第9話

「ねえ、手話出来るの?」

クラスメイトの1人、加藤咲絵が訊いて来た。

"出来るよ"

有羽は電子メモに書いた。

「話できるじゃん!聞こえないのにどうして私の言う事が分かったの?」

"唇が読めるの。でも早口だと無理だからゆっくり話して"

「うん、分かった」

「咲絵ー!その子、耳が聞こえないんだよ」

他のクラスメイトが馬鹿にしたような目で有羽を見ながら言った。

まるでオウムである。

「だから?」

そう言ったのは福田将希である。

「だからって耳聞こえないなんてなんか変じゃん」

「お前の方が変なんだよ!そう言うのを偏見って言うんだ」

将希はその女子生徒を睨み付けた。

"俺は福田将希。よろしく"

将希は堂々と手話をした。

有羽は思わず目を見開いている。

"あなたも耳が聞こえないの?"

有羽は手話で話し掛けた。

"いや、俺の親友が耳が聞こえないんだ"

「凄い!秘密の言葉みたい!ねえ、私にも教えてよ」

咲絵が言った。

「同好会立ち上げよう!」

"同好会?"

有羽は電子メモに書いた。

「福田君が部長ね!」

「俺、無理。陸上部あるし」

「昼休みでいいから!」

「昼休みならいいよ」

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