番外編〜ある日の依頼〜【二】
イナンちゃんから事の説明を聞き、ペトルという小さな子供の依頼を受け、その依頼主のペトルの元へと向かった俺は住んでいる家を見て少し驚く。
シエル:ー街のこんなの端っこの家に住んでるのか、
"貧民街"…ここに来るといつも胸が苦しくなる…。
こんな国にも生きるのがやっとの人が大勢いるんだ…こんな景色、国が表には出してるとは思えないけど…必ずこんな景色無くしてみせる…その為にあのギルドにいるんだ、今は…今は堪えよう…ー
国に感じる怒りをぐっと堪(こら)えひとまずペトルの家を探す事にした。
シエル:「えーと…ここ…だよね?」
イナンちゃんに渡された箇条書きの地図を元に、見つけた家の扉を恐る恐る叩く。
するとゆっくりと開く扉に誰の姿も映らず困惑したが、
ふと視線を下に下げると想像より小さな男の子が扉から顔を半分覗かせていた。
ペトル:「…おにぃちゃんだれ?」
目線がなかなか合わないのか必死に上げる顔を見て少し微笑ましくなる。
苦しそうにしていたのでペトルの視線が合うように地面に膝をつけた。
シエル:「ペトル…であってるかな?ギルドにお願いを出したの覚えてるかい?
俺は君のお願いを叶えに来たんだ。」
ペトル:「あ!おにぃちゃんがみどりのおじさんがいってたばかってひと?」
シエル:ーあんの野郎…子供になに吹き込んでんだ…ー
脳裏にしめしめと笑うロキシルが思い浮かぶことに少し悔しいが子供の前だったのでぐっと堪えることにした…。
すると部屋の奥から咳き込む二つの声が聞こえ、相当酷い病気のようだと、ペトルとその親が心配になる。
シエル:ーこんな小さな子供がいったいこの場所で何日もつ…恐らく食べるのもやっとだろう…ー
と考えるだけで、なにも困らず普通に暮らしている自分自身に嫌気がさす…。
シエル:ーこの小さな未来(こども)達が苦しまず笑って過ごせる為に…争いを終わらせないと…いけないんだー
ペトル:「おにぃちゃん…なんでこわいかおしてるの??ぼくなにかした?」
ペトルの一言で我に返り、まずはペトルのお願いを叶えることに専念する。
シエル:「アハハ…ごめんなにもしてないから安心してくれ、それじゃまずペトルのお願いを叶える為に人に会いに行くから一緒に来てくれるかい?」
ペトル:「うん!いく!」
ペトルはかなり楽しみにしていたのか絵に残したくなるような笑顔で扉から飛び出してきた。
シエル:「ちょっと高いとこに行くけど怖くないかい?」
ペトル:「うん!だいじょうぶ!!」
シエル:「強い子だ」
ペトルを抱え協会の屋根へと登り高い位置からの景色を見せる。
ペトル:「うわぁあああ!!たかーーい!!」
シエル:「ペトル、どうだい?この街はこーんな広いんだ、でも後でもっと広い世界を見るんだ、わくわくするだろ?」
ペトル:「うん!!すごくたのしい!!わくわくするよ!!」
シエル:「よし!それじゃちょっと待っててね」
鷹龍の目で目的の人物を探す。
シエル:「さぁ〜て、今日はどこにいるんだ〜??……お!みっけた!よし!しっかり掴まってるんだぞペトル!」
ペトルをもう一度抱き抱え屋根をつたい見つけた人物の元へ飛び降りる。
シエル:「お〜〜い!ユウト〜!!」
ユウト:「アイリーン、今シエルさんの声しなかったか?」
アイリーン:「私も聞こえた気がするけど…どこにもいないよ??」
シルフェ:ーモクモクモク……おいしい…ー
???:「シルフェ〜私も一口欲しい!」
ユウト:「おい、シルフェの取ったら可哀想だろ?後で買うから我慢しろ」
???:「はーい…」
ユウトの目の前に飛び降りるとユウトとアイリーンは驚き、シルフェは……
シルフェ:「ん゛ん゛っ!?う゛っ……ぉお゛ぇええええ゛〜!!!」
ユウト:「ああ!!シルフェが喉詰まらせて吐いちゃった…!!」
アイリーン:「シ…シエルさん今どこから…?!」
???:「ええ!?だ、誰!?」
ユウト:「そ…それにその子は…?」
シエル:「ちょっと訳あってね!その事で相談があるんだよ!場所変えようか…アハハ…」
シルフェ:ー……チーン・・・ー
シルフェに水を飲ませた後、街の中央にある噴水広場へと場所を変えた。
ペトル:「うわぁ〜!!きれぇ〜!!」
アイリーン:「かわいぃぃ〜、ペトルくん噴水見るの初めて?」
ペトル:「うん!はじめてだよ!」
シルフェ:ーか…かわいい…ー
ユウト:「えーと…この子がシエルさんのギルドに来て依頼を出したと…」
シエル:「うん!まぁそういう事!」
ユウト:「ものすごくいい話じゃないですかぁぁ!!…確かにこんなに小さな子供の依頼は断られてしまいますよね、シエルさんがいるギルドは寛大ですね!」
シエル:「アハハ、うちのギルドは特別だからね!…じゃあユウト、気になって仕方ないんだけどユウトも教えて欲しいんだ…その子は誰??」
ユウトの後ろに隠れるケモ耳の少女に目がいって話が進まないためとりあえず聞いてみることにした。
シエル:ー前に教えたコロッセオで出来た仲間なのかな…??ー
ユウト:「あ、あはは…紹介するの忘れてましたよね、その〜説明しずらいんですけど、」
???:「お兄ちゃん……この人誰なの?」
シエル:「お…お兄ちゃん???!」
どこからどう見てもユウトと同じ種族には見えず、噂に聞く亜人族?ではないかと思ったがどういう事なのだろうかと余計に気になる。
シエル:ーユウト…そ、そんな不思議な趣味があるのか?ー
ユウト:「あ、あの…シエルさん、なんか変な事思ってませんか?」
シエル:「うん、思ってるよ」
ユウト:「うぅっ…そんなストレートに言わないでくださいよ…。まぁはっきり言うと…その…ぼくの妹なんです…。」
シエル:「・・・え?ユウトって人族じゃなかったの??」
ユウト:「その、説明が難しいんですけど、ちゃんと血の繋がった妹で、ぼくの家族なんです…あはは」
シエル:「色々複雑なんだね、ユウト…」
ユウト:「やめてください!そんな表情しないでください!!」
俺が同情の顔をしていると突然少し怒った表情でユウトの背後から妹が顔を覗かせた。
???:「あの、お兄ちゃん嘘ついてる訳じゃないんですけど…信じてあげてほしいです。」
シエル:「アハハ!ごめんよ、大丈夫嘘とは思ってないよ!驚いて反応に困っただけだから!」
ユウト:「じゃあ、シエルさんに自己紹介してあげてくれないか?ミオ 」
ミオシャ:「もう!お兄ちゃん!ここではミオシャだってば!!…はじめまして、ガミラス・ミオシャって言います。お兄ちゃんがお世話になってるみたいで…。」
シエル:「ユウトと同じシラガミじゃないんだね、親が違うとか??」
ミオシャ:「どっちかと言うと偽名です。そこはあまり聞かないでほしいです。」
シエル:「わかった、嫌な事を聞いてしまってごめんね」
ミオシャ:ーなんだ…結構素直な人なんだな…お兄ちゃんが慕うのもわかる気がする…にしてもすごい綺麗な顔だな、恋人とかいるのかな…?ー
ユウト:「すいません、話逸れちゃいましたね、それで自分達にどんなお願いが??」
シエル:「ペトルのお願いっていうのがね、自分の力で親の病気を治す為の薬草を見つけたいっていうお願いなんだよ、そうなるとそう危険な場所も行けないし、そもそもどんな病気かもわからないから何が一番効くか俺には分からなくてね…そこで詳しそうなユウト達に助けてもらおうって思ったわけ!どうかな?」
ユウト:「う〜ん…そうですね、なぁアイリーン…おいアイリーン…。」
アイリーン:「きゃ〜ほっぺぷにぷにぃぃ〜えへへ〜……??あ!ごめん!なにかな!!?」
ユウト:「この周辺である程度の病(やまい)に効果のある薬草しってる?」
アイリーンは少し考えたあと思い当たる物があったのか自信ありげに話し始めた。
アイリーンが言うには王国から少し離れたエロー村近くの洞窟で採取できる薬草があるらしく、その薬草とアイリーンが持っている実と液体を混ぜることで万能薬を調薬出来るとのことだった。
シエル:「いい情報をありがとうユウト、アイリーン!とても助かったよ!」
ユウト:「いえ!困ったらいつでも頼ってください!必ずお助けしますから!」
ミオシャ:「あ、あの…わがまま言いたいんですけど、いいですか?」
ユウト:「??…どうしたんだミオ…?」
ミオシャ:「もう…ミオシャだってば、その…シエルさんさえ良ければ私達も一緒に同行していいですか?」
ユウト:「きゅ…急にどうしたミオ…シャ、お店回りたかったんじゃ?」
ミオシャ:「お兄ちゃんはちょっと黙ってて!私も協力したいんです。ダメなら断ってください。」
シエル:「断る理由はないよ、ペトルはどうだい?お姉ちゃん達も一緒に来ていいかい?」
ペトル:「うん!!おねぇちゃんたちもおにいちゃんもぼくのなかま!!いっしょにいこ!」
シルフェ:ーあ、行くんだね…私も頑張ろう…ー
ユウト:「よっし!人肌脱ぎますか!!俺だって冒険者なんだ!サブクエもこなして行くぞ!!」
シエル、アイリーン達:ーサブクエ???ー
ミオシャ:ーもう…お兄ちゃんの馬鹿…ー
ペトル:「ぼくにつづけぇぇ〜!!」
ユウトの言葉に聞き覚えはなくよく分からなかったが、そんなことよりペトルは本当に純粋な子だと自然と笑みが零れる。
絵本の騎士に憧れた小さなこの子はきっと、いや必ずこの世界の未来を明るくしてくれるはずだと不思議とペトルに期待が膨らんでいた。
ペトルの返事にユウト達も嬉しかったのかかなり張り切った様子で洞窟へと向かうペトルの後をついて行く。
番外編〜ある日の依頼〜【三】へ続く…。
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