第25話 2人だけの舞踏

 私達は、ロボットに導かれ、『クラウンタウン』を出る。

 外はもう、完全に真っ暗になっており、ロボットの出している光と、キズ―さんの『火炎付与バーナー』で火をつけた、ガキンさんの剣のみが私達の視界を照らす。

 しばらく森の中を進んでいると、遠くから鳥の鳴き声が聞こえた。

 私が声のする上空を見てみると、そこにはナイトバードが一匹。こちらに近づいていた。

 緊張が走るような鳴き声を出しながら、私の頭に着地するナイトバード、ヘッドさん。

 ヘッドさんは、私の頭をゲシゲシと蹴り始める。どうやら怒っている様子だ。そんなことを考えていると、チュンチュさんとウィングさんもこちらに飛んできた。

 私は彼らを『ヒューマ』の村の孤児院に置いて、森に来ていたのだ。

 いつも森の探索は昼間に行っているし、なにより危ないのでそうしていた。

 しかし、私達の帰りがあまりにも遅かったからか、彼らは私達を探しに来ていたらしい。

 嬉しいのか歌を歌いだすチュンチュさん。私達の怪我を見つけては、風の魔法で治療をするウィングさん。私の頭の上で、ひたすら私を蹴り続けるヘッドさん。

 皆の行動すべてが、私達をどれだけ心配していたかを、私達に伝える。

 私達が、ナイトバードと遊びながら、ロボットを追いかけていると、突然目の前のロボットが破壊されてしまった。


「なんだ!?」


 ガキンさんが驚いていると、ロボットの爆発で出た煙に1つの人影が映った。


「あらあらぁ?♡これはスペードのロボットね♡つまり、『クラウンタウン』から生き残った可愛い子がいるって訳ね♡」


 人影が煙の中から出て、その正体を現した。

 赤い髪のピエロ。真っ赤な服とスカートを身に着けた、黒ニーソを履いたピエロがいた。


「あら?♡アンタ達がその可愛い子かしら?♡」


 自分の頬に手を置き、うっとりしているピエロ。その表情とは裏腹に、なにか恐ろしいオーラを放つ彼女に、ガキンさんが剣を構え、叫ぶ。


「赤い髪のピエロ!まさか、お前がスペードとか言う野郎が言ってたあいつらのリーダーピエロか!?」


「あらぁ?♡アタシがリーダー?♡あの3人の中じゃあ、スペードがリーダーだと思っていたのだけれど、アタシによく似たリーダーがいたのね♡」


 彼女は、首をかしげてそう言う。

 その反応に、キズ―さんが「知らないの?」と返す。

 それに、ピエロは答える。


「そうね♡アタシは後から仲間になったのよ♡人間から悪魔になったなんておもしろいじゃない?♡だから、仲間にしてもらったのよね♡まぁ、そんなことより♡」


 ピエロが、自分の口に手を突っ込み、そこから刀を1本取り出し、私に向ける。


「アタシの名はハート♡そこの、1番大きなアンタ♡アタシと踊らない?♡」


「踊る?」


 私がそう質問すると彼女は答える。


「互いに死の舞踏を踊るの♡つまりは、アタシと戦わない?♡ってことよ♡」


 私は彼女の言葉に「戦いません。私、争いは嫌いなんです。」と答える。


「あら♡断られるなんて、残念だわ♡けれど、逃がさないわよ!♡」


 彼女は突然飛び上がると、私の隣の2人に向かって、口から火を吹く。

 2人がそれを、下がって逃げるとその隙に、彼女は空中で回転しながら火を吹く。


「『破霊怒パレード』♡」


 気が付くと、私の周りは火で囲まれ、その中には私と彼女しかいなかった。


「ホホ♡これで、1番可愛く見えるアンタとの舞踏を邪魔されない♡さて、踊り合いましょう♡」

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