第13話 蠱惑の囁き
前話の最後の部分を少し修正しました。
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「神川隼人です。好きなのはアニメを見ることで、よく週末は丸一日見てたりしてます。大体のアニメの話はできると思うのでアニメ好きの人は、ぜひ話しかけてみたください。今年一年よろしくお願いします」
自己紹介を終えるとまばらな拍手が聞こえてきたので、俺は自分の席に腰を落としてから一息ついた。
未だに自己紹介をするのは緊張するし、後ろの方から視線を感じるせいで生きた心地がしなかった。
始業式も終わり、教室に帰ってきた俺たちは自己紹介をすることになり、今はその真っ最中である。
そして、次の人が立ち上がり、自己紹介を始めた。
「神田橋小鳥です」
(はあ〜〜〜)
案の定、後ろの席は神田橋さんだった。
クラス掲示を見終わって瑞稀と教室へ向かうと、黒板には既に座席表が貼ってあり、それを見ると綺麗に出席番号で1番右の列から順に席が割り振られていた。
右2列が5人で1列、それ以外の4列が6人で1列なので、出席番号11番の俺は教卓から最も近い前から1番目の席かつ、後ろには神田橋さんがいるという、考えうる限り最悪の配置になっていた。
ちなみに、朝は気まずさのあまり声をかけることができず、1番左端の永司の席で永司と瑞稀の3人で話をしていた。
(こんな可愛い子が俺のことを好きだなんて有り得るのかな……)
自己紹介をしている神田橋さんの方を見ながら、そんなことを考えていた。
実物を見ると、自分とは住む世界が違う人間であることがひしひしと伝わってくる。
色白の肌に、輝くような長い金髪。
兵器とすら思えるほどの大きな胸を持った圧倒的な美少女。
接点でいえば、変質者から庇ったことぐらいなのに、そんなことであの神田橋さんが何の取り柄もない俺のことを好きになったとは思えない。
あの時だって、俺が助けたいと思ったから、助けただけで、もしかしたら、勇気が出ずに助けに行かなかった可能性すらあったのだ。
それでも、それ以外に俺のことを好きになる理由がないし……
そして、春休みの間に考え抜いた結論が、あれは気の迷いだったというものだ。
(……まあ、気まずいことには変わりないし、
“ごめん。あれは気の迷いだったの……”
とか言われたら、普通に悲しくなるしな……)
このあと、どうやって話しかけるかを考えているうちに、神田橋さんの自己紹介が終わった。
俺の時よりも、大きな拍手が教室中に響き渡り、神田橋さんが席に座ったことで、皆が次の発表者に注目し始める中、
コソッ……
「あとで、屋上に……」
それだけ言うと、神田橋さんは後ろの方に目を向けてしまった。
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