【新たな選択のその先へ】【二】
シエルの手を握ったノルンは言葉が出なかった、少しづつシエルの体温が冷たくなっていくのを直(じか)に感じもう息が無いことを悟ると握った手は震え涙が零れ落ちた。
ノルン:「お願い...お...がい……いかないで...おきて...起きてよ...、息をして...どうしてこんなに...冷たいの...ねぇ...いかないでよ...。」
一方デイン、エレボロ共に体力を削られ互いに息をきらしていた。
デイン:「ハア...ハア...お前...ほんとに殺せるのか……。」
エレボロ:「てめぇの...そんな攻撃で...俺が死ぬかよ...俺は...もう死ねねえ〜んだわ...。」
デイン:「し...死ねない...?!...どうゆう事だ...。」
エレボロ:「エハハハッ!言わね〜よバ〜カア!!」
エレボロはデインの槍を弾き飛ばした。
槍はデインの手が届かない程遠くに飛ばされ、デインは窮地(きゅうち)に立たされる。
エレボロはすかさず闇でデインの首と腕を締めつけ身動きを封じ、闇を延ばし飛ばしたデインの槍を掴(つか)み心臓の場所に突き立てた。
エレボロ:「ど〜だ〜?自分の武器で殺される気分はよ〜...いいもんだな〜この槍...ちと楽しかったけどな、もうさよならだ...。」
デイン:ーもう...だめか...こんなとこで...すまない、ミリス...マキシス...後は頼む...ー
エレボロ:「じゃあな...黒髪、どうせこの世界生きてても辛いだけだ...。」
エレボロの声はどこか悲しげに聞こえ、デインは少し不思議な気持ちにさせられた。
エレボロが本当に百年生きているとしてこの世界の何を見てきたのか、この世界に何が起きてきたのか、
デインはその真実を知らずして死んでしまうことに大きな悔いを感じていた。
デイン:「ここで死ぬのは...惜しいものだな……。」
エレボロ:「せっかくだ〜...苦しんで死にな...。」
エレボロはゆっくり...ゆっくりと槍をデインの胸へ突き刺した。
デインの槍の斬れ味はかなり高く、少し触れただけですっと皮膚を貫通してしまう程だった。
デイン「ぐ...ああああああ!!!」
ゆっくり、少しづつ刺さっていく刃はデインの想像を絶する苦しさが襲い、いつ意識が飛んでもおかしくない状況にもかかわらずデインは鍛え抜かれた肉体の為そう簡単に気絶することは許されずただこの激痛に耐えるしかなかった。
デインの叫びにノルンは絶望していた。
ノルン:「もう……いや...なの...、もう...こんなこと繰り返したくないよ……助けて...助けてよ...シエル!
起きてよ!!……起きて...シエル!!!」
ノルンから零れ落ちた涙がシエルの瞼(まぶた)に落ち、そのまま頬(ほほ)をつたいシエルがつけていたピアスに零れた瞬間、ピアスが蒼(あお)く光だし、空は晴れているにも関わらず突如優しく雨が降り始める。
ノルン:「……え、どうして...雨が...っ!!?シエル?!」
空を見上げたその瞬間、頬(ほほ)に優しい風を感じシエルを見るとそこに倒れていたはずのシエルの姿はなかった。
エレボロ:「んあ...?雨だと...?...?!...雨?!ありえねえだろ!この大陸はもう随分(ずいぶん)雨なんて降ってねえはず...雨なんてよ...」
突然デインに刺していたはずの槍の感覚が軽くなったことに気づいたエレボロは目の前の光景に驚愕(きょうがく)した。
シエル:「デイン...眠っちゃってごめん、殺し合いの最中(さいちゅう)に眠っちゃうなんてほんと...アサシン失格だな...もう眠らないから、今はゆっくり休んでてくれ...後は俺が殺るから...。」
デイン:「ばか……やろ……おせえよ...ゆめなんかみてたなら……あとでぶっころして...やる...。」
シエル「もう死にたくないかな...アハハ...。」
意識を失ったデインをゆっくり地面に寝かせ、目を紅く光らせる。
エレボロ:「お...おい...嘘だろ...なんで生きてんだよ...あの娘、依頼の情報には無かったがなにしやがった...、アサシンが蘇生魔法なんて唱えられるはずがねえ……。」
シエル:「俺の仲間で随分(ずいぶん)遊んでくれたな...お礼に俺も遊んでやるよ...。」
エレボロ:「うるせえ!!さっさと視界から消えろ!!!化けの皮剥(は)いでやらああ!!。」
エレボロはシエルに何本もの闇の刃で襲いかかり全身を突き刺した...が、
エレボロ:ーよし!!ぶっ刺さった!!確実に...!ー
シエル:「お前には...何が見えた?俺はここだよ...」
エレボロ:「っ!?んな馬鹿な...てめぇは確実に殺ったはずなんだ!!今も殺気すら感じねぇ...ほんとに生きてんのかてめぇは!!」
シエル:「あぁ...生きてるよ、殺気がないのはお前に対して殺意がないからだ、言ったろ...遊んでやるって。」
エレボロに対し一切攻撃は仕掛けず、ただ交(か)わし何度も何度も背後をとる。
エレボロはその状況にかなりの恐怖を感じていた...。
攻撃は当たらず、必ず背後をとられいつでも自分を殺すことができるであろうシエルの行動にエレボロは自分の死がすぐ目の前だという恐怖を焼き付けられたかの様な状況に怯え、今にも自害したくなるような感情に陥(おちい)っていた。
エレボロ:「くそっ!!くそぉぉぉぉ!これならどうだ!!俺の視界から消えやがれ!!」
エレボロは闇で体から大量の棘(とげ)を出し広範囲に棘を伸ばした。
だがシエルは背後にも立っておらず視界からも消え、必死に探すも
気配すら感じなかった。
エレボロ:「どこだ...絶対死んでねぇはずだ!当たった感覚が無かった...どこにいやがる!!」
シエル:「なんだ...お前顔見えないから何個も目があると思ったら二つしかついてないんじゃないか...」
エレボロは突然きこえたシエルの声にビクつき、前でも後ろでもなく自分の上に浮いている事に驚きを隠せなかった。
シエル:「敵が必ずしも背後や正面だけに立つと思うな、経験が無いな〜ガキ。」
エレボロ:「エ...エハハハ浮けんのかよ、その言葉...前にも言われたよ...あんたのその体の持ち主にな」
シエル:「お前、俺の過去知ってるの?だったら教えてくれよ、何も覚えちゃいない...。」
エレボロ:「覚えてないだと?あんた記憶を失ってるのか?」
エレボロ:ーいったいどういうこった...俺たちの前から消えた後あの人になにがあった......ー
エレボロはシエルの言葉から過去になにかあったことを悟ったものの明らかにエレボロやハディスがしるシエルではなく、動きも衰(おとろ)え、戦い方も違った為深く考える必要があると判断し戦闘態勢を解除した。
シエル:「??どうした...なんで闇を引っ込めたんだ?」
エレボロ:「やめたやめた〜...あんたはまだ殺せねえ、ここは一旦引かせてもらう...あの黒髪を殺す依頼の期限は無いからな、また満を持して殺してやんよ...」
シエル:ー期限ね...雇い主聞いたとこで言うような相手ではないし...デインもなんとか生きてはいるから俺達の依頼はとりあえずは完了ってとこか。ー
エレボロ:「さ〜てと...行くかハディ...ス...?!!」
エレボロに殺気を感じないのを確認しデインの元へ向かおうとした...が突然エレボロが叫んだ。
エレボロ:「おいバカ!!よせ...!」
タタタタタタッッ!!!
ハディス:「消えろおおお!!悪夢がぁぁぁ!!!」
ハディスが勢いよく斬りかかってきたが殺気が全身から湧き出ていたため安易に攻撃を避けることができ傷一つつけられることはなかった。
ハディスの剣を横に蹴り飛ばし顔をそのままの勢いで回し蹴りした。
ハディス:「ゴフッッ...ガハ...ガハ...クソッ……クソぉぉ!!エレボロ何してやがる...!あいつを殺るんだ!!」
エレボロ:ーあいつがあそこまでムキになりやがるなんて...今はどう考えても理性が保ててねえ...俺が何言っても聞きやしねえだろ...何してるはてめえだ馬鹿野郎、今の俺らじゃあの悪夢には勝てねえぞ。ー
ハディスは殺意と怒りを強く感じる目つきで息を大きくきらしていた。
そんなハディスをエレボロは止めることすらせず、ただ見ていただけだった...。
シエル:「今のお前じゃ俺にかすり傷すらつけられないよ...殺す相手を前にして大声あげて斬りかかって殺せるわけ無いだろ...。それでも殺しを主にしてる殺し屋を名乗るって言うなら向いてないよお前。」
ハディス:「黙れっ!!……だま...れ...よ……、なんなん...だよ、なんで今更俺達の目の前に出てきたんだ!!あの人の体を返してくれ...俺の手で...俺の手で埋葬してやる!!」
再び向かってくるハディスに紫黒煙(しこくえん)が覆(おお)い魔人の様に角が生え、鋭い爪の剛腕を振りかざして攻撃してきた。
目でなんとか追える速さで初撃は避けることができたが、突然背後に回り込んできたハディスに対応できず足を掴(つか)まれ宙ぶらにされてしまった。
魔人化したハディスに先程の理性は残っておらず大きな雄叫(おたけ)びをあげ爪を長く延ばし腹部に突き刺してきた。
シエル:ーありゃ...さすがに死んだわこれ...ごめ...!!ー
死を悟り目をぎゅっとつむると、突然掴まれていたはずの足が急に軽くなり頭に強い衝撃を感じた。
シエル:「っつ〜...ててて、なにがおきたんだ??おえ?!!?」
痛い頭部を撫でながら目を開けるとそこには足を掴んでいた腕が斬られ、黒い血が吹き出ているハディスと
その腕を斬ったであろうロキシルが立っていた...。
ロキシル:「お前の事だから大丈夫だろうと鑑賞してたら...ったくなんだそのざまはバカタレ!」
【鬼神と帰還】へ続く〜。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます