第6話 2人を襲う悪夢の日々

「『村の皆を助けて』って、何があったんだ?」


 リードさんは片膝をつき、ガキンさんとキズーさんの話を聞く。

 彼らは泣きながら、話をしてくれた。


「リチュ姉が居なくなってから、毎日のように村の子供が消えてくんだ!」


 その言葉にリズさんが驚く。


「毎日!? 子供失踪については、今まで同じ村が連続する事は無かったはずだが…」


 リードさんは、自分の顎に手を当てる。


「最近、子供失踪を意識しすぎて、場所を詳しく調べてなかったからな… 気付けずにすまなかった。

 だが、『ヒューマ』の村の人には、子供達が森に出ないように言ってあるはずだが…」


 リードさんの疑問に、キズーさんが答える。


「皆、親が少し目を離した隙に消えていくらしいんです。」


「家に居ても拉致されるのか…」


 ガキンさんが、私に抱きつく。


「もう、どこにいても安全じゃないんだ!! このままじゃ孤児院の奴らも、明日には消えちゃうんじゃないかと思うと、怖くて怖くて…」


 私は、彼を抱き上げ、頭を撫でる。

 今まで、どんなに怖くても決して、『怖い』なんて言わなかった彼がここまで震えているなんて。


 私は、2人が落ち着くまで、2人を抱きしめた。


 ――――――――――


「とりあえず、今やるべき事は2つ。

  『ヒューマ』の村の子供の救出と、スライムの素材買取の中止を王に頼む事だ。」


 リードさんが、手で2を表して言う。

 彼は続ける。


「『ヒューマ』の子供救出は、犯人がまだ分からない以上、犯人探しもしなくてはならない。リズ、お前。この子達とリチュの3人と一緒に犯人探しをしてくれ。

 俺は、王に、スライム素材買取の中止を頼みに『ヒューマノン』に戻る。ついでに、タンクを連れて村へ向かう。」


「そういえば、タンクさん今日居ないんですね。」


 キズーさんが、周りを見ながら言う。

 リズさんがその疑問に答える。


「ああ、あいつは… ちょっと失恋のショックで引きこもってんだ。」


「失恋って、好きな人に嫌われたって事ですよね?タンクさん、可哀想…」


「ああ、うん。そうね。タンクが来たら、お前から励ましてやってくれ。」


 私のその言葉に、目を細めるリズさん。

 あれ?私なにか間違ってたのかな?


「はぁ。ま、確かにリチュが来たことを言えば、タンクも元気になるだろうな。」


「あ!なるほど。」


 リードさんの言葉を聞いて、キズーさんが私を見て笑う。


「ん?キズー、お前。なんで笑ってるんだ?」


 皆の言葉の意味が分からないのは、私だけじゃなく、ガキンさんも同じようだった。


 ――――――――――


「ヒーッヒッヒ。大量大量。ほんっと腹ただしいが、クローバーの奴がくそスライムを消してくれた上に、拉致をスライムの所為にしてくれたおかげで、動きやすくなったな。

 さて、次は誰が標的ターゲットになるかな?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る