第6話

日曜日は朝からずっと歌いっぱなしだ。

何人か足を止めて聴いてくれるが、殆どの人は通り過ぎて行く。

その中で菜奈の姿があった。

「お疲れ様です」

菜奈は笑顔で熱いコーヒーを2人に渡した。

「ありがとう。聴きに来てくれて」

「勇気が出るんです。2人の歌を聴いている

と」

「ラジオのパーソナリティやってるんだよね」

不意に臨が言った。

「あ、はい…… 」

途端に菜奈の顔色が曇る。

「あ、もしかして秘密だった?」

臨と悠真が顔を見合わせた。

「あんまり…… 」

「そう。初めて聴いたけど楽しかったよ」

「本当は何も知らないんです。彼処で言っている事はみんな映画かドラマの受け売りで…… 」

菜奈は恥ずかしくなって俯いた。

「そう。でもみんなそんなものじゃない?テレビとか映画を見て自分は遅れてる……とか言うんだから」

悠真がそう言って菜奈を見た。

「俺は楽しいと思ったよ」

悠真はそう言って笑顔を見せた。


胸がドキンと鳴った。

悠真の言葉の一つ一つが胸の奥にまで染み込んで来る。

「ありがとうございます」

菜奈は柔らかな笑顔を見せた。

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