貰えなくなるらしい。


シエル:「そんな危険を犯してまで…もう辞めるんだぞ?」


アイル:「…やめれないよ…だってみんな食べる物も着るものも限られてるし…なにも自由じゃないんだ…"あいつらが来てから"…」


シエル:「"あいつら"?」


ミーシア:「ついたよ…。」


二人に案内され村へと入るとそこには二人と同じように頭に耳が付いている者達が大勢暮らしており、

服はボロく、体の汚れた者がほとんどだった…。

村を歩いていると周りからの視線を強く感じる。


???:「アイル!ミーシア!!どこに行っていたの!!?」


女性が突然大声で二人を怒鳴りアイルをぶつ。


???:「この人は誰!応えなさい!」


アイル:「……。」


シエル:「突然で驚きますよね、この子達が"魔物に襲われていたので助けてあげたんです"。それで村へ案内してくれて…。」


アイルとミーシアはシエルが嘘をついたことに驚く。

盗みをしたのに許し、母親に嘘までをつく…その理由が二人にはわからなかった…。


母親:「あなた達……どうしてそんな…魔物のいる場所にはあれだけ行くなと…!」


アイル・ミーシャ:「………。」


二人は何も言えず今にも泣きそうな顔をしていた…。


シエル:「あまり怒らないでください…二人はこの薬草を取りに行ったみたいで…」


ポケットから街で買った薬草を取り出し母親に見せた。


母親:「…そんな…だからって…もしこの人がいなかったらあなた達死んでたかもしれないのよ!そんなこと…あなた達を失ったら…私は…。」


二人に謝るよう視線を送り優しく微笑む。


アイル・ミーシャ:「ごめんなさい……」


母親は涙を流しながら二人に優しく抱きつき、二人もそれにつられ泣いていた……。


母親:「あなたには感謝しています。この子達をここまで連れてきてくれて…本当にありがとうございます。…この子達があなたを村まで連れてきたということは危険な方ではないようですね…。」


シエル:「いえ、たまたま通りかかっただけなので!二人ももうお母さんを泣かせるんじゃないぞ??わかったかい?」


二人は頷きー約束するーと言ってくれた。


母親:「せっかく村まで来たんです、お礼もしたいのでぜひゆっくりしていってください。」


シエル:「ありがとうございます。」


シエル:ーこの村を調べればなにかわかるかもしれない…さっきアイルが言った"あいつら"ってのも気になるしー


母親:「…!?レイグ…。」


奥からすごい形相でこちらへ向かってくる男がぞろぞろと村の住人を連れてきた…。


レイグ:「エルナティコスペラエラダティラ?」


その男の言葉が何一つわからず困惑してしまうが母親が上手く事情を話してくれた。


レイグ:「青年…君の分からぬ言葉で話してすまなかった…どうか許していただきたい…。息子と娘を救ってくれたこと、深く感謝する。私はこの村の長、"ガルラス・レイグ"だ…よろしく頼む。」


シエル:「俺はヴルスト・ハンス・シエル…シエルって呼んでください!」


レイグ:「ハハハ…若いのに礼儀があるな、そんな固くならないでくれ、気軽に休んで行ってほしい。」


シエル:「ありがとう!でも少ししたら街へ戻らないと、仲間も心配するだろうし…。」


レイグ:「シエルは見たところここらの者ではないようだな、言葉の訛(なま)りも聞いたことがない。」


シエル:「俺はリオルのアサシンなんだ〜表では無いけど…アハハ〜、ロンブルクにはある依頼で来ててね!」


レイグ:「リオルから…そんな遠方から来たのか…それにアサシンときたか、まさかとは思うが人さらい…の為じゃないよな…?」


シエル:「!ーレイグ、その人が居なくなる話なにか知ってることは無いかい!?」


レイグは俺の言葉を聞き驚いた表情をしたが俺が犯人では無いことに安心したのか強ばった表情が和らいだ。


レイグ:「うーん…そうだな、俺が聞いた話じゃ夜に"黒い者"が現れるって話だ、真偽はわからん…。」


シエル:ー黒い者…か、というかレイグはどうやって情報を?大人も街には入れないってアイル言ってたような??ー


シエル:「すまないレイグ、怪しんでる訳じゃないんだけど街に大人は入れるのかい?だとしたらこんなに貧相な訳がないと思うんだ。レイグも街に忍び込むのかい?」


レイグ:「シエルには話そう…、俺達ペティーシャがロンブルクの近くに住めているのはロンディネル王のおかげなんだ…。」


シエル:「ロンロン…っいや、ロンディネルの!?」


レイグ:「ああ、俺は元々王国に仕える騎士だった…。ところが奴らが来てからというものいきなり濡れ衣を着せられここにいる皆追放処分を言い渡された。」


シエル:「そんな事が…、でもロンディネルがそんなこと…どうして…。」


レイグ:「いいや、王じゃない。王は俺たちの濡れ衣を晴らそうと手を尽くしてくれている。」


シエル:「じゃあ誰がそんなこと…。」


そう聞くと何故かレイグは黙ってしまい苦しい表情をした。

するとアイルが口を開く。


アイル:「あの男だ…いきなり現れて騎士になったあの"ベリアット"とかいうやつ……!」


シエル:「ベリアット…!!?」

シエル:ーラボラス…やっぱりあいつが関わってたのか……何を企んでる…。ー


アイルに詳しく聞こうと地に膝をつけ目線を合わせる。


シエル:「アイル、ベリアットがいつこの国に来たのかわかるかい?」


アイル:「うーん……たぶん一年前くらいかな。」


レイグ:「アイル……名を出したことがばれれば……どうなるかわかってるのか……。」


シエル:「レイグ、ここにいる皆は俺が、俺達が必ず守る。だからこの事は俺の仲間にだけ伝えさせてくれ、それ以外の者には絶対言わないと約束するよ。」


レイグ:「信じていいんだな……?シエル。」


シエル:「うん、もちろん。俺も仲間の皆もこの国を救いに来たんだ。この国のってことはこの村のみんなもってこと!!だから色々協力して貰いたい。どうかなレイグ……。」


レイグ:「わかった、協力しよう……よろしく頼むシエル。どうかこの国を……王を救ってくれ!」


シエル:「わかった……!その願い…必ず叶えるよ。」


絶対に救ってみせると決意を示し、レイグと強く握手を交わした……。


シエル:ーどうしてラボラスが…ロンロンはあいつに一体何をされたんだ…。ー


【優しい出会いと…】へ続く……。

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