【因縁と因果】

目の前に現れたデインに俺は嬉しさが込み上げ、安心したかったのだが同時に不安が押し寄せた…。


シエル:「なぁデイン、ミリスとマキシスはどうしたんだ?」

デイン:「あぁ…二人なら心配ない、ここからそう遠くない場所に隠れてる。」


ーよかった、二人とも無事なのか…。ー

と不安の種が無くなったことに安堵の息をはいた...。

すると腰が抜けて座りこんでいたシオンがデインに気づいてハッと驚いてフラッとしつつも必死に立ち上がった。


シオン:「デイン!生きててよかった...、ねぇ…ミリスは…ミリ…ス…はぶ...じ………。」

ドサァッ……!

かなり無理をして立ち上がったのか、シオンは膝から崩れ落ちそのまま気を失うように地面に倒れてしまった。


ーあちゃ…無理するから…。ー


シエル:「…大丈夫…ではなさそうだけど、緊張がとけて気を失っちゃったんだな…ずっと心配してたんだよシオン。」

デイン:「ミリスなら大丈夫だ、怪我はしたがまだピンピンしてる。

自分がこれだけ追い込まれていたにも関わらずミリスを心配してくれるなんてな…まったく、良い仲間をもったものだなミリスは…。」

デインの言葉からミリスが無事だと分かったレインは、何か言いたげにもごもごしていた口をはっ!っと広げ喜びを噛み締めていた…。


シエル:ーレインめ、自分から聞けばいいのに…変にかっこつけちゃってぇ〜…ー


ズ…ズズズ……ズズズズ…

唐突に聴こえた音に反応し、その音のする場所に視線を向けると、驚くことに音がしたのはデインが踏みつけている魔獣と化した男からだった…!!


シエル:「デイン…!!離れろ!」

デイン:「ん?こいつまだ動くのか…?直接脳をぶち抜いたはずなんだが…。」


デインは槍をザッと抜き男から距離をとった、俺も距離をとり冷静に戦闘態勢に入り腰の剣に手を当て抜こうとするが...、何故かビクともせず剣がさやから抜けなかった…。


シエル:「あれ…?!?剣が抜けねぇ!!」

デイン:「馬鹿が…お前その剣全然使わないだろ、ちゃんと手入れしてやれ…」

シエル:「ん〜……いつも愛用してるダガーでなんとかなっちゃうからなぁ〜…。」

デイン:「んじゃあその愛用のダガーどこだ...?」

シエル:「あぁ!それならここ…に……??」

ーあれ…???な……ないぃぃぃ!?!?ー


先程まで使い、さやに戻したはずのダガーの柄が手に当たりもせず、ひょいひょいっとからぶることに冷や汗が止まらない…。

基本、戦闘態勢の時は敵から視線を外さない為に必ず自分がダガーを抜きやすい位置にベルトを調節し敵を視野に入れたまま動けるようにしているのだが……。

ーない……ー

・・・チーン・・・・。

レイン:「おい!シエル…あそこ!!」

レインが大声で指さす先には探していた俺のダガーが地面にぶっ刺さっていた……。


シエル:「あ……ぁああ!!思い出した…!!」

そう…さっき喰われそうになったシオンに少しでも早く届こうと必死になり、武器などそっちのけの勢いでダガーをぶん投げてしまっていたのだ……。

ーくそぉぉ...なんという失態...ー


突き刺さったダガーを取りに行こうとした...その時...!!


背後から何者かの敵意を感じ、即座に体の向きを変えた視線の先には、おそらく男の仲間であろう一人の男と...。

ー...男と……な...なんだあああ!??ー


男とその横に現れたのはまるで影...または闇を纏った何かだった……。


デイン:「やっと出てきたのか...かなり待ったぞ。」

デインは男達を睨みつけ、強く視線をおくっていた…。


闇を纏った者:「おいおい〜...なんか増えてんじゃねえか、面倒だな〜、んあ?おい見ろよ…馬鹿が寝てやがるぞぉ~??お前らそのままそいつ殺しちゃえよ!今なら殺れんだろ...。」


どうやら闇を纏った者の中身は声からするに男だということがわかった。

それに加え、死んでいるのか怪しい魔獣の男とは顔見知りらしい。


レイン:「あいつ...魔物か?人には見えねえな…。」

デイン:「俺達三人が手こずってなかなか帰れなかった理由がこいつらだ...。少し手強いぞ。」


闇を纏った者:「んだ?お前ら...目の前に今にも殺れそうな獲物がいるってのによお~、そんな俺をジロジロ見んなよ〜照れるじゃねえか〜、俺の顔いい顔だろ~……って、見えてねえか…エハハハ...おい!今のどうよ〜!ウケたか??」


謎の男:「・・・・・」


シエル:ーな...なんだあいつら...ー


ズズ...ズズズ...!


レイン:「おい!!二人ともそいつ動いてんぞ!!」

闇を纏った者:「あ~あ...もったいねえ~、馬鹿だな~お前ら...。」

魔獣の男:「グルラアア...う゛あ"あ"……うるせえんだよクソどもが...。」


男の体がどんどん人体へと戻っていき、更には腕までもがみるみる再生していた…。


シエル:「おいおい嘘だろ...こいつ何者なんだよ…?!」


体が再生した男は高く飛び上がり二人のもとへ移動した。


闇を纏った者:「ちっ…こっち来んなクソ野郎、てめぇ嫌いなんだよ〜。」


魔獣の男:「あ"ぁ"ん?黙れ雑魚が!さっさとこいつら片付けんぞ…。」


闇を纏った者:「あ?てめえ一人で相手しやがれ!俺らのターゲットはあの黒髪野郎だけだ...あとは知らねえ、相手してえなら勝手にやってろ。」


シエル:「ノルン...立てるか?」


ノルン:「う...うん、大丈夫...!」


シエル:「よかった、ちょっと厄介そうな相手だからシオンを連れて隠れてて欲しいんだ、お願いできるかい?」

ノルンは無言で頷き気を失ったシオンを背負って大きな樹木の後へと隠れた。


シエル:「さあ二人とも...!いっちょ暴れますか!!」

レイン:「ミリスに傷負わせたのどいつだ...ぜってぇ許さねえ...。」

デイン:「ん...?よくわからんがミリスに怪我負わせたのはあの魔獣化やろうだ。」


シエル:ーうわぁ...レイン怒ってて自分で何言ってるか気づいてないなこりゃ...。ー


闇を纏った者:「お?なあなあ...あいつらなんかやる気出してんぞ…??な〜ぁ!!殺んならさ~このおバカちゃんにしてくれよな~!!俺らその黒髪の男殺らせてくれりゃ~さぁ~いいんだわ~...おん?どしたハディス...んなこえ~顔しちゃって...。」


ハディス:「 エレボロ...あの真ん中に立ってるやつ見えるか...?」

エレボロ:「んあ?俺そんな目が悪いと思われてたのか?実はだな~...」

ハディス:「・・・・・」

エレボロ:「わーたわーたよ...んな睨むんじゃね~よ~...しっかり見えてんぜ~...実は最初見た時から気になってたんだよな~」


シエル:「あいつらなんか俺見てない??」

レイン:「じゃあお前差し出せばあいつらかえるんじゃね?」

シエル:「え...デインじゃないの??さっき黒髪~って言ってたし...」

デイン:「お前ら少しは緊張感をもて、調子が狂う...、全く変わらんなお前らは...。」


俺とレインの会話で少し気が楽になったのかデインは少し嬉しそうにフッと微笑んだ。


魔獣の男:「おい!!てめぇらいつまで突っ立ってる気だ!あ゛あ゛ん゛?!」

エレボロ:「おい...お前誰にそんな口聞いてんだ?消すぞおめえ...」

ハディス:「二人とも黙れ...ベルザス...あまり調子にのるな...俺が剣を抜く前に忠告をしておく。」

ベルザス:「チッ...クソが...」

エレボロ:「話戻すけどよ~あの紅髪の男..."あの人"に見えねえか~?信じたかねえんだが~...」

ハディス:「ああ...俺達の前から消えて百年程経つが今更現れるとも思えない。"あの人"は俺達を捨てたんだ...なのにあの時と全く変わらない姿で俺達の前に立ってるあいつは誰だ...なぜ同じ顔で、同じあの存在感で俺達の前に現れた…神のイタズラってやつか……?」

エレボロ:「お?たまにはお前も洒落たこと言うもんだね~、まあ興奮しすぎも良かねえ、俺も目の前に見えてるあいつが幻かゴーストであって欲しいってもんよ……って聞いてるかハディスさ~ん??」

ハディス:「ベルザス、エレボロ...あの紅髪は俺が殺る...!!」

エレボロ:「あ~あ...もう何言ってもダメか...んじゃ俺は黒髪殺ろ~かね~...。」


シエル:「おっと...あっち殺る気っぽいね~アハハ...。」

デイン:「お互い相手は決まったな...。」

シエル:「え...俺決まってないよ??...だーれーにーしーよーうーっかなーん~よーげーんーしゃーのーい~ううぅぅ……」


自分を狙っていると嫌でもわかる殺意を黒髪の男から感じたその瞬間...!

武器を抜いて瞬時にこちらへ向かってきた...。


ハディス:「必ず殺る...!!!」


シエル:ーおっ!向かってきたか...ダガーまでの距離は...ざっと大股二十っ歩ってとこかな...ー

シエル:「よし...とどくっ!!」

突き刺さったダガーの距離を確認し相手をギリギリまで引き寄せる。

ー俺なんかしたかな~...ちょっと殺意高すぎない??……でも、おかげで自由に動けるー


相手の間合いを知るため、剣を振る瞬間を脳内に叩き込む。

シエル:「さ~て...ついてきてくれよ俺の肉体様...!」

ー来るっっっ!!ー

剣を振ろうとした瞬間を確認し瞬時にダガーのもとへ走る。


ハディス:ーっ?!!間合いを読まれたのか...?!……いや、やはりあの時のままだっていうのか?!

あの動き...あの観察力、同じ者としか思えない...余計に怒りが湧いて来る...!!ー


シエル:「よーっし!これで対等だねんっ!ちょっと聞くんだけどなんで俺なの~...。」

ハディス:「・・・・」

シエル:「まぁ...答えてくれないですよね~、じゃあ...喋ってもらおうかな!」


鷹龍の目を使い相手の動きを全方位から見る。このスキルで相手の動きが手に取る様に分かる...。


ハディス:ー瞳が紅くなった?!!あれは間違いなく鷹龍の目の"神眼"〔しんがん〕、あの人以外使えるはずがない...確定だ...!今...ここで必ず殺す!!!これは宿命だ...そう感じざるを得ない。ー


シエル:「おお?なんか燃えてますな~、んじゃ!俺も手加減無しでいきますか!!」


ダガーの剣先を額に当て目を瞑る...。

ー感じろ...風の流れを、鼓動の音を...感じろ...己の強さを!!ー


剣の構えを変え剣先を背中側へ向け体勢を低くする。


ハディス:「俺の目の前から消えろ!!!!」

シエル:「なんだよっ!ちゃんと喋れるじゃん!お話しよ〜よぉ〜??」

ハディス:ーくそっ…舐めた態度とりやがる……まるで他人の皮を被った化け物だ……ー

ハディス:「ひとつ聞く…お前は何者だ……。」


シエル:「お!やっと会話できそうだな〜よかったよかった!俺は

"ヴルスト・ハンス・シエル"ただのアサシンだよ、まぁ最近じゃアサシンって珍しいかな…アハハ。」

ハディス:「っ!?なんだと…ふざけてるのか…??ヴルスト…だと…、馬鹿にするにも程があるぞ!」


シエル:「ええ!?なに?!そんな俺の名前変かなぁ!?すっごい怒るじゃん…!」


ハディス:「その喋り方…"あの人"はそんなふざけた口調はしなかった…返せ……その体を!!!」


シエル:ーもう…なにがなんだか訳がわからない…誰かと勘違いしてるのか??ー


……一方デイン対するエレボロ…。


エレボロの纏った闇の一部が大鎌になり、スキュラの脚の様に何本も生やし素早い攻撃でデインを追い込んでいた。

次々に迫る攻撃を槍で受け流すことに精一杯のデインはエレボロから距離をとった。


エレボロ:「おいおい~なんか前に殺りあった時より生き生きしてんじゃねえかよ~!仲間ってのはお前をそんなに奮い立たせる存在なのか~??」


デイン:「フッ...お前は煽るのが一番の才能みたいだな影やろう、馬鹿にしたようだが、俺の仲間の中でもあの飛び抜けて大馬鹿の"あいつ"はお前が思ってる様な雑魚じゃ無い...俺でもあいつを殺れるなら殺ってみたい程にな。」


エレボロ:「馬鹿にゃ~してねえよ~?あの動き、まあ昔よか訛ってる気はするが...、なあ教えてくんねえかな...?あの紅髪...いったい何もんだ??ちと気分が悪ぃんだよ...。」


デイン:ー?!...あいつ、シエルの過去について何か知っているのか...?どういう繋がりだ...。ー

デイン:「答える義理は無いが一つだけ言えるのは、俺もあいつの過去が知りたくてな...あいつと出会って五年程経つがなかなか過去を語ろうとしない...聞いても覚えてないの一点張りだ、困ったものでな。」


エレボロ:「ん~、ちと興味深いこと言うな~...俺が知ってんのはあの紅髪だがあの紅髪じゃ~無ぇ、意味分からんかもしれねえが俺が知ってんのはもう百年も前に生きてたあいつと容姿が一緒な人物だ...。」


デインは百年という言葉に驚きが隠せなかったのか声が出なかった、同時に目の前に立っている相手にとてつもなく大きな疑問が生まれていた...。


デイン:ーい...今...百年って言ったか...?!こいつらいったい何年前から存在してるんだ...シエルに似た容姿の人物というのも気になる、やはり"バアヤ"の予言は本当だって言うのか!?ー


エレボロ:ーおっと、喋り過ぎたか?まあいっか...どうせ殺っちまうんだ。ー

エレボロ:「んじゃ~喋ることも無さそうだし終わらせっか~...。」

出していた大鎌を戻し、無言で両手を広げた。


エレボロ:「最初からこうしてりゃ~よかった...すぐだ、すぐ殺してやんよ...まあ楽にとは言えねえが。」


エレボロの纏った闇がマントの様に変わり体の形がある程度分かる姿になった。

真っ黒い手を広げると袖からみるみる出てくる闇が銃の形へと変わっていった。


エレボロ:「ぶっぱなしてやんよ!!じたばたしてくれんなよ~?面倒だからよ~...まあ弾は尽きねえからいいけどよ~。」


デイン:「あれは...!?魔道具{銃式}を闇で再現したって言うのか!?魔法なんてものじゃ説明がつかないぞ...何者なんだこいつは...!!?早く終わらせないとな……これ以上種を明かされても洒落にならない。」

デインの瞳が金色に変わり槍を構えた。


デイン:「金色に輝きし獅子竜よ...今、我が前に勇ましきその姿を表し我が為にその力を与えたまえ...!!」


デインが称えると金色のたてがみをなびかせ鋭く大きな牙と爪を持った"獅子竜レオゼオス"が姿を現した。


エレボロ:「ほ〜!聖獣様かよ~、しかも獅子竜ときちゃ~たいしたもんだな~...お前王家だったのかよ、その刺青偽もんだと思ってたぜ~、砂漠大陸を統治してる"ナルビスタ"の血筋だったとはな...余計に殺す価値上がったぜー!!!」


エレボロは闇の弾丸をデインに乱射した、デインは獅子竜にまたがりエレボロから距離をとった。


デイン:ーシエル達に影響が出ない範囲まであいつをおびき寄せれるかが勝負だ...!

大きな賭けだがこれにかける他ない...!!ー


シエルーハディス


シエル:「デインが聖獣を召喚した...!?それだけ相手も厄介ってことか、もう少しこいつの相手をして隙を見て態勢を立て直そう...。」


ハディスの攻撃を全てかわし少しづつ間合いを近ずけた。

ハディスは息を荒くさせ、かすりもしない攻撃を幾度となく続ける。

向けられた殺意に怒りと"悲しみ"を感じ、その感情が自分に対してではなくハディス自身に向けられていることに疑問を感じていた。


シエル:ー俺を"殺したい"の一心で攻撃してはくるけど隙だらけだ...ちょっと目を覚まさせてあげようかー


ハディスの剣を持った方の腕を強く回し蹴りし、痛がり体勢を崩した瞬間に大きく距離をとりダガーを鞘に戻す、スーっとゆっくり息を吹き、大きく息を吸い左手を前に出し右手を腰の辺りで強く握った。

目を閉じ耳を澄ます...膝をついている相手が立ち上がるその瞬間を狙ってみぞ一点に拳を叩き込む武闘の構え...時の流れがゆっくりに感じる、遅く...ゆっくり...ゆっくりと……。


ハディス:「うぐっ...!クソッ...手が痺れて握れない...!!……!?まずいあの構えは!!!」


ハディスはシエルの構えに身に覚えがあったのか咄嗟に避けようとした...が、ハディスは焦りのせいで

"そのこと"に気づいていなかった...立ち上がってはいけないということを。


シエル:ー今!!!ー


スッッ……パアアアアンッッ!!!!

空気を弾く音が強く響き、大きく飛ばされたハディスの体内はかなりのダメージを受けていた。


ハディス:「ぐはっっっっ!!!……」

ーダメだっ...!!息がまともに出来ない...か...体も動かせない...くらった事は無かったが、まさかこれ程までの威力とは...舐めていた。

武闘のスキルが使えるアサシンが他に誰がいるっていうんだ...ありえない事なんだ...!!ー


ハディスは強く疑問に思った...。

この世界のジョブではアサシンならアサシンと盗賊のスキル,ファイターは武闘家、拳闘家やファイターナイトのスキルしか取得出来ないためアサシンがウィッチやガーディアンのような他職種のスキルが取得不可能なのである。

その為アサシンのシエルは自己流で武闘スキルを編み出したのではないかという結論にハディスは至ったが,

そんな事はそう簡単にできることではないと、シエルの底知れぬ強さに出会った時の憧れを思い出していた。


ハディス:ーそんな...そんなあの人に出会い、憧れたからこそ今目の前にいるお前が許せない...!!ー


ハディスはボロボロの肉体を無理に動かした。


シエル:「あらら...まだ動いちゃうのか、タフなのは困りますな~、ちょっと大人しくしててよ...。」


ハディス:「...う...黙れ...お前を殺すと...そう言ったはずだ...。」


シエル:「じゃあ...今すぐ立ち上がって俺に一撃当ててみろ。」


ハディス:ー?!!...あの時も...そう言われたな...ー


ハディスは"あの人"との思い出の中に同じ言葉を言われた事を懐かしく感じ今の自分とその時の自分を照らし合わせた。


ハディス:「俺...は...あの時とは違う……、もう...あんたの前で...泣いてたガキじゃないんだ...よ...。」


シエル「...なんでそんな悲しい目をしてるんだ...お前。」


デインーエレボロ...


デインはある作戦のためエレボロをシエル達から遠ざけていた。


デイン:「かなり距離をかせげたな、そろそろ終わらせるか...。」


エレボロ:ーあの野郎...ずーっと逃げてんじゃねぇか、俺の体力はそんなやわじゃねぇ〜っつの〜、そろそろ終わらせっかな。」


エレボロは追いかけるのをやめ、銃を単発式から連射式に変え、二丁から四丁へと闇を増やした。


バラバラバラッッッ!!!!


エレボロ:「さぁ!!デスキラービーの巣にしてやんよ~!!」


デイン:「ちっ...仕掛けてきたか!いくぞっ獅子竜!力を貸してくれ!」

レオゼオン:任せよ...主に我の力をかそうぞ。」


エレボロの撃った弾を槍で弾き返し槍を天にかざした。


デイン:「轟け!獅子王の前にひざまずけ!!"王の咆哮(おうのほうこう)"」


グゥラア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッ!!!!

レオゼオンの咆哮が大地を削り風を割く、エレボロの闇が銃を収め響き渡る咆哮に耳を抑える。


エレボロ:「クソッッ!!耳がイカれちまうっ!!頭が破裂しそうだっ!!!体も震えるっ...」


レオゼオンの咆哮(ほうこう)に手も足も出ないエレボロは震えた足を必死に動かそうとしたが全くいうことをきかなかった。

その隙を見てデインがエレボロの首元に勢いよく斬りつけた。

デイン:ーんっ?!!ー


首を斬ることはできなかったが、切り裂かれた闇の隙間から一瞬金髪の顔が見えた事にデインは驚いていた。


デイン:ーまさか本当に闇を纏(まと)っていたなんて...でもそんな事不可能だろっ?!闇を操るなんてそこらの賢者でも無理だ...いったいどうやって??ー


エレボロ:「クソがっ、顔を見られたか~?!まずったな...いったん引くか。」


エレボロはなんとか動いた足でハディスの元へ向かった。


デイン:「引いたか、俺もシエルと合流しよう...獅子竜(ししりゅう)、助かった...ゆっくり休んでくれ。」

レオゼオスは神々しくひかり消えていった。

そしてデインもシエルの元へと向かった。


エレボロはボロボロになったハディスを見て少し戸惑っていた。


エレボロ:「おいおい〜ひでぇやられようだな~ハディス...」

ハディス:「ヒュー...ヒュー...お前もだろ...エレボロ...なんだそのざまは...。」

エレボロ:「おっ??わかっちまうか~?俺の"血"がいうこと聞いてくれなくてな...厄介なもんだな聖獣ってのは...。」


シエル:「無事で良かったデイン...結構な博打に出たな。」

デイン:「まぁな...あの咆哮(ほうこう)は敵仲間関係なく影響が出てしまうからな、俺も乗ったままは初めてだったからか体がビクついて震えが止まらない...下手したら乗ったまま体が破裂しておさらばだっただろう。」

シエル:「結構扱いずらそうだな聖獣ってのも...。」

デイン:「そうでもない...操り方次第だ、上手い操り方をすればもっと戦略も広がる、たまには聖獣(あいつ)とも話さないとな...。」

シエル:「まぁ、生きてて良かったよ...もう少し自分の体を大事にしてくれよな、助けにきたのに死んだなんてロキシルに言おうもんなら俺も死んじゃうよ...それだけは勘弁。」

デイン:「フッ...心配するな、そう簡単に死んでたまるか...まだまだやらないといけない事があるんでな。」

シエル:「ん〜よくわかんないけど、なんか安心したよ!...そういえばレイン大丈夫かな??」

デイン:「ちょくちょく見ていたが大丈夫そうだ、あの魔獣化野郎と仲良くやってるみたいだな...。」


レインはベルザスと睨み合っていた。


レイン:「このクソ野郎...お前がやらかした事の重大さをその身で思い知らせてやる!!」


ベルザス:「てめぇ...さっきから訳わかんねぇことばっか言いやがって!!うぜぇうぜぇうぜぇうぜぇうぜぇええええ!!!興味ねえんだよんなこたぁ!!その腹の立つ声を二度と出せねぇようにしてやる!!」


レイン:「お前みたいなイカれ野郎を相手するのが...俺ら"アサシン"だ!!」


シエル:「あいつはあいつで楽しんでるみたいだよ、デイン...俺たちは俺たちでこっち片付けますかんっ!!」

デイン:「そうだな...シエル、久々に一緒に踊るか?」

シエル:「おお!それはそれはいいお誘いですな〜...そのお誘い、ぜひお受けしましょう。」


ハディス:「まだ...動けるか...?エレボロ...。」

エレボロ:「おう...全然よゆ〜だぜ〜?お前も立ってくれよ...ちと二人で暴れようぜ〜ハディス...」


シエル・デイン:「さあ、舞踏会(ぶとうかい)といこうか。」


ハディス・エレボロ:「俺たちは...この殺し合いに勝つ!!」


互いに目の前の敵に"次は必ず殺す"と強い視線を向けた...。



{新たな選択のその先へ}

へ続く...。


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〜アサシンズ・クラウン〜【暗殺者の王冠】 空の上の猫 @soraneko2525

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