第16話:地球の意思1
異界の三王と名乗るやつらを打ち倒し、俺は一息ついて周囲を見回した。
美羽や凛、桜、そして朝比奈や寧々たちが、安堵の表情でこちらを見つめている。
俺が軽く手を振ると、美羽が真っ先に駆け寄ってきた。
「お兄ちゃん! 本当に、大丈夫だったんだね……」
呆れ半分、驚愕半分といった感じで俺を見ている。
「ああ、俺にこれくらいは朝飯前だよ」
実際、たいしたことなかった。何が三王なのかと言ってやりたい。三下の間違いだろう。
軽く笑って見せると、直後、美羽の瞳には涙が浮かんでいた。そりゃあ、俺はちょっとそこらの攻撃じゃあ死なないにしろ、少しは妹の前だからと無茶をしたかもしれない。だが、守るべきものがある以上、後悔なんて一切していない。
すぐに、地球の意思とやらが展開していた結界が消え、荒れた芝公園は元の公園へと戻っていた。
直後、眩しい光に包まれた。
「なに⁉」
「今度はなんじゃ?」
朝比奈が驚きの声を上げ、寧々も警戒心を露にして影を操って周囲を見渡す。光は次第に渦を巻き始め……
「美羽っ⁉ 桜、凛!」
その中心へと美羽、桜、凛の三人は飲み込まれ、俺は叫ぶ暇すらなかった。
「なんだ、これ⁉」
美羽たちが消えたことで、焦った俺が追いかけようと光に手を伸ばすが、透明な結界のようなものに阻まれた。結界のようなものからは、美羽たち三人以外は通さないという意思を感じた気がした。
ようやく、美羽たちがナイトメアズと戦わなくて済むと思った直後にこれだ。
俺のイライラは余計に募っていく。
「そ、蒼汰。少しは落ち着け」
「焦る気持ちは分かります。でも落ち着いた方が――」
寧々と朝比奈が俺を冷静にさせようと声をかけるが、それどころではない。
「黙れ」
その言葉に二人はビクッと肩を震わせる。
俺の家族を、友人を勝手に連れ去って何する気だ? ふざけるなよ。
そして光の渦は徐々に小さくなっていき――俺は両腕を渦へと突き刺した。指先が小さくなっていく渦に突き刺さっており、俺は力ずくで押し広げていく。力ずくのせいなのか、バキバキと空間が割れるような音が鳴り響く。
渦を力ずくで押し広げる俺の頭の中には、一つの考えしかなかった――取り戻す。それだけだ。
指先が空間を抉り、渦の輪郭が裂け始める。やがて、渦は嫌がるように蠢きながらも俺の力に抗えず、どんどん大きくなっていった。
「先輩、危ないですよ!」
朝比奈の叫びが聞こえたが、気にする余裕はない。
「危ないだと? ふざけるな! 家族を、友達をさらわれて、落ち着けって方がおかしいだろうが!」
俺の怒声が響く中、さらに力を込めた。渦が大きく裂けるごとに、周囲の空間が不安定になっていく。寧々が後ずさりながらも懸命に声をかけてきた。
「蒼汰! それ以上やると、何が起こるか分からないのじゃ!」
「関係ない。俺を止めたけりゃ、お前が止めてみろ!」
その言葉に、寧々も朝比奈も一瞬言葉を失ったようだ。
二人に俺を止める力はない。実力でも俺が勝っている以上、何もできやしない。
俺はさらに空間を捻じ曲げていく。
「あまり俺をナメるんじゃねぇ!」
光の渦は完全に裂け、向こう側の光景が見えた。
「俺は行く。お前たちはここで待って、霧島さんに連絡してくれ」
多少乱暴な口調になったのは、イライラしているせいだ。
許してほしい。
「わ、わかったのじゃ」
「先輩、気をつけてくださいね」
二人の言葉を背に、俺は空間へと飛び込んだ。
飛び込んだ瞬間、目の前には異様な光景が広がっていた。巨大な樹木が天を突くようにそびえ立ち、頂上が見えない。周囲には巨大な樹木以外は一切なく、草原と青空が広がった、一つの世界がそこにはあった。
突如、横から眩しい閃光が飛んできた。
「なっ!」
瞬時に反応し、俺は腕を振るって弾く。それなりの威力だったが、俺には通用しない。閃光が消えた先では大きな音が響き、周囲の大地が抉られていた。
「誰だ……?」
警戒を強めて周囲を見渡していると、光が集まり異様な存在が現れた。一人の女性――黄金の長髪を靡かせ、蒼穹のような碧い瞳。あまりにも整った容姿を持つ美女が、ゆっくりとこちらに歩み寄ってきた。
「ここに入り込んだだけでも驚きですが、まさか、不意を突いた私の攻撃を防ぐとは……」
驚いた表情をする彼女を俺は問い質す。
「何者だ? 俺はイライラしているんだ。正直に答えないなら、殺すぞ?」
「――ッ⁉」
美女が警戒するようにジッと俺を見据え、口を開いた。
「……危険。あなたはあまりにも危険な存在のようです」
「何言ってんだ。こちとら善良な一般人だ。人の妹を勝手に誘拐してるんじゃねぇよ」
「……妹?」
その瞬間、俺はイライラのあまり美女へと一瞬で迫り、その首を掴み上げる。
「がっ……い、いつの、間に……」
俺の動きを一切捉えることが出来なかったのか、驚きの表情を浮かべている。
「正直に答えろ。俺の妹をどこにやった? じゃないと、あの木を消し飛ばすぞ? お前と同じ力を感じるんだ。どうせアレがないとダメなんだろう?」
「なッ⁉ どうしてそれを⁉」
「勘はいいんだ。で、答えろよ。俺にあの木を消し飛ばすことが出来ないとでも?」
本気を出せば、あの巨大樹は一撃で消し飛ばせる自身が折れにはある。
首を絞める力を強めると、彼女は苦悶の表情を浮かべる。そこに、不意に聞き慣れた声が耳に飛び込んできた。
「お兄ちゃん⁉」
「――美羽か⁉」
声の方向を振り返ると、草原の向こうに美羽の姿が見えた。その隣には桜と凛もいる。
三人とも、俺を見て驚いた表情をしている。
「みんな無事でよかった」
無事だったことに、俺は美女の首を絞めたまま、ほっと胸を撫で下ろすのだった。
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【あとがき&作者からのお願い】
お読みいただきありがとうございます。
最後に、ここまで
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