第2話 怠けに見える戦い

「どうして毎朝こうなんだろう。」

ベッドの中で起き上がれない自分を責める日々。それでも、どうにか学校に行かなければと思い、無理やり体を起こして準備を始める。けれど、校門をくぐる頃には頭痛と倦怠感で何も手につかない。クラスメートに「朝から疲れてる顔してるね」と冗談交じりに言われるたび、何も言い返せない自分がいた。


学校では、遅刻の理由を説明するのが苦痛だった。担任の先生に「もう少し規則正しい生活をしなさい」と注意されるたびに、胸が締め付けられる。頑張っているつもりなのに、それが伝わらない。これほど頑張っても、周りからはただの「怠け」に見えるのだろうか。


実は、最初は私自身も「怠けているだけ」と思っていた。朝起きられない自分が嫌でたまらなかった。でも、どうしても改善しない状況に耐えきれず、医師の診察を受けたとき、初めて「起立性調節障害」という診断を受けた。医師は「成長期に自律神経がうまく働かないことで起こる症状」と説明してくれたが、それでもどこか現実感がなかった。こんなに自分を苦しめているのに、外からは見えないなんて。


症状を説明するパンフレットを手渡され、読んでいくうちに少しずつ自分を責める気持ちが和らいでいった。「怠けているのではない」「これは病気だ」と知ることが、どれほど救いになったか。けれど、それを周囲にどう伝えればいいのだろう。


一番つらかったのは、家族との会話だ。母は理解しようとしてくれたが、朝が弱い私を毎日叱る父には「病気」という言葉が響かなかった。「ただの気合いが足りないだけじゃないのか?」という言葉に、何も言い返せないまま俯くしかなかった。


誰にも見えない場所で、私たちは戦っている。この症状に名前があることを知ってもなお、その戦いは続く。学校生活、家族との関係、そして何より自分自身との向き合い。起立性調節障害は、単なる「朝がつらい病気」ではなく、日常の中で生きることそのものに挑む病気なのだと、私は実感している。


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