第3話 復讐の芽生え -翔太視点-
目を覚ました瞬間、翔太は自分の体に感じた異変に驚きを隠せなかった。何もかもが違っていた。自分の体がまるで別人のように感じられる。これまで病弱だったはずの自分の体が、今では信じられないほど力強く、軽く、自由に動くことができる。
「何だ、これ……」
翔太はゆっくりと目を開け、周囲を見回した。見知らぬ天井、見慣れない壁、そしてその先に広がる、異国の雰囲気が漂う部屋――これまでの記憶とはまったく異なる場所に自分がいることを、頭が追いつかないまま受け入れた。自分の体の異変を感じるうちに、目の前に立つ男に気づいた。
その男は、ローブを纏った壮年の男性で、冷静で威厳に満ちた雰囲気を醸し出していた。まるで何かを見透かしているような目で、翔太を見守っていた。
「ようやく目覚めましたか」
その声は低く、静かでありながら、どこか力強さを感じさせた。
翔太は男の言葉を聞いて、自分の体を動かすことを試みた。初めて立ち上がったとき、彼はその自由さに驚いた。自分の体が、これほど軽く、力強く感じられることに驚きながらも、どこか不安を覚えた。自分は確かにあの病床で命を落としたはずではないか?
「ここは一体……?」
翔太が口を開いたその瞬間、男は一歩前に踏み出し、優雅に微笑んだ。
「ここは、エルヴェンテリア王国。あなたは、この国に召喚されたのです。」
「召喚?」
翔太は言葉を失った。自分がどこにいるのか、そして何が起きたのかを理解しようと必死だった。しかし、男の言葉には不思議な確信があった。
「あなたは『選ばれし者』です。魔法の力を持ち、我々の世界において大いなる力を発揮する存在。王国に忠誠を誓い、この力を存分に使いなさい。さすれば、あなたの望むものは何でも手に入る。」
男の言葉には重みがあり、その響きが翔太の心に何かを引き寄せるような感覚を与えた。彼は自分の体を感じながら、その言葉を反芻する。
「選ばれし者?」
翔太は何度もその言葉を心の中で繰り返した。選ばれるとはどういうことだろう? それは翔太にとって、予想だにしなかった現実だった。だが、現実としてその状況を受け入れざるを得なかった。
そのとき、男が少しだけ静かに続けた。
「この国には、癒しの魔法が存在します。しかし、それを使いこなせる者は限られています。あなたにはその力が備わっている。ただし、それをどう使うかはあなた次第です。」
「癒しの魔法?」翔太はその言葉に戸惑いを隠せなかった。癒しの魔法は、確かにこの世界にあるというが、それを使うことで何が変わるのだろう。
翔太の心の中には、確かに魔力が湧き上がってきていた。それは、以前の自分には考えられなかったほど強大で、力強いものだった。体中を駆け巡るその感覚は、翔太に新たな希望を与えると同時に、何かの復讐を誓うような暗い衝動を呼び起こしていた。
その直後、男が一歩下がり、静かに言った。
「さあ、これからあなたの力を試す時が来ました。あなたがその力を使うことで、あなたの望みが叶うのです。」
翔太はその言葉に応じるように、少しの間黙っていたが、すぐにその言葉を心の中で噛み締めた。
「俺の望み?」
彼の心の中には、あの時から今までずっと抱き続けてきた強い思いがあった。それは、篠宮颯太への深い憎しみと、救われなかった自分に対する怒り。あの時、翔太が命を失いかけていた時、颯太が「必ず治す」と約束したのに、結局その約束を果たさなかったこと。それが、彼の復讐心を育んでいった。
「俺は、無力だった。でも今は違う。今なら、あの男に何ができるのか、思い知らせてやる」
翔太はその時、心の中で誓いを立てた。颯太に対する復讐――それが今の自分にとって唯一の目的であり、力だった。
その後、翔太は王国の魔法訓練場に連れて行かれた。最初は訓練に慣れることができなかったが、次第にその力を使いこなす術を学んでいった。彼の魔力の源泉は、雷霆の力。これまで彼が夢見たこともなかったほどの強力な魔法を使いこなすことができるようになり、その力の広がりと可能性に翔太は心から興奮を覚えた。
ある日、訓練中に彼の力を目の当たりにした王国の貴族たちが、驚愕の表情で彼を見守っていた。翔太はその視線を感じながらも、心の中で確信を持った。
「この力があれば、俺はもう無力じゃない」
翔太は力強く思った。自分にはもう、何も怖いものはない。すべてを手に入れ、あの時の無力さを完全に払拭することができるのだと。
そして、彼の心の中で、かつて自分を助けることができなかった「先生」の姿が浮かんだ。
「篠宮颯太――あの男には、今度こそ俺が何をできるのか見せてやる」
翔太はその後、王国の魔法師団に加わることが決まった。彼の力は王国の中でも高く評価され、彼の地位と力は日々高まっていった。翔太は、王国で自分が果たすべき役割を理解し、その力を持ってすべてを手に入れる決意を固めていった。そして、復讐の念を胸に、彼は新たな世界で自分を再生させるための戦いを始めたのだった。
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ここまでお読みいただき、ありがとうございます。もしこの作品を楽しんでいただけたなら、ぜひ評価とコメントをいただけると嬉しいです。今後もさらに面白い物語をお届けできるよう努力してまいりますので、引き続き応援いただければと思います。よろしくお願いいたします。
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