第12話 噂、そして地獄

「……そ、そんな噂どこで聞いたんだ?」


(一体何が起きたら、桑園さんが俺に告白したなんて話になるんだ!?)


 確かにあの発言は、桑園さんが百合そっち系であるというある一種の告白ではあったが、周りの人がそんなこと知るはずないし、最もここでいう告白とはどう考えても男女間の告白のことだ。


 本当だったら飛び上がるほど嬉しいことだが、事実無根の話なので困惑することしかできなかった。


「隼人のクラスメイトの子から聞いたんだよ。隼人って終業式の日に桑園さんに呼び出されたらしいじゃん。で、その時に告白されたんじゃないかな〜ってこと。」


(あの時か!!!)


 桑園さんが俺のことを呼びにきた時、はたから見ればこれから告白されるように見えたかもしれない。


「それで、どうなの?」


 ありのままに話すにしても言いにくいことだし、どっちかっていうと桑園さんに告白されたというよりは、事故で神田橋さんから告白(?)されたしな……


 言い訳を考えようにも、説得力に欠ける。


 だから、ここは噂に乗っかりつつ、誤魔化ごまかすような感じで……


「いや、告白されたってわけじゃないんだけど……あれかな?なんか友達から始めましょう的な感じで……」


「え、あの桑園さんから、友達になってくださいって言われたの!?やるね〜隼人」


 拙い説明で納得してくれてよかった。


 告白されたという事実は否定しつつも、話の大意はそのままにすることによって、どうにかまだマシな内容を思いつくことができた。


 これ以上この話を追及されても困るので、瑞稀みずきのことをかしながら、クラス掲示の紙の前まで移動することにした。


(せめてクラス分けだけはまともであってくれ)


この学校には2年生から3年生に上がる時際にクラス替えがなく、ここで決まったクラスメイトとは実質約2年間も同じクラスになる。


 なので、既に今年の先行きが不安ではあるが、なんとかやっていけるようなクラスになっていることを祈りながら、クラス分けが書かれた紙を見た。



(なんだこの地獄みたいなクラス……)


 それが初めて新しいクラスのメンバーを見た時の俺の感想だった。


「やったね、隼人!同じクラスだよ!」


「そう……だな」


 瑞稀と同じクラスであり、これから毎日ウザ絡みされるのかと思うと頭が痛いが、そんなことよりも……


      ︙

 11番  神川 隼人

 12番  神田橋 小鳥

      ︙

 14番  桑園 舞波

      ︙


 この2人と同じクラスであることの方が大問題だった。


 あの日のこともあり、2人とはただでさえ気まずいのに、桑園さんに至っては噂の件もある。


 出席番号的に席も近いので、遠足の班も同じになるかもしれないし……


(マジで今年は厄年かもしれない)


 新学年初めから災難に見舞われる中、唯一の癒しは永司と同じクラスであるということだけだった。

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