第10話:妹を勧誘する
家に帰った俺は、美羽の部屋の前にやってきた。
ノックをすると返事が返ってきたのでドアを開けて中に入る。
「どうしたの、お兄ちゃん?」
「少し話がしたくてな」
コテンと可愛らしく首を傾げる美羽は、俺が何の話をするか知らない。
美羽に座ってと言われるので、対面のテーブルに腰を下ろす。
「それで、話しって?」
「できれば凛ちゃんと桜ちゃんも一緒の方が良かったけど」
「……二人も一緒? ってことは、例のこと?」
「ああ、俺のバイト先のことも含めて話さないといけない。集まれる日はあるか?」
すると美羽が「ちょっと待ってて」と言ってスマホを取り出して電話し出した。
どうやら二人と電話しているようだ。
「うん。来週の土曜日ね。……お兄ちゃん、どう?」
「俺はいつでも。来週の土曜日か。ちょうど父さんと母さんが旅行に行くって言っていたな。ちょうどいいか」
「じゃあ土曜日にするね」
美羽は電話で土曜日に集まるように伝えていた。電話を切り、俺を見る。
「それで、バイト先って?」
「それは集まってから話すよ。守秘義務があるからな。一応、日曜日も明けるように言っといてくれ」
「分かったけど、すっごく気になる……」
「まだ秘密だ」
その後、俺は電話で日曜日か、土曜日に行くと伝えておいた。
それから土曜日まで、何事もなく時間が過ぎて行く。妖魔が現れたから討伐したり、異能者が暴れていたからシバきに向かったり、ナイトメアが現れて美羽について行ったりと、忙しない日々が続いた。
訳していた土曜日。
午前中に二人は訪ねてきた。
「お兄さん、こんにちは」
「こんにちは」
「桜ちゃんに凛ちゃん、いらっしゃい。上がって」
二人は「おじゃまします」と言って家に上がり、リビングに案内する。
美羽を呼び、その後お茶を人数分用意して座る。
「それで、お兄ちゃん、話しって?」
「ずっと気になってました!」
「私も」
ワクワクした視線が俺へと向けられる。
「二人は異能って知っている?」
俺の問いに、美羽たち三人は、首を傾げる。凛ちゃんが「知らないです」と答えたので、俺は説明する。
「異能。まあ、簡単に言えば特殊能力。風を操ったり、炎を操ったりと様々だ。生まれ持った力ってやつだ」
「……実在するんですか?」
桜ちゃんが聞いて来る。もっともな疑問だろう。二人も頷いているので、俺は説明する。
「実在するよ。俺の後輩がそうだからね」
驚く三人をよそに、俺は説明を続ける。
「しかし、異能者は政府によって管理されている。三人も知っているだろ? この前あった、都内の大規模避難が発令されたことを。そして、街の被害を」
「知っています。ニュースで見て驚きました」
「私も見ました」
「うん」
桜ちゃん、凛ちゃん、美羽が頷く。そこで美羽がハッと思い出したように声を上げた。
「お兄ちゃん。その日から数日家を空けていたでしょ」
「そう。ニュースでは災害による避難となっていたけど、本当は異能者たちによる戦いだ。政府所属の異能者と夜天衆という、元は平安から続く裏組織との戦闘だった」
三人は黙って話を聞いている。
「中には数百年生きる者がいたりとするが、まあそこはいい」
「いや、気になるんだけど……てか、情報が多すぎて頭が……」
「私もです」
「なんとか」
どうやら、凛ちゃんだけはギリギリ情報を処理できているようだ。
「お兄さんのバイト先とどう関係があるんですか?」
桜ちゃんが聞いて来る。
「俺のバイト先が政府の裏組織。通称『防衛省超常災害対策室』というところで働いている」
「……え? 政府? 超常、えっと……」
「超常災害対策室。表向きはただの災害対策室なってる」
「そこで働いてるの?」
「かなり稼げている。まあ、そんな話はいいや。そこでは、政府に所属していない異能者を確保したり、異能者による被害を食い止めたりしている。あとは、妖魔との戦いだ」
「妖魔?」
俺は頷いて説明する。
「まあ、妖怪だな。ナイトメアみたいに、力がないと視えなかったりする。まあ、三人は問題ないと思う。ランクもあったりするけど、そこは省くぞ。そんで、三人を集めたのは、その組織に勧誘するためだ」
桜ちゃんが「私たちが政府の組織に」と呟いていた。
すると凛ちゃんが手を挙げて聞いてきた。
「あおの、どうして私たちが? そもそも、魔法少女だって知らないはずでは」
「そこは俺が連絡していたからだな。まあ、前回の件じゃなく、公園で陶器のナイトメアズと魔法少女が戦っていたのを目撃したからな」
「え……公園って」
二人は分からないようだったが、凛ちゃんは見覚えがあるようだ。場所を聞いて来るので、どこどこの公園だと教える。すると小さな声で「それ、私です……」と恥ずかしそうに俯いた。
「まあ、その件を報告していたわけだ。政府も、ナイトメアズが脅威だと判断して、二人をスカウトしに来たわけだ。大丈夫なことは俺が保証する」
すると「ちょっとだけ時間がほしい」と言われて、離席することに。
三十分ほどすると、呼ばれたので部屋に戻る。
「答えは出たか?」
「うん。一度会ってみようと思う。ちなみに、所属しなかった場合は?」
「まあ、機密保持の誓約書を書くだけだな。記憶を消すこともできるみたいだけど」
「「「怖い……」」」
三人はビビっていた。
それから「行く」ということになり、俺は霧島さんに連絡するのだった。
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