黄昏の語り第三章、十話
「10」
クワンガラ鍛錬法には、基礎戦技も乗っていた。
相手の攻撃を打ち落とし無効化、そのまま切断、あるいは、返し切りで仕留める。
大斧使いのクワンガラは、圧倒的な破壊力で相手の攻撃を撃墜しそのまま相手を両断する。対魔物戦術の近接理論において、魔物は人より大きく硬く強いのが基本となる。そんな魔物の攻撃を正面から撃墜、そのまま標的を撃破する荒業である。
またクワンガラは理論家であり、魔法を無効化するディスペルと言う高等魔法を戦士ができるくらいに弱く単純なものに落とし込んでいる。
撃墜からの返し切り
この基礎戦技をクワンガラ鍛錬法で鍛えこんでいくと、攻撃魔法・防御魔法を切断無効できる近接物理攻撃に至れる。トマも魔法使いとして強引に攻撃魔法を切断出来るが、クワンガラの技量に遠く及ばない。
高位アンデット、ワンダーフッドとの戦いで闇魔法弾を切り裂いたが無効化に至れず、切断した魔法弾が小爆発してトマを傷つけていた。また、クワンガラは高位の攻撃魔法を無効化する切断ができたが、トマは逃げるより他ない。
そして重要なことだが、クワンガラは女にもてまくった。
子孫が多いファンが多い、クワンガラ自身は、押しかけ弟子に困った。
女でも、あるいは、ナイフ二刀流みたいな連中でも、基礎戦技を大斧使いなのに教えなきゃいけないことが多々あった。暗命派のようにぶん殴って教えるか、女の尻を蹴っ飛ばして追い払う手は使えない、何故ならクワンガラは女大好き愛の人だったからだ。
女性護身術開発に苦慮しつつ、一応成功。
疲れつつ、剣士でも、ナイフ使いでも、メイス使いでも、素手でも、弓使いでもディスペル的な魔法無効化手段の開発に成功した。そこまでディスペルを戦士が使える事に拘ったのは、魔法の圧倒的破壊力と範囲攻撃性に戦士たちが追い付けないからだった。
そして魔物のすべてが魔法適性あり、人族に至っては魔法適性ゼロである。
一から体内魔石生成と言う危険を冒さねば人族は魔法使いに成れない。
エルフ、ドワーフ、獣人族、その他の多種族は魔法適性があり、貧弱な人族に呆れつつ仲間として魔物より守ったが、少しづつ人族は差別される時代が来ていた。人は魔法の将来性にて未来乏しく、戦士として育たねば価値を示しにくかった。科学はフクロウ獣人の発明、魔法はエルフの発明、神と宗教はビダ族の発見、妖精使いは精霊たちの特権にして獣人族系仏教宗派暗命派の秘密、科学も魔法も歯が立たなかった魔法鉱石を加工したのはドワーフ族の執念、そして人は後追いながらやっと空に飛行機械を浮かべ、ドラゴンを追い払う大戦力を生み出し、大ブーイングを受けた。
飛行機械の何が駄目か?
資源馬鹿食いである。
こんな巨体で大喰らいなもの作っては生きていける土地がすぐ死ぬ環境汚染を招くと言われてしまった。発明した瞬間、人類の生き残り全員から人族はバッシングされた。
が、戦争効果は高かった。
多種族の伝統戦士団より、エルフの魔法隊より魔物をよく撃退した。
まず速度が早いので、救援すべき戦場に急行できる。
巨体なので頑強で重い装甲と高威力の大砲と弾を沢山積める。
そして純粋に技術の塊なので工場と資源があれば量産できる。
こうなればチキンレースである。人類が資源を使い果たして滅びるかその前に魔物から新しい土地を飛行機械で切り取るかのチキンレースである。戦争にあっては人族は連戦連勝、しかし土地が枯渇死する。故に人族は残りの多民族から凄い嫌われた。エルフでも獣人族でもその他の種族でも禁じ手くらいあるのだ。勝って滅びるのは嫌だから使わないだけ、なのに今まで弱いから庇ってやっていた人族は魔物が怖くなってすぐそう言う事やる。
そんなわけで世界大戦勃発、人族は族滅寸前までいった。
クワンガラは関わり拒否、辺境にて魔物侵略の迎撃しかしない。
百年続いた戦争で、飛行機械は一応製造許可が出て、人族も全滅を免れたが、多くの難民を出した。そして世界大戦を招いて負けた人族は差別を超えて真実駄目な種族として追い払われ続け、クワンガラの居る土地までやってきた。クワンガラはその時斧使いとして己を鍛える一方彗星を待っていた。妖精の話では凄い奇麗らしい、百年修業したクワンガラもドキドキして待っていたら、汚くて弱くて臭くて卑屈な集団がやってきた。
どっかで見た事あるなと思ったら、母親と同じ種族である。
悩んだので、暗命派の経典を開くと殺せと書いてあった。
出来なきゃ助けて守れ、殺す正義が無きゃ守って死ねと書かれてる。
どうせ戦士は飯を作れない畑も維持できない、建物作れない、学校も無理。
病院なんてもっと無理でほかの宗派だってかつかつ……
罪深い民族見たら見たら殺すか守れとしか暗命派は書かない。
救うなとも書かれてる。罪に見合う地獄を現実で味わせろとも書かれてる。
飢え死にする覚悟で抱えるか、飢え死に怖がって殺せと書いてある。
イラっと来たクワンガラは、経典を地面に叩きつけた。
相も変わらず救いがない理屈しか言わなくてむかつく。
が、これも親の遺品、宝箱にぶち込み忘れることにした。
そして妖精魔法で大岩つくり飛び乗って人族に叫ぶ。
「よく来たクズどもっ!我が名はクワンガラっ!糞ボケ貧乏暴力うんこ童貞チンコなし親父が暗命派大僧正ゾックの息子っ!大妖魔の俺様人をバリバリ食べちゃう怖い奴!子分ども!スポットライトだっ!」
「アイサー親分!」
子分の光妖精は大山に光を当てる。最強と名高い紫色魔法鉱石含有率七十パーセントの大きな山だった。クワンガラは鋼の大斧構え天高く跳躍一刀両断ぶった切る。大爆発を殺傷力なしに妖精たちが演出。
「見たかボケ難民どもっ!俺様超強いっ!怖かったら南に行け一!でっかい湖と普通の魚と砂漠適応の魔法麦があるっ!祠に祈ると信者居なくて困ってる神様がどろんと出てきて説教するからっ!最後まで聞いて寝ろっ!そしたらあら不思議!改宗しなくても家畜が何か居るっ!子分ども!やっておしまいっ!」
「任せろ親分!」
現代にあっても高等魔法の転移魔法を一発成功難民を十二万人同時転移させた。
が、難民をここまで守り導いた女がクワンガラを襲う。
転移魔法の発動を見切り躱し拳で戦いを挑んだ。
「仲間をどこにやったっ!しかもお前っ!大僧正様を馬鹿にするとは許さんぞっ!ゾック様に血縁は居ないっ!お前みたいな強いだけの魔物混ざりが魔物と戦ったゾック様の息子なわけがないっ!307連隊属201大隊分遣小隊分派特務分隊残存兵が!私がっ!ここにいるっ!暗命派は滅んでいないっ!魔物め退治してくれるっ!」
女は強かった。手練れである。
しかも、妖精も見えないくせに、クワンガラより心が強くて修行の弊害で痩せていた。
殺すのは容易い、痩せすぎて本領発揮できていない、戦闘能力ではこちらの圧勝、が、その動き、親父そっくり、良く暗命派を学んだ様である。だが、付き合いきれないのでクワンガラは逃げた。一年後追いつかれた。仲間十二万人が生きていて再会した女はクワンガラの助けに気づいて追いかけてきた。
クワンガラはその時お昼寝していた。
彗星は見逃したが、子分は良い情報をキャッチしてくれた。今度は最高位の神龍が魔法で隠れお忍びで部下ドラゴン四万連れて現れる。人にも世界にも魔物にも隠れ空を飛ぶと言う。その姿、修行した己の眼で激写してくれる。ゾックはこういう遊びを開発してはニヤニヤしていたものであり孤児に良く、へたくそで大げさな真実を教え一緒に笑っていた。息子の自分ももちろん混ざって遊んだものである。今は一人遊びとなったが、絵に残して一人楽しむのだ。神龍のくせに人如きにお忍びを見抜かれていると馬鹿にするのだ。そのために絵筆を買い終えている。位置情報を教えてくれた子分の妖精の頭を撫でた後、夜に備えてお昼寝していた。クワンガラはその正体巨人である。ゾックの修行で人型になっても十メートルはある。
鼻提灯なんぞを作りすやすや寝ていると女の影が差す。
寝ながら大斧担ぎのクワンガラは夢で少し困った。
三年前に出された難題を夢でも困った。
第三魔物大陸の皇女が決闘を挑むのだ。
奴が勝つと玉座がクワンガラに押し付けられる。
こちらが勝つと、四つの魔物大陸がクワンガラのものになる。
どっちもいらない。
断るには所帯を持ち子孫を残す様に皇帝から言われたが、どうしたものか夢の中まで悩んでいた。そしてクワンガラの夢が親父の愚痴に変わる。ゾックは邪神の自殺は何となく想像していた。まあ死にたいなら殺してやるかと思ったらまさかゾックは自分が兵器とは思わずびっくらこいて怖くなって逃げた。息子のクワンガラはそう聞いている。しかし、邪神は神になる前にから狂っているからどこまでもゾックを追いかける
壊れてるやつ、狂ってるやつ、生きていけないやつ、飢えてるやつ、そういうので敵意と害意がなくて、生きて居たい奴は暗命派は絶対保護する。魔物の場合魔物大陸まで送り届ける。だが、魔物側にばれると面倒だから頑張って隠してたけど魔物側にばれた。暗命派は人類の守護者。でも人類大嫌いとばれた。魔物側から人類裏切りの勧誘が始まってしまう。
しかも、今度は邪神である。
どうせこいつ頭でっかちだからぶん殴って拷問すれば死にたくないと叫ぶから一回虐めとけ、で、元の家に邪神を放り込め、大僧正イワエオはゾックに言った。ゾックは速攻で邪神を虐めた。大僧正の読みは、当たってはいたが邪神はいよいよ狂ってゾックが名前も知らない古代の傭兵に見えたらしく、なんか一緒に暮らそうとし始めた。
大僧正はゾックに凄い怒られた。
大僧正はごめんと言った。
邪神は凄い子供欲しがってた。
ゾックは自分のチンコ自分でちぎったから無理と言った。
邪神はもう泣きだして神パワーを発揮、周辺の物理法則さえ変わっていく。
手に負えないから大僧正イワエオは封印と転移と記憶消去を使って魔界に捨ててきた。邪神は後で封印を破り記憶を取り戻し正気に戻ったが、暗命派に執着し始めた。
ゾックの頭に野生の勘が電流のように走った。すげえ変な顔してた。
いやな予感がしたので初代の言いつけ通りに、暗命派は魂も残さず死ぬ事にした。
初代は言った。
「善でも悪でも狂っていても神を助けるの一回だけ、執着してくるから、そん時は魂諸共死なないと酷い目にあう。逃げるのに苦労した。生命とは別の物にされちゃうのに精神を生命のままにされて凄い苦しむ」
初代に言わせると神に救いとして生命が発見された場合凄い面倒臭くなるのだ。
孤児も妖精も寺の魔法麦も大僧正の口伝にうなずいた。
で、みんなで魂が死んで肉体が消える儀式の準備をした。
だけど、妖精と孤児だけはぶん殴られて追い払われた。ちょーー痛かった。
殴りで死にかけたやつも出たがなぜか寺に帰れない距離まで歩けてから傷が治った。いろんな国から仲間は保護されたけどクワンガラは急いで逃げた。斧があれば生きていけると教えてもらえたのだから他所の国など興味はない。
好きな土地を好きに歩いた。その全てをクワンガラは今でも覚えている。
要するに暗命派は疲れたやる気のない無責任なおっさん集団であると今でも思う。
夕暮れに近づく中、ふと明日女の影が闇と成る。闇が受肉。
夢を見るクワンガラの頭を撫でて落涙する女が現れる。
クワンガラを起こさず女は闇に戻りどこかに消えた。
それから黄昏の終わり闇が間近となった時大声が聞こえてクワンガラは飛び起きる。
「卑怯者出ててこいっ!私ともう一度勝負だっ!なぜ貴様が暗命派の失われた経典を持つっ!魔物めっ!今度こそ討ち果たしてくれるっ!」
そうは叫ぶが、どうにも真実に気付いているようで、落涙している。
僧侶が燃やした経典は失われたほうが良いことが書かれている。
魔法がある世界では神様はそう考えた。
だが、親父の遺品だから神様も見逃した。
経典に暗命派は弱者を助けるが、弱者も世界も大嫌いとしか書かれていない、もちろん強者だって嫌い天才も少数派も多数派も普通の人も嫌い。暗命派の経典には多少学があればすぐわかる悪夢しか書かれていない。
「暗命派なら人のもの盗むな」
「……お前は魔物だ……」
「まあ、そうだけども」
「……これは偽書だよな……」
「真実は学者が知ってる俺は知らん。俺は大斧担ぎのクワンガラ!子分の妖精連れて、楽しく遊んであとは知らんっ!ゾックの必殺技知らんぷりだっ!くくくくのっくっ!ふふふ貴様には破れまい!何故なら、ゾックは死んだからさっ!知るのは息子の特権羨ましいだろっ!」
「……なんなんだお前は?湖では古い神が本当に居るし……なんなんだっ!」
「俺が知るか子分が囁くだけさ、つまりお前は修業が足らんっ!遊び方からやり直しっ!ご飯の食べ方からやり直しっ!旅の仕方、戦い方からやり直しっ!未熟者めがっ!行くぞ子分ども神龍を激写だっ!」
「待ってっ!」
「……待てと言ったな?ならば子分に成れっ!」
「何だそれは?」
「……じゃあ知らん……」
「糞っ!子分になるっ!」
そこから始まる話は二人の秘密、兵器系合成生命の女には子宮がない。難民守る戦いで部隊壊滅、本国全滅、本隊降伏、金がない、食料がない、当てがない。
片目片腕もなく。
人権もなく、修理工場も無く、腹に空いた穴から機械部品がのぞき兵器の女は何も持っていない。
だが、信念持って生きて居る。
クワンガラはこういう女嫌いではない、親父を思い出す。
神またこう言う機械、嫌いではない。
特に農法と芸術知識と宗教知識を持っているのが高評価だ。
難民を守り抜いた末、この知識で難民を「戦後」へ導く気であったからだ。
古い神は砂漠の泉まで来て機械が「助けて」と言うなら助けてやろうと待っている。
そして、二人は、旅に出る。
なんだかんだ仲良くなって孤児を引き取り我が子と偽り、どこぞの魔物皇女様を落胆させたという。クワンガラの伝説が始まり修行方法が残っていくのはここからだった。
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