第32話

「それじゃ敬斗さん私達学校に行ってきますね、色々大変だと思いますがよろしくお願いします」


「ケー兄よろしくお願いします」


「うん、まっ頑張るよ。おっとそうだ英梨さんに渡しておかなきゃいけないね、はいこれ合鍵だよ。もし誰もいなくてもこれで帰ってこれるでしょ」


「あっありがとうございます。でもいいんですか?合鍵なんて!もしあれなら連絡だって取れますから待ってても大丈夫ですけど」


 英梨さんは少し申し訳なさそうな顔をしながらこちらを見つめるが、俺はそんな英梨さんの頭をわざとくしゃくしゃと撫でて


「遠慮する必要はないよ、ほらっあれだ俺達は婚約しんだから今はこの家が二人の帰る家なんだから。家に帰るなら必要でしょ」


「えへへ、そうですね♡婚約したんだしここが私達姉妹の帰る場所ですよね」


「まー三人で暮らすには手狭だから早めに新しい俺達の居場所を探すつもりだからちょっと待ってね」


「分かりました。でも無理だけはしないでくださいね、私は敬斗さんと一緒にいれたら……あぅ、もっもう行きます。さーゆっゆい行くわよ」


「は~い、ケー兄行ってきます。晩御飯楽しみにしてるね。そうだケー兄ちょっとこっち来て」


 ゆいちゃんに言われるがままゆいちゃんのそばに寄るとその小さな体で精一杯腕を広げ抱きついてくる。


「お姉ちゃんじゃないから行ってきますのチュッとかは出来ないけどギューはいいよね?」


「ギューってゆい、そのまだキスなんてしないから」


 姉妹のじゃれ合いを見ていてまるで小動物の争いのように見えてしまいつい笑ってしまう。


「えーケー兄なんで笑うの?私達なんかした?」


「いや、ごめんごめん。朝も思ったんだけどこんな賑やかな朝なんて今まで無かったからつい面白くなって」


「面白くなんてないよ?だって普通のことじゃないの?変なのー」


 ゆいちゃんは俺の言葉に違和感を感じ不思議そうな顔をする。ゆいちゃんにとっては英梨さんとこんな風にじゃれあうのが日常だったから普通なんだろうが俺は一人が長かったから


「いけない、今日はゆいが日直だからもう行かなきゃ。またねケー兄」


「朝から騒がしくてすいません、改めて行ってきますね」というや英梨さんはこちらに近づき


(まだキスは恥ずかしいから待ってくださいね)


 耳元で顔を赤くしながら呟いてきた。朝から反則だろそれは!?キスするよりなんか恥ずかしかったぞ。


 二人が学校に行くのを見送り部屋に戻ろうと振り返るとそこにはニヤニヤした千鶴さんがいて


「いや〜朝から青春ねー、なんかキュンキュン来ちゃったわー」


 悪いことは何もしていないのだが恥ずかしくなり千鶴さんの顔を見れないまま駆け足で横を去っていく。



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