第26話 死の舞踏

※今回の話は最初、キズ―視点です。


──────────


 リチュお姉さんが、炎の壁でおおわれてしまった。

 中にはハートと名乗るピエロがいる。

 2人は今、あの中で戦っているだろう。だとすると、リチュお姉さんが圧倒的に不利だ。

 僕達が加勢しないといけない。ならまず、この炎を突破しなきゃ。

 僕の技の中で、あれを突破できそうなのはただ1つ。『最強の勇者ヒーロー』だ。

 僕は深呼吸して、集中する。


「いでよ!! 『最強の勇者ヒーロー』!!」


 僕がそう言って魔法を放つ。しかし、何も出なかった。


「おい!何してんだ?」


 ガキンが、僕にそう聞いてくる。


「ちょっと黙ってて!! 」


 僕がそう言うと、彼は「別に怒らなくてもいいじゃねぇかよ。」と不貞腐れる。

 僕はそんな彼を無視して『最強の勇者ヒーロー』を出そうと何度も試み続けた。


 ──────────


「ホホ♡これで誰にも邪魔されないわね♡踊りましょう♡」


 剣をくるくると回して遊びながら、私を誘うハートさんに、私は質問する。


「どうしても、戦うんですか!?」


 ハートさんは剣を止め、「勿論よ♡」と言う。

 さらに彼女は続ける。


「それにしてもアンタ、彼らを殺したはずの可愛い子なのに、どうして踊りの誘いを断るのかしら?♡」


 そして、彼女は私をよく見て、合点が行ったような反応をする。


「あら?♡よく見たらアンタ、得物を持ってないじゃない♡なるほどね♡踊るための道具がないからアタシと戦えなかったのね♡

 なら♡これを貸すわ♡」


 そう言って、彼女は私の前に持っている剣を投げる。

 私はその剣を拾って聞く。


「でも、それでは貴方の武器が無くなるのでは?」


「気にしなくていいわ♡まだまだ武器はあるもの♡」


 そう言って彼女は再び口の中から剣を取り出す。

 剣の大きさ、彼女の頭から股下ぐらいあるんだけど、どうしまってるのかな。


「さぁ♡それじゃあ踊りましょう♡」


 彼女がものすごい勢いで私を斬りつけようとする。

 私はそれを剣を使って防ぐ。

 彼女はそれ以降も次々と、早い斬撃を繰り出し続ける。

 私もそれを防ぎ続ける。


「ガードは固いけど、それだけじゃダンスにならないわよ♡はやくアタシを倒さないと、アンタ死ぬわよ♡」


 彼女は私から距離を取り言う。


「アンタとアタシを囲うこの円状の炎の壁は、時間が経つにつれてその幅を狭めていくの♡アタシが満足すればこの炎は消してあげるけど、そのまま防御してばっかりなら、アタシ達は灰になるわよ♡」


 ハートさんが剣の刃を撫でたり触れたりして遊びながら言う。


「最も、アタシは悪魔だから、灰になったぐらいじゃ死なないけどね♡

 いや、死合すらも楽しむようになったアタシが、死ぬ時は来なかったわね♡」


 そんな話をしている間も、炎の壁はその幅を狭めてくる。


「くっ!どうすれば…。」


 私の言葉に、彼女が答える。


「言ったでしょう♡灰になりたくないなら、アタシと踊りなさい♡」


 ハートさんが剣を構え、こちらに走ってくる。

 その構えから、右斜め上から彼女の頭を刺せば、致命傷を与えることが出来ると今までの経験から分かる。

 仕方がないの?生き残るには、誰かを殺さないといけないの?

 私は───


「いよっしゃ!開いた!!」


 ───どうしようかと、考えていると、炎の壁が風によってかき消された。

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