第9話:対策室
カリブディスの件から数日が経った。
対策室に連絡しようかと思い、朝比奈と寧々を連れて放課後に向かった。
「ボスと霧島さんいる?」
職員に聞くと、二人ともいるとのことで室長の部屋へと向かった。
名前を言って入ると、二人が話していた。
「黒崎くん、どうしたんだい?」
「この前話した件で、進展あったから報告です」
「そうか」
風間さんが話すように言うので、俺は淡々とあったことを話す。ただ、三人の素性を隠してだが。
「なるほど。負のエネルギーを糧にするナイトメアズか……」
「黒崎くん、その魔法少女について情報はありますか?」
「あるにはあるけど、話せないな。まあ、敵じゃないから安心してくれ」
「話したくないってことは、知り合いってことですか」
察しが良いな。
「先輩、ナイトメアズ、カリブディスってのは強かったですか?」
「ニチアサの怪物も真っ青なくらには。まあ、一発だったけど」
「魔法少女にしか倒せないんですよね……?」
「まあ、そう言っていたけど」
「さすが、蒼汰じゃのう」
「ですね……何でもありですか」
寧々は相変わらずだが、朝比奈は呆れていた。
結界に関しても話したりして、その三人をこの『防衛省超常災害対策室』に勧誘するかを話し合った。
「俺からは話せないな。秘密保持ってのもあるが、三人は異能者とか妖魔とかの存在は知らないからな」
「なるほどね。でも、そうですね……」
みんながどうするか考えている。
するとボス……風間さんが口を開いた。
「ここはそういった非日常に染まった者たちが集まり、そのような存在から日本を守る組織でもある。退魔師協会とも協力している現状、そのような者たちの拠り所にするのは良いのかもしれない」
「ボス。それはつまり、魔法少女を勧誘してこいと?」
静かに頷いた。
俺は大きく溜息を吐いた。話すか話さないか迷っていたことが、勧誘するならば話すしかないので三人について話すことにした。
「三人ですが、決まるまで誰にも話さないようにお願いします」
「……話した場合は?」
「決まってるじゃないですか。聞いた人がいなくなるまで、暴虐の限りを尽くしますよ。だから、誰にも話さないようにお願いしますね?」
その瞬間、全員が青い顔をしながらも首を縦に振った。
それはもう、首がもげないか心配なほどに。
「三人のうち一人は俺の妹です。他二人はその友人です」
その瞬間、室長室が静寂に包まれる。
「せ、先輩。冗談、じゃないですよね?」
「冗談なら良かったさ。でも、本当だ」
すると寧々が聞いてきた。
「二人は何歳なのじゃ? 妹ということは、蒼汰より若いのだろう?」
「まだ中学生だよ。それもまだ二年生の十四歳。三人ともな」
「若いのう。まだ幼子ではないか」
本当だよ。なのに、こんな裏組織に勧誘とか。
「兄としては、妹に危ないことはさせたくない」
「尤もな意見ですね」
霧島さんが同意する。
「とはいえ、黒崎くん。」
風間さんが重い声で切り出す。
「話を聞いていた限り、ナイトメアズが再び現れる可能性は高い。それも、カリブディスより強力なものが出現するかもしれないんだ。妹さんたちの安全を確保する意味でも、対策室に協力してもらうのは悪い話ではないと思っている」
そう言われると反論しづらい。
確かに、もし次に現れるナイトメアズがカリブディス以上の化け物だったら、美羽たちだけでは危険かもしれない。
兄として、危険なことは止めてほしい。
「でも、彼女たちはまだ中学生ですよ? 兄としてこちらの世界に巻き込むのは……」
「分かっている。しかし、彼女たちは既に戦いの中にいる。否応なく戦いに巻き込まれるくらいなら、こちらで守れる体制を整えたほうがいいと考えている」
風間さんの言葉に、朝比奈と寧々も頷いている。
「……それに、君も言っていただろう?」
「俺が、何を?」
「兄として妹を守るのが役目だ、と」
風間さんがにやりと笑う。しまった、あの発言を利用されるとは。
「なら、妹さんたちがより安全に戦える環境を整えるのが君の役目じゃないか?」
「くっ……」
確かにそうだが、簡単に頷ける話でもない。
「それに、黒崎くん」
霧島さんが静かに口を挟む。
「彼女たちのことを知った以上、対策室としても放っておくわけにはいきません。いざという時、支援する体制を整えさせてください。それが、結果的に彼女たちを守ることにもつながると思います」
そう言われると反論が難しい。彼女たちの戦いを無視するわけにはいかないし、対策室に情報を渡さないのもリスクがある。
「……分かりました」
俺は観念してため息をついた。
「ただし、条件があります」
「ほう、条件?」
「彼女たちに無理強いはしないこと。ナイトメアズ以外の戦いには極力参加させないこと。そして、彼女たちを危険に晒す場合、俺に連絡を入れること。いいですね?」
風間さんと霧島さんは顔を見合わせ、小さく頷いた。
もしも、約束を破った場合は俺が暴れるので、それを理解してか真剣に頷いた。
「約束しよう」
これで、美羽たちが対策室に関わることになるのか。
少し複雑な気持ちを抱えながらも、俺は内心で妹たちを守る覚悟を固めた。
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