第4話 事後処理

(この後どうしよう……)


 冷静になった俺はこの場の収集をどうつけるかで悩んでいた。


 まず、両手がめちゃくちゃ痛い。


 男のナイフがフルーツナイフぐらいの小さな物だったので、多分傷は浅いと思われるが切られた左の手のひらからは血が溢れ出ている。


 しかも、火事場の馬鹿力を発揮させたせいか知らないが男を殴った筈の右手まで痛かった。


 次に、気絶しているこの男がいつ起きるか全く分からない。


 とりあえず手からナイフを放させ、手が痛いのを我慢しながら身体中を漁り、危険そうな物は全て取り出しておいた。


 最後に、いまだに放心状態の神田橋かんだばしさん。


 目の前で起きたことが理解できずに、男の身体を漁り終わった後も固まっていた。


(とりあえず警察に通報しよう)


 そう考えて神田橋かんだばしさんに声をかけた。


「神田橋さん、ごめんけど警察に通報してもらっていい?」


 声をかけたことでようやく目の焦点があった神田橋さんは俺の姿を上から下まで見た後,血が溢れている左手を見つめながら口を開いた。


「……ごめ…ん……なさい」


 そしてそのまま泣き始めてしまった。


「神田橋さん、それよりも警察に……」


「……本当に……ごめんな……さい」


「あーーもう!!」


 神田橋さんは役に立ちそうにないので、男に意識がないのを確認して、急いで自分で投げ捨てたカバンを取りに行った。


 戻ってきた俺はスマホを探そうとして、カバンを開けて1番上にあったアイスを取り出し、道端に置こうとしたところで思いついた。


「神田橋さん、これあげるから食べといていいよ」


「えっ……」


 泣き止んでほしいという思いで渡したが、どうやら困惑されてしまったらしい。


 (そりゃそうか。普通、知らない男からいきなりアイス渡されたら困惑するか)


 泣き止ませるという目的は達成しつつも、複雑な心境のまま、俺はカバンの中からスマホを取り出し、そのまま警察に通報した。



 その後、男は警察に逮捕され、俺は救急車で病院に送られた。


 後で聞いたことだが、神田橋さんも保護者に連絡が行き、無事に家に帰れたらしい。


 そして、その事件以降、俺は手の怪我を理由に俺には入院1週間が言い渡され、ずっと病院に拘束されていた。


 左手の怪我はきずは残るかもしれないが、安静にしていれば後遺症などはなく完治するらしい。


 そして、痛いと思っていた右手の方はなんと指を骨折していたらしい。

 殴った筈の自分の骨が折れたことは割とショックだった。


 (ようやく明日、退院出来る)


 そんなことを考えながら病院生活最後の1日を過ごした。

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