第6話
診療所には一応手術室もあるが、何と物置きになっていた。
更にガラスの棚には殆ど器具がない。
「此処って診療所じゃないんですか?」
優弦は内田に尋ねた。
「そうです」
「そうですって……これじゃ応急手当ぐらいしか出来ない」
優弦の言葉を聞いて内田は俯いた。
「緊急手術になったらどうするんですか?まずは手術室の荷物を退かして下さい」
「此処で手術をされるおつもりですか?」
内田は仰天している。
「病状によっては」
優弦はきっぱりと言った。
「今まで来られた先生はみんな内科の先生なので、此処で手術をした事はありません」
亜紀がいつの間にか後ろに立っていた。
「心配しなくても誰も先生に期待していませんから」
「どういう意味?」
「みんな、この診療所になんか来ないって事です」
亜紀の言葉を聞いて優弦は意味が分からないように顔を顰めた。
「他にも診療所があるの?」
聞いてなかったけどな……
「本土の病院に8時間掛けて行くんです」
「そんな……!」
「仕方ないでしょう!まともな先生が来ないんだから!」
亜紀は悲痛の叫びを上げた。
優弦は黙って立ち上がると、内田に言った。
「オペ室を片付けますから手伝って下さい」
そして優弦はカッターシャツの袖を捲った。
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