第12話

「ねえ、拓ちゃん。私の恋人になってくれない?」

拓音は思わず飲んでいるコーヒーを吹き出しそうになった。

「な、何だよ。イキナリ!」

「実はドラマで行き詰まっていて、私の演技じゃ恋してるように見えないって言われてしまったの。だから拓ちゃんと練習したくて」

「俺、こう見えても演劇部だから容赦しない

よ」

「お願いします」


場所は愛梨の部屋に移った。

「私……あなたが好き」

「ダメダメ!もっと相手を見つめて」

「お手本見せてよ。演劇部でしょう?」

拓音はジッと愛梨の目を見つめていた。

「私……あなたが好き」

微かに声が震えている。

瞳も潤んで相手への恋心が伝わって来る。

「凄い!想いが伝わって来た!」

「感心してないでお前の番」

江藤さんよりずっと上手なんだもん。

ドキドキして来たよ。

「私……あなたが好き」

目が潤み、恥ずかし気に声が震える。

「もう一息だな」

こうして愛梨は同じ練習を5回繰り返して漸く出来るようになった。

「ありがとう!本当に恩に着る」

「いや。明日頑張れよ」

拓音はそのまま帰って行った。


拓音は自分の部屋に入ると、頭を抱えてしまった。

愛梨の奴、人の気も知らないで……!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る