第2話

時は半年ほど遡る、彼女は公園のベンチに座り途方に暮れながら頭を下げていた。空からポツリっポツリと雨が降ってきたが彼女はそこから動こうとしない。さすがに雨に濡れると分かっていて知らぬふりは出来ないし、彼女の着ている制服は俺と同じ高校のやつだと見て分かった。まー俺は定時制だがな。


「おいっそんなとこに座っていたらずぶ濡れになっちまうぞ、どんどん雨足が強くなってるんだ、風邪をひく前に早く帰れ」


「せん…わた……かえ」


声が小さくかすれていることもあって上手く聞き取れなかった。


「悪い、上手く聞き取れなかった。もう1回言ってくれないか?」


「帰るとこなんてありません、私達姉妹にはもう帰るとこなんて無いんです。帰っても親戚の知らないオジサン達に妹と引き離されてしまう話が出てしまっているんです」


 彼女の瞳から大きな大きな雫がこぼれ落ちていく。彼女に一体なにが起きたのかははっきりとは分からないが、俺は彼女からこぼれ落ちる雫を見てどうにかしてあげなきゃと思ってしまった。


「理由は全部分からないが、とにかくこのままここにいて風邪を引いたら大変だろ。ちゃんと話を聞いて助けられることは手を貸してやるから今はいったん俺に付いてこい。幸い俺が住んでいる部屋が近くだから体を冷やすことはないだろ」


 彼女は、力なく無言で俯いていたが俺は彼女の手を取り無理矢理俺の部屋に連れて行く。見た目完全に犯罪の用に見えるが決して俺は犯罪に手を染めるつもりはない、これは人助けなんだ。


 部屋に着くまでに雨が本降りかしてきて、着いた頃にはお互いずぶ濡れになってしまった。もう少し早く連れて来れたらよかったが今さら言っても仕方ない。


「おらっこれで少しでも体を拭いておけ、すぐに風呂沸かしてや……るから」


 彼女にタオルを渡した時にその姿を見ると雨で濡れたせいで制服が透けて体にピッタリと引っ付いてしまい体のラインがよく分かり更に下着も丸分かりになっているのに気付いてしまった。あまり見てしまっては失礼になると思いすぐ目を反らしタオルは無理矢理押し付け俺は風呂を沸かしに行く。



 私はなんでここにいるんだろう?なんか知らない人が私を連れてきたけど、どうでもいいやもう

 私にはなんの力もない、以前から親戚のオジサンは、私達姉妹をいやらしい目で見ていたし、そしてついに母が死んでしまったことをいいことに、母の遺産に手をだし、私達姉妹にきっと手を出すのであろう。


 さすがに妹は10歳と幼く手を出されることはないと思いたいが、私は背は低いものの出るとこは出ていて女として手を出されても仕方ない、それならせめて初めては私の意思で。


 そんなふうに考えていると私を連れてきた人がタオルを渡してくれた。どうやらこれで体を拭けということらしいが渡した瞬間私から目を反らした。どうしてかなと思うとどうやら私の体が雨で濡れたせいで制服が張り付いて下着とか丸見えになってしまっていることに気づいたらしい。今までなら私の体を見ようとしてくる男ばかりだったがこの人は、私を見ないようにしてくれている。不思議な人だな、親戚のオジサンがあれなだけだった為に少しだけ安心してしまった。

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