餌付けしてしまった

ケンタン

第1話

 これは夢だ、だってあの二人はもういるはずないんだ。だってあの二人はあの日……いつものように仕事に行ってくるねと言ってかっこいい笑顔で俺を抱きしめて空港に向ってその飛行機で帰らぬ人となってしまったんだから。


「敬斗いつもごめんね、でもあと少しできっと三人で一緒にいれるからね。そしたらあなたには、私たちの補助からしてもらってパパの跡を継いでもらおうかしら」


「うん、早く俺もパパみたいに料理でたくさんの人を笑顔にさせれるようになりたい。ママ達が帰って来たら新作料理あるから食べてくれよ」


「えー楽しみにしているわ、未来のスーパーシェフさん」それが最後の親子としての会話だった。



 グハッいきなりの衝撃に俺は一気に夢から目を覚ます。


「アハハハ、グハッだってケー兄おもしろーいおもしろーい、ねーお腹空いちゃった。朝ごはん作ってよー、ケー兄のご飯大好き」


「はいはい、もう年頃の女の子なんだからいい加減じゃれてくるのやめてくれよ。昨日下ごしらえは終えてるからササッと作ってくるよ」


「そうですよ、もうゆいったらいつになったらもう少しおしとやかになってくれるのかしら?それとゆいあなたさっきから丸見えよ、敬斗さんは優しいから目をそらしてくれてるけどいいのかしら?」


 俺が目を覚ましてすぐ気づいたが、言ったら不味いなと思ったことを遠慮なく言われてしまった。


「えっ丸見えってな……にが?キャッキャ〜ケー兄のエッチこっち見ちゃだっダメ〜」


 はーだから言わんこっちゃない、さっこれで朝ごはんが出来るまでは大人しくしてくれるだろう。


「敬斗さん、お手伝いしますね。私も敬斗さんの作るご飯大好きです。昨日下ごしらえしてくれてましたよね?なにを作るんですか?」


「昨日はスープの下ごしらえをしていたのであとは仕上げに味を整えて、サラダとパンにオムレツなんかどうかな?オムレツは俺がやるからサラダは任せてもいいかな?」


「はい、敬斗さん特製のドレッシングがまだあるのでサラダは任せてください」


 今では簡単にだがサラダ程度なら任せることは出来る。初めて出会った頃は全く出来ないどころか火を使う料理に関わらせたらなぜか炭のような物になってしまいカーボンマスターの異名がついてしまったほどだ。


 全く今では慣れた風景だがあの頃はこんな風になるなんて思いもよらなかった。そんな風に考えていると着替え終わったゆいが再び飛びついてきた。


「ケー兄着替えてきたよ、ほらほら今日もカワカワなゆいちゃんだよ」


「分かった分かった今日もカワイイよ、ほらっ今からオムレツ作るからゆいはパンを焼いて皿を並べておいてくれ」


「は〜い、じゃぁあっちで待ってるね」


さっ今日も朝ごはんから1日を始めよう。




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