第39話

 英梨さんは顔を赤くしながらはっと何かを感じたのか横を振り向くとそこにはニヤニヤとしながらこちらを見ている千鶴さんがいた。


「もう千鶴さんいるなら言ってください、わっ私ったらもう」


「いいじゃないの、英梨ちゃんがそこまで敬斗を思ってくれて嬉しいんだから、こういうのは私がいたら言えないでしょう?それに今は私がいるけどあくまで契約とかまでの一時的なものだから、決まった家には三人で暮らすことになるんだからお互い納得いく場所を考えた方がいいわ。それに一度引っ越したらまたすぐに引っ越しするとか出来ないんだから」


「はい、そうですよね。しっかり話し合わないといけないですよね」


 俺と英梨さんは改めて物件の内容をじっくり見ながら気になった所は千鶴さんに聞きながらどうしようか考えていく。

 そうやって最終的に二人で決まったのは先ほど話していた学校に近い物件だった。


「なんかあった時に家が近いというのは助かりますしね、それに内装とかも私達三人で暮らすのに快適だと感じたのでここにしましょう。一応ゆいにも確認はしますがおそらく嫌とは言わないと思いますよ、姉妹ということもありセンスとか似てる部分が多いですから。それにきっと別の理由で気に入ると思います」


 英梨さんがいう別の理由は気になるが英梨さんは自信ありそうなんでそこは任せるとしよう。


「さて、これで今日の大事なことは決まりましたね。それでは失礼しますね、おやすみなさい」


「おやすみ、明日ゆいちゃんの反応見たら契約の話は進めていくよ」


「ありがとうございます。任せきりにしてすいませんがお願いします」


 英梨さんが部屋に戻ると俺は広げていた書類を片付けてご飯を食べていく。


「早く決まってよかったじゃない、さっそく明日部屋が取られる前に契約しちゃいましょう。私もこの物件はいいと思うわ、なんかあったらすぐに逃げることだって可能だろうしね」


「そうだね、二人の安全が第一だから俺もよかったとおもうよ。……それに英梨さんの言葉は正直驚いたけど嬉しかったし、拓真さんにも言われたんだけど覚悟はあるのかって言われた俺は覚悟はあるって言ったのに」


「でもそれは英梨さんのことを思ってでしょ?」


「確かにそうなんだけど、それも含めて守る覚悟が足りなかったのかなって。二人を守る覚悟があるなら悩まず俺が候補をはっきり出せていたらって」


「いいじゃない、そうやってたくさん悩んで成長しなさい、料理だけのあんたがそうやって必死に悩むのは見ていて嬉しいし、あんたの両親にもいい報告出来るわ」


「見てる方は楽でいいな、こっちは毎日大変なんだから。今日だって英梨さんが……」


「今日の英梨さんがどうしたの?」


「いや、何でもないよ」


(言えるわけないじゃないか、英梨さんの寝巻きが薄くて胸が見えていたなんて)


「まっ言いたくないなら別にいいけど、婚約者とはいえ手を出すのはちゃんと考えなさいよ。ゆいちゃんだっているんだし」


 俺は千鶴さんを見て口をパクパクとなんとも情けない顔をしてしまう。


 「ははは、その顔初めて見たわ。あんたも男なんだってきっと英梨ちゃんも嫌な顔はしないだろうから安心しなさい。もし、二人きりになりたいと思ったら言いなさい、ゆいちゃんを連れて行ってあげるから」


「風呂入ってねるよ、おやすみ」


 俺は逃げるようにその場を去った。そして次の日ゆいちゃんに物件のことを聞くと


「そんな近いの!!ゆいそこにしたい、そうしたら朝はもっとケー兄といれるんでしょ?それにもっと寝れそうだし」


 成る程、英梨さんが言っていたのはこういうことだったのか、そりゃ近くなれば通学時間減るから寝れるよな




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