【新たな選択のその先へ】


【シエル、デイン、レイン】対する【ハディス、エレボロ、ベルザス】...

シエルとデインはハディス・エレボロにかなりのダメージを与え態勢を立て直し連携技を仕掛けようとしていた...そしてレインもまたシエル達に負けじとベルザスに攻撃を仕掛けていた...。


レインは怒り狂うベルザスに強く睨み、

再度魔獣化したベルザスに刃が通らず、攻撃を交わしつつどうするか考えていた。

デインの槍は特殊な鉱石とヒュドーラの牙を錬金錬成されている為魔人をも斬り裂くことが出来るというがレインの剣は王都内の武器屋で購入した安物だった為対人には強いが相手が魔獣化するとなると話は別だった...


レイン:「クソ...俺のこんな安物じゃあんな化け物に擦(かす)り傷すら与えられねえ、

ガルガル吠えやがって!イライラすんな!こいつに...こいつに重い一撃をくらわせられる方法がなにかあるはず...!!」


レインが考えている間もベルザスは攻撃を止める事はなくレインはかなり追い詰められていた。

ベルザスの魔獣化はデスアリゲーターの様な姿で口がかなり長く大きく牙も多いため一度噛みつかれれば即死級の致命傷(ちめいしょう)を負ってしまう。

レインは逃げることしか出来ない状況に自身に対し怒りと屈辱(くつじょく)を感じていた。

ー"こんな時にも"...俺はなにも出来ないのか...あの時もそうだ...俺は何も出来なかった...ー

レインはシエルに出会った時のことを思い出し悔しさで歯をギリギリと噛み締めた。


ベルザス:「グルルウラアアアアアア!!!ざっざどぎえ゛や゛がれ゛!!」

ベルザスの牙がレインの腕にかすり皮膚が少し削(そ)がれた。

今までに味わったことの無い痛みにレインは悶絶(もんぜつ)する。


レイン:「あああああ!!くっ...くそおおお!!!痛え...今にも意識が飛びそうだ...死ぬ...まじで死んじまう...!!...に、逃げなきゃ...逃げ……。」

レインー逃げるのか...俺は...なんのためにシエルのパーティーに入ったと思ってんだ...あの時見たあいつの背中に絶望を感じたくねえからだろ...!あいつの...横に胸張って立つって決めたからだろ!!ー


レインは立っているのもやっとな程の激痛を食いしばり皮膚を削がれた腕をふらつかせた。


ベルザス:「つ゛い゛に゛あ゛ぎら゛め゛だが!!お゛どな゛じぐぐい゛ごろ゛ざれ゛な゛!!」


レイン:「ああ?喰われんのはてめえだ...俺にも...唯一(ゆいいつ)シエル(あいつ)に追いつけるもんがある...代償はでかいが、今はんなこと言ってられねえ…俺の体がちぎれても...てめぇを喰い殺してやる...はあ...もう足使いもんになんねえかも...覚悟しねぇとな。」


レインは風の加護を脚(あし)に纏(まと)い脚の筋肉に力を入れる。

レインが唯一シエルと互角で並ぶことの出来るスキル【瞬羅(しゅんら)】、このスキルは限られた者にしか使用出来ず、ある全ての条件が揃わないと扱えない特殊スキル。


ースキル【瞬羅】の獲得条件ー

・風の精霊と契約し風の加護を扱えし者

・風の加護を身にまとい素早さに耐えし者


この二つの条件は可能な者もどこかに存在するがスキルを獲得する最後の条件が

・"代々王家に仕えるアサシンの一族の血統である者"

この最後の条件が揃い獲得出来るのである。


レインー名を"ラクシュバル・アイ・レイン"

この世界の四大大陸と呼ばれる大陸の一つ

風神を司る大陸"バルバザス"、その大陸を統治するレノバスタ王国に仕えるアサシン、

ラクシュバルの一族に生を受け風の加護を使いこなすアサシンの一人...


だがレインは今まで使用する場面が少なく、使い慣れていないスキルだった為覚悟を決めていた。

風の加護をまとっているとしても、超高速で動く為肉体にかかる負荷がかなり大きく短時間でも肉体を引き裂く程のダメージを負ってしまう。

かつてない敵を目の前にし、自身の限界を超え一瞬で決着をつけるという決意と覚悟をしていた。


レイン:「瞬羅...このスキルの名を付けたのは遥か昔...龍神族とかいうもう存在してないような者達が名付けたんだとさ...すげえよな...。」


ベルザス:「あ゛あ゛??な゛に゛い゛っでん゛だ??」


レイン:「一瞬で終わらせるって意味らしい......一瞬でな……。」


無音だった...ベルザスが息を吸い、息を吐こうとした時には既に終わっていた...。


ベルザス:ーアガッ...?!く...口に違和感が...どうなって……!!?ー


バウォッシャアアアアアアアア!!!!


ベルザスの大きな口は顎(あご)から裂け、血が大量に吹き出ていた...。

レインは全ての動きがゆっくり...ゆっくり遅く見え、瞬(まばた)きを一回した時には既にベルザスの目の前に移動し、攻撃を仕掛けていた。

ベルザスからは超高速で動いている物体のように認識され、目で追うことは不可能だった。


そしてレインは超高速で動く為、かかる負荷はまるで何十ものドラゴンが空から落ちてくるような圧力になる。


そしてその圧力はレインの行動一つ一つにかかり、拳を地面に叩くだけで地面が深く削れるほどの威力があるのだった。

その圧力を利用し剣の柄(つか)でベルザスの牙を粉々に叩き割り、剣を口の中で舌ごとぶっ刺した。

その攻撃がベルザスの顎(あご)ごと削ぎ落とし現在に至る...。


レイン:「ハァ...ハァ...もう少し...もってくれ...」

レインの腕の皮膚は火傷(やけど)し、ただれていた。

体全体がブルブルと震え、立っているのもやっとだった。


ベルザス:ーくっ...くそっ!...再生が追いつかねえ...痛え...痛えぇぇぇぇ!!!!ー


レイン:「お前...だいぶピンチみたいだな...ったく、こうまでしないとあいつらと互角に殺りあえねえってか...シエルやデインの凄さを嫌という程感じるよ...嫌味(いやみ)に感じるぜ…クソッ……。」


レインは超高速で動きながら

ベルザスの目、脚を何度も何度も斬りまくりベルザスを瀕死(ひんし)まで追い込んだ…。


レイン:「おぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


ベルザス:ーやべぇ…!!死ぬ…!死んじまう!!!俺が殺されるってのかぁぁ…!?ー


レインが最後の力を振り絞り一撃入れようとしたその瞬間……


キンッッ……パシィィィィン……

レインの剣が耐えられず砕け散ってしまった。


レイン:ー…!?!!…そ…んな……ー

絶望……重い感情を押し付けられ

為す術なくレインは倒れた…。

ベルザスは状況を察し瞬時に魔獣化を解いたがダメージはかなり大きく、完全に再生する事は出来なかった。


ベルザス:ーや……やばかった……運は俺に味方したってのか……信じられねぇ……クソッ…あと少し再生が追いつけばあいつを刺してぶっ殺せるのに…!ー


魔獣化を解いたものの裂かれた顎(あご)は戻らずダメージも残っていたためベルザスもレインに手出しできず地面に倒れた。


レイン:ー…ダメだ……体が動かねぇ……痛みも感じねぇ……全部麻痺してるみたいだ……こんな…こんなとこで終わるのか…俺は………ー


レインもまた骨という骨は砕け、皮膚は火傷したように真っ赤にただれていた。

瞬羅で体力を大きく消耗し視界もぼやけレインはそのまま意識を失った…。


???:「良く…頑張ったなレイン」


〜一方シエル・デイン〜


シエル:「呼吸合わせるぞデイン!」

デイン:「任せろ...久々なんだ...着いてこいよシエル...」


シエルとデインは互いに背中を合わせ、剣と槍を前に突き出す構えをとった。


エレボロ:「来るぜ〜ハディス...」

ハディス:「ああ...向こうの攻撃の隙を見て仕掛けるぞ...」


ハディスは腕を抑え立ち上がる...。

それを見たエレボロは静かに息を飲む。


エレボロ:ーここまでやられるハディスは見た事がねえ...だがこいつはこんだけボロボロになっても殺気だけは生き生きしてやがる、ったく...楽しそうな顔しやがって...俺も興奮するじゃねえか!ー

エレボロ:「ヘヘヘ...エハハハハ!!ハディスっ!お前といるとよ〜退屈しねえな〜!!」

ハディス:「...なんだ急に、変なやつめ...」

ハディスはフッと笑っていた...互いにこの瞬間を楽しんでいたのだ。


エレボロ:「"あの時"...お前に着いてきて良かったと心底思うぜ、今目の前には最高の獲物が二人もいるんだからな〜...いくぜハディス!!」

ハディス:「フッ...わかってんだよ...バカが...なんだかな、さっきからニヤけが治(おさ)まらねえんだ...!!」


シエル:「さて...踊ろうかデイン...!」

デイン:「合わせろよシエル!」


シエル「バマイラ!!」


シエルの言葉が号令になりデインが槍を力いっぱい投げた、瞬時にシエルが走り出しシエルもダガーを投げる。


エレボロ:「んだっ!!?何考えてやがる?!」

ハディス:「エレボロ!構えろ!!」


エレボロ:ーなっ...!?動きが読めねえ!!ー


シエル・デイン「ドラグラスバイラ(龍の舞踏会)!!」


デインがシエルのダガーを、シエルがデインの槍で交互に攻撃し相手が攻撃する隙をつくらせずまた、攻撃される隙すらも与えない二人の連携技がハディスたちを追い込む。


ハディス:ーダメだ!!攻撃する暇もない...!防ぐことも!!ー

エレボロ:ーこっちが攻撃しようとするとその隙をくぐって逆に斬られちまう!!ー


エレボロが弱った隙にシエルが脚で蹴りあげその瞬間にデインがシエルのダガーをぶっ刺しシエルが槍でダガーの柄に槍先を叩き込み腹部を貫通させる。


エレボロ:「ぐはっ...!!!!やべぇ...死ぬ!!」


エレボロの腹部から貫通した槍をデインがハディス目掛け投げシエルがそれを取り上空から回転しハディスの肩に重い一撃を与え、膝をついた瞬間にデインがダガーを脳天に突き刺そうとした……その瞬間。

紙一重のところでエレボロの闇が剣先を止めた。


エレボロ:「ゴプッ...エハハ...危なかったぜ...槍で貫かれたのがもし俺じゃ〜なかったらよ〜...」


デイン:「そんな...!?ありえないだろ...ハア...ハア...確実に貫いたはずだ...」

シエル:「ありゃま...ここまでしぶといと...さすがに打つ手が無くなって来るんですけど...」


エレボロ:「俺は腹撃ち抜かれたくらいじゃ〜死なねえ...まあ傷口はかなり激痛だがな〜」

ハディス:「ようやく...だな...この...瞬間をまってたんだ...お前たちの隙がでる瞬間を...」


エレボロはシエルとデインを闇で包もうと頭上で大きく広げた、

危機を感じた為二人で逃げようとしたが闇が大きすぎて身動きが取れなかった。

なんとか一人なら抜け出すことが出来ると思った俺は

大声でデインに呼びかけた…。


シエル:「デイン!!引くんだ!!!一人だけならまだ抜け出せる!!」

ハディス:「もう遅いんだよ...!やれ...エレボロ!!!」

デイン:ーくっっ!!ー


自らが犠牲になろうと考えたデインは助けようにも間に合わない事に躊躇(ちゅうちょ)してしまっていた。

その事を察した俺は瞬時にデインを闇の隙間目掛けて強く蹴り飛ばした。


デイン:「ぐはっ!!...クソ!!シエルぅぅぅ!!!」


エレボロ:「"シャードズ・メイディーン"(闇の処女)」


シエルがドーム状の闇に覆(おお)われ視界が真っ暗になる。

シエル:「なにも見えない!!なんだこれ!!?」


何も見えないシエルに突然無数の棘(とげ)が襲いかかり、

次々に体中を刺されシエルは悶(もだえ)え苦しむ。


シエル:「うあああああああ!!!!!」


デイン:「クソッ!中で何が起きてる!!!」

闇の中からシエルの悶絶する声が響き渡り、

デインは槍で何度も攻撃するが通り抜けてしまい手出し出来なかった。


闇の中で今にも息絶えそうなシエルに最後の追い討ちをハディスが仕掛ける。

ハディスは闇の中でも相手を視認でき、闇の中を自分の餌場に入り込んできた獲物を狩る魔物のように何度も何度も斬り裂きシエルは倒れた。


ドサッッ……


シエル:・・・・・・


エレボロが解除しボロボロになり、血だらけのシエルがその場で倒れていた...。

その光景を見た衝撃でデインは言葉が出なかった...。


ハディス:「……殺った...俺たちの因縁は断ち切られた......」

ドサッ...


ハディスも限界をむかえその場で倒れ込んだ。


エレボロ:「後はてめえだけだ...黒髪...」


デイン:「信じられない...こんなことが...」

歯を食いしばり槍を構えエレボロに怒りをぶつける。


デイン「お前ら...生きて帰れると思うなよ·····!!!」


物凄い速度でエレボロを攻撃するもシエルとの連携でかなりの体力を消耗していた為攻撃に素早さはなくエレボロは攻撃を交わしつつ傷が回復する時間を稼いでいた...。


デインの叫ぶ声がかすかに聴こえていたノルンは木の裏から覗き、シエルが倒れた姿を確認すると心臓がキュッと締めつけられ、手の震えが止まらなかった...。


ノルン:「ダメ...また繰り返しちゃだめ……シエル...!」

ノルンはシエルの元へ急いで向かった。


デイン:ーあの少女...シエルたちが出会ってパーティーに入れたんだったな...何する気だ...」


エレボロ:「よそ見してんじゃ〜ねえ!生きて帰れないのはてめぇだよ!!...」


駆け寄ったノルンは倒れ息もしていないシエルを見て涙が零れ落ちる……。


ノルン:「シエル……お願い...目を覚ましてよ...あなたが生きていなきゃ...ダメなの...」


・・・・・・・・・


暖かい...なんて居心地いいんだろう...。

目を覚ますと真っ青な空が美しく映り、起き上がり周りを見渡すとただ、すんだ緑の草原が広がっていた……。


シエル:「ここは...?俺...なんでこんなとこにいるんだ……なにか大切なこと忘れてる気がする...」


???:「シエル...」


シエル:「え……誰...?」

背後から聴こえた声に振り返ると、そこには灰色の自分と同じ髪型の男が立っていた...。

すると何故か涙が一滴零れる。

しかし、自分の名を呼ばれ誰だったかと思い返すが全くと言って目の前の男が誰かを思い出せなかった。

男の声は何故か懐かしく、どこか安心すら感じる気がした...。


シエル:「えーっと...ごめん...全く思い出せないや、どこかで会ったことあるかな?」


???「泣き虫のガキだったお前を誰が育ててやったと思ってんだあほう...まあ、今はんなこと言ってもしょうがないな...」


シエル:「な...?!泣き虫ぃぃぃ?!俺めったと泣かないし!!誰と間違えてるのさあんた!」


???「ったく...その顔ぶん殴ってやりてえが今は我慢だ...泣きむシエル、お前はまだここに来るべきじゃねえ...なに馬鹿な顔さらしてんだ!戻ってやるべき事をしてこい!」


男が言うことに頭が追いつかなかった、意味不明だった...まるで俺の事をずっと前から知っているかの様な口調で俺の事を説教してくるのだから...全く理解出来ない状況に頭を抱(かか)えたくなる...。


???「聞いてんのか??...ったく...シエル、これだけは覚えててくれ..."敵を間違えるな"

正しい選択をしろ...これから先必ず大きな壁にぶつかる、その時は"リンリン"に会うんだ...必ずお前を助けてくれるはずだ...上手く身を潜めて生きてるのは確かなんだ、いいか?忘れるなシエル...お前は一人じゃない。」


シエル:「・・・・だれ・・・なん・・だ・・」


???「おい……ちゃんと覚えておけ………ょ………」


男の話を聞いているうち...瞼(まぶた)が重く感じそのまま深く眠ってしまった……。



【新たな選択のその先へ{二}】

へ続く...。



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