第11話
有羽は学校から真っ直ぐに帰ると、まずは宿題を済ませた。そして小説の続きを書き始めた。
有羽には小さな時からの夢があった。
小説家になる事である。
その時だけは耳の事も忘れてしまう。
主人公と仲間達が繰り広げる世界を書き上げて行く。
それが有羽が最も幸せな時だった。
母が部屋に入って来ても、夢中になっている為に分からない。
肩をトントンと叩かれて漸く気付いた。
"ご飯よ"
"もうそんな時間?ありがとう。直ぐに行くから"
父と母、そして大学2年の兄がいる。
兄は東京の大学に行っている。
"友達は出来たの?"
家族の会話は手話である。
両親、兄は健常者で、有羽だけが耳が聞こえない。
"うん。出来た。その子ね。手話同好会を作ったの。手話が上手な男子もいるよ」
"そう。友達が出来たなら良かった。ずっと聾学校に行ってたあんたが普通学校で付いていけるかって"
"大丈夫よ。お母さんは心配症なんだから"
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