第27話:ケチャップの決心。
俺とケチャップが分かれる、別れないって話は決着がつかないまま、数日
まで持ち越した。
そして俺が用事で留守にしてる間に、とうとうケチャップは決心したんだ
ろう・・・。
「ザッハトルテ、お願いがあるんだけど・・・」
「なんでしょう姫様」
「ケイスケのことだけど・・・実は・・・」
「マジで言っておられるのですか?」
「マジだよザッハトルテ」
「そんなことして姫様は後悔しませんか?」
「それしか、今の私がケイスケを喜ばせてあげることはできないもん」
「いいのですね?」
「私がここに残る方がケイスケを不幸にさせること分かってる・・・
だから私はいいの・・・悲しくて辛いけど、もう決めたから」
「そうですか・・・分かりました・・・じゃ〜おっしゃる通りやってみましょう」
そして俺が目覚めたのは病院のベッドの上だった。
最初、意味が分らなかった。
病院にいるのさえ気づかず、ボーッとした目の前には無機質な天井が広がっていた。
「あ、圭介・・・目が覚めた?」
俺は声のした方を見た・・・って言うより、聞き覚えのある声で、それが誰か
すぐ分かった。
「桃香・・・なんでここにいるんだよ?」
「って言うか・・・俺は何してんだ?」
「ここ病院だろ?」
「なんで俺、病院のベッドでなんか寝てるんだよ?」
「ケチャップは?」
「ケチャップ?・・・ケチャップってなに?」
「圭介、落ち着いて・・・起きたばっかで気持ちが混濁してるんだよ
・・・ちゃんと説明するから・・・」
「ってか、なんで君がここにいるんだよ・・・俺をフって出てったじゃんか?」
「何、ワケ分んないこと言ってるの?」
「私が?圭介をフったって?」
「ちょっと頭打っておかしくなってるんじゃないの?・・・私、今でも圭介の
彼女だよ・・・」
「え?・・・うそ・・・俺は?・・・?」
「あのね、圭介は仕事してて、現場の足場から落ちたんだよ」
「それで救急車で運ばれたの・・・」
「頭を打ってて三日間、意識が戻ってこなかったの」
「MRI撮って検査したけど、脳には異常無しって・・・」
「しばらく安静にして、もし目覚めるようなら退院できるでしょうって
お医者さんが・・・」
「そうなのか・・・」
「え?でもおかしくないか?・・・俺が足場から落ちたのは1年も前だぞ・・・」
「なんで今、入院なんかしてるんだよ・・・」
「圭介・・・ほんとに大丈夫?」
その頃、ケチャップとザッハトルテの会話。
「ザッハトルテなんでケイスケを、この時間に戻したの?・・・」
「それはですな、心理ですよ姫様」
「病人ってのは人の同情買いますでしょう?」
「同情も愛情も同じようなものです」
「これで桃香さんの同情を買えばよりふたりの思いが深くなるでしょ?」
「ちゃんと考えてるですよ、私は、伊達に歳は取っておりません・・・」
俺はどうやらザッハトルテによって過去に飛ばされたらしい。
ケチャップたちは俺の病室の前にいて、俺と桃香との会話を聞いていたみたい
だった。
「姫様、ほんとにこれでよかったんですか?」
「せっかく地球に来たのに・・・もう帰るって・・・」
「あのさ・・・ザッハトルテ、あんたはこの地球に未練あるんでしょ?」
「だったら、時々この地球にきてケイスケと桃香さんの行く末を私に報告して
くれない?」
「お・・・それならお任せください・・・なミルフィーユ」
「ミルフィーユは関係ないでしょ」
「あ、この際ミルフィーユの彼女は、この地球で探すことにしましょうかね」
「もっとも我々がスライモだって知ったら敬遠するかもしれませんど・・・」
「そうかもね、ケイスケは変わってたんだよきっと」
「さあ・・・みんな帰りましょ、私たちの星へ」
「ケイスケ・・・今日までありがとうね・・・」
「もう一度元カノちゃんとやり直せるチャンスあげたんだから今度はフられない
ように、うまくやってね」
「桃香さんとお幸せに・・・元気で、ケイスケ・・・さよなら」
三人はもう元にスライモに戻っていた。
そう言い残してケチャップはザッハトルテとミルフィーユを引き連れて自分の
星に帰って行ったみたいだ。
最後はケチャップとお別れのハグもキスもできないままだった。
俺は分かっていた。
きっと時間を戻すことをザッハトルテに支持したのはケチャップだって・・・。
つづく。
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