第5話

翌日も、歌を聴いてくれる人達の中に菜奈がいた。

また熱いコーヒーを渡してくれる。

「あのさ、樋口さんって何処かで会った事ない?その歌を聴く前にさ…… 」

臨が菜奈をマジマジと見ながら言った。

「いいえ。歌以外には特に…… 」

「そう。じゃあ、俺の気のせいか」

臨は納得出来ないのかまだ首を傾げている。

「ああ、ゴメンね。こいつ変な事言って」

悠真が代わりに謝った。

「いいえ」


土曜日の夜8時だった。

突然、悠真のケータイが鳴った。

「はい」

『あ、悠真!ラジオ点けてみろよ。今すぐ!』

電話の向こうの臨の声が弾んでいる。

「何なんだよ。全く」

『サタデーナイトプラスだよ』

悠真はラジオを点けると、チャンネルを合わせた。

「……長い夜はどうしても大切なあなたの事を考えてしまいます。それでは次の曲は」

「菜奈ちゃんじゃないか?この声って!」

悠真は慌ててケータイを手に取る。

『ほら、今話題の高校生パーソナリティ、樋口菜奈だよ』

「へえー」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る