第11話
「愛梨ちゃんと?」
「そう。お前が主役で彼女がヒロイン」
江藤啓哉は超人気アイドル歌手である。
アイドルグループmurasakiの一人だ。
歌番組に出演すると、女の子達からの歓声が上がる。
それだけではない。
共演した女の子達からアプローチされたのも一度や二度ではない。
事務所は恋愛禁止であるので表向きは彼女はいない。
だが裏ではシークレットだ。
初めてだった。
メアドや連絡先のメモを渡したのに、彼女から連絡は来なかった。
あり得ない!
江藤啓哉が連絡してくれと言ってるんだぞ!
だが事実だった。
こうして顔合わせの時がやって来た。
「木下真菜役の馬場愛梨です。よろしくお願いします」
愛梨はきちんと挨拶をした。
「江藤さん、お久しぶりです」
「久しぶり。ねえ、どうして連絡くれなかったの?ずっと待ってたんだよ」
「ごめんなさい。お話する事が何もなくて」
啓哉はカチンと来た。
それってまるっきりこの俺に興味がなかったって事か?
「話なら幾らでも出て来るよ。これからは同じドラマに出るわけだし」
啓哉は無理矢理笑顔を作った。
「はい」
絶対、俺に夢中にさせてやる!
落としてみせる!
「カット!ダメダメ愛梨ちゃん。恋心が現れていないよ。もう一度!」
演出家に言われて愛梨は再び演じた。
「ダメダメ!それじゃ気持ちが伝わらない!好きな人を思い浮かべて!」
何度もカットが入って愛梨は一つのシーンをやり直した。
好きな人……
拓ちゃん?
でも拓ちゃんは違う……
好きな人なんていないし……
「眼差しがちがうんだ!それじゃ恋してないよ!」
他の共演者達は騒ついた。
「このシーンは明日撮り直すからそれまでに演技出来るようにして置くように」
廊下に出ると愛梨は泣き出した。
「愛梨ちゃん、泣かないで。俺ならいくらでも付き合うから」
啓哉が甘い言葉を掛ける。
「すみません。迷惑ばかり掛けて。明日はちゃんとやりますから」
愛梨はそのまま控室に戻って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます