【王と亜人族の子供たち】

サンメルト王子から依頼を受けロキシルから指名された俺達は竜馬車(りゅうばしゃ)乗り場へと来ていた。

久々の遠征依頼だからか妙に緊張が走る…。


デイン:「オリタルへ行くのは幼い頃父上と行ったきりだ…」


シエル:「俺は初めてだな〜、どんな所なの?」


シオン:「すごく綺麗なんだって!水なんて川のをそのまま飲める程らしいし…」


レイン:「俺も幼い頃に行ったきりだな…また行くとは思わなかった」


マキシス:「長旅になる、備えは大丈夫だな?」


ノルン:「うん!大丈夫!」


ミリス:「私もよ、それじゃ乗りましょうか!」


俺たちはフードを被り、竜馬車へと乗り込んだ。

馭者(ぎょしゃ)に行き先を聞かれオリタルのロンブルクと伝えると、驚くことに着くまでに三日はかかると言われ少し気分が下がる…。

しかし途中にはこの周辺では見られない景色が広がっていると知り楽しみが少し増えた。


ノルンは竜馬車が初めてらしく、最初はシオンとミリスに挟まれ手を握っていたが、街からかなり離れた頃に広大な草原と多くの生物に興奮したのか二人から手を離し窓から体を乗り出した。


ノルン:「すごーーーい!!こんな綺麗なんだ!!あんな魔物も初めて見る!!」


馭者:「お嬢さん!あまり乗り出すと危ないですから!気をつけてくださいね!!」


ノルン:「あ!ごめんなさい!ついっ……」


ミリス:「フフッ…楽しそうね、あれはモムンね、人を襲うことがないから貴族や農家に飼われる程人気だそうよ?」


シオン:「私前に触ったことあるけどすっごくもふもふで癒されるの〜」


女性組はこの後も数時間話で盛り上がり休憩所まで話し続けた…。


レイン:「はぁ〜〜……よくあんな楽しそうにず〜っと話せるよな、ちょっと羨ましいぜ」


マキシス:「まあまあ!せっかくの遠征なんだ、少しくらい楽しまねえとな!」


シエル:「マキシスの言う通り!まだまだ着かないんだし、少しは気を楽にいこうよレイン!」


レイン:「お前は軽すぎんだよ!馬鹿!」


デイン:「ハハッ…」


デインが笑ったことにその場にいた全員が戸惑う。


シオン:「デインが…笑った…」


ミリス:「お兄様…なんて珍しいのかしら…」


ノルン:ー???ー


シエル:「デインが声出して笑うのってなかなかないよね??」


デイン:「な…なんだ、俺だって笑うこともある…普段どう思われてるんだ、まったく」


ノルン:「デインって普段静かだけど、笑うのってそんな珍しいの?」


シエル:「そうだね〜、結構珍しいかな…俺もあんまり見たことないし!」


デイン:「まあ…なんだ…シエル達と一緒になったのが久しくてな、お前たちを見ていると気が抜けてしまったんだ。助けられてからというもの不思議と安心できるんだ…こんなにも胸が高ぶるのはいつぶりだろうか…」


マキシス:「わかるぜ!!シエルと組むことなんて俺らはそうそう無えしな!!レイン達が羨ましいくらいだ!!ハハハ!」


馭者:「そろそろ出ますよ〜?ご準備を〜」


皆で話した事でより関係が深まるのを感じた…。

程よく緊張が解け皆の表情が軽くなったのを感じ、この遠征がより有意義に感じる…。


それから一日…二日と経ち、水神の地…オリタルへと辿り着いた…。


一人横になり眠っていると…。


ノルン:「シエル!!見て見てっ!!!」


ノルンに呼ばれ体を起こし窓の外を見てみると……。


その光景はまるで絵に描かれたような美しさが広がっており、感動のあまり声が出なかった…。


空は海のように蒼く、透明に輝く水が視界いっぱいに流れ、奥には底の見えない海が広がっていた…。


デイン:「やはり何度見ても美しい…これが自然の神秘…言葉を失うな…。」


シオン:「すごいよね…自然の力って、誰に創られるわけでもなく…こうやって変化していくんだから…"人の心"もこれくらい綺麗だったらいいのにね。」


ミリス:「風がこんなにも気持ちいいなんて…王国の皆にも分けてあげたいわね…。」


曇り一つない空がこの地の美しさをさらに引き立たせずっと目を奪われてしまう…。

俺は無意識に小さな声で囁いてしまう…。


シエル:「綺麗だ…シスナが見たらきっと驚くだろうな…。」


シオン:「えっ……?シエル今なんて…?」


シエル:「…?あれ、俺今なんか言ってた??」


シオン:「気のせいかも…えへへ…。」


シオン:ー気のせい…だよね…"知ってるわけないもん"……ねー


景色に見とれていると馭者がーもう少しで見えて来る頃です〜…あ!見えてきましたよ〜!ーと言うと

道を超えた先に大きな噴水の様な建物が見えてきた。


シエル:「あれが…ロンブルク。」


レイン:「う…浮いてんのか?!滝が流れてるよな?!」


シオン:「浮いてる…本当に浮いてる!!」


デイン:「さすが魔法国というだけある国だな、おそらく世界で唯一の美しさだろうな。」


少しして門の前に着き馭者に待つよう言われ待っていると…。

突然笛のようなものを吹かせた。


ブウオオオオーーン………


すると湖から大きな橋が浮き上がり門が開く。


兵:「旅の者ーそこで暫しお待ちを〜!!」


静かに待っていると兵が大きな国旗を振り、それを見た馭者は橋を渡り中へと入った。


兵と何か話したあと外からーこれで大丈夫です、良い訪れであります事を願っております。あなた方に竜の加護あらんことを……んっん゛、

ご利用ありがとございます!!では!!ー

と言われ俺達は竜馬車を降りた。

すると見るからに若い兵が俺達を出迎えてくれた。


兵:「ようこそ我が国、{ロンブルク魔法国}へ遠方からお越しくださいました。目的は、観光でしょうか?交渉でしょうか?それとも魔法学の入会がご希望ですか?」


シエル:「え〜と…んじゃせっかくだし魔法学の〜…」


バッシンッッッ!!

突然シオンが背後から頭を強く叩いてきた。


シオン:「ばか!何言ってんの?!もう!せっかくじゃないっての!!」


シエル:イテテテ…


レイン:「避けろよ…今の…」


ノルン:「あはは…今のは痛そうだね、、」


若い兵は何が起きているのか状況が理解出来ず苦笑いを浮かべていた…。

するとデインが王子から渡された手紙を兵に見せる。


シエル:「あれ?そんなのいつ貰ってたの??」


デイン:「ああ、ロキシルがシエルは無くしそうだからと俺にな…黙っていてすまなかった。」


シエル:「アハハッ!っっんぜん!ロキシルの言う通り俺なら無くしかねないしね!」


レイン:「自信満々に言うな馬鹿……」

話している最中手紙を読んでいた兵は少し驚いた表情で突然姿勢を正し敬礼しだした、突然すぎたので俺達も少し困惑する。


兵:「たっ…たたただいま上に伝えてきますので暫しこちらでお待ちを……!!」

そう言うと兵は俺達を置いてどこかへ走り去ってしまった……。


シエル:「あれれ……どっか行っちゃったよ…どうしよ。」


レイン:「待ってろって言われたろうが、大人しく待ってようぜ?変に動いて騒ぎになっても嫌だしな。」


ミリス:「早くこの街を見てまわりたいわ!!待ってるのが退屈なくらいよ!」


ノルン:ー初めての街…初めての遠征依頼……どうか、無事に達成出来ます様に……!!ー


・・・・・・ー少し離れた崖に立ちロンブルクを眺める三人の何者かがいた……。


???:「あそこがロンブルク…平和そうな国じゃねえか……」


ベルラ:「ベルラお腹空いた!!」


ケルラ:「ベルラ、さっき食べたじゃん……」


???:「まあ待ちな、すぐ喰わしてやんよ可愛い妹たち……。」


危険な存在がロンブルクに訪れようとしていた……。


【王と亜人族の子供たち】{二}へ続く……。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る