第10話

赤の振袖をシャンと着て、髪を結い上げると、愛梨は仕事モードに切り替わる。

5000人の大ホールは満席である。

全て演歌ではない。

主催者側の希望で歌謡曲も歌う。

漸く地元でコンサートを開く事が出来た。

美歩、咲良、芽以の3人も会場に来ていた。

今、愛梨は演歌を熱唱していた。

観客はみんなその歌声に酔いしれている。

歌の間に2分ほどのトークがある。

「本日は本当にありがとうございました。10代の方、手を上げて下さい」

沢山の手が上がった。

「こんなにたくさんの若い人が来てくれて、本当に嬉しいです。では次の曲は10代の皆さんに捧げます。恋の歌」

こうして愛梨は熱唱し始めた。

全10曲を歌い上げると、観客席からアンコールの声と手拍子が鳴る。

そしてアンコールに応えて2曲を歌い上げた。


「愛梨ー!良かったよー」

美歩達3人が楽屋にやって来た。

「来てくれてありがとう」

愛梨は着物姿のままぴょんぴょん跳ねていた。

「凄いね。ステージに立ってた時は別人みたいだったよ」

「そうかなぁ」

愛梨はもうすっかり普段の可愛い愛梨に戻っている。

「これ、差し入れ貰ったの。シュークリーム。食べて食べて」

こうして4人でシュークリームを頬張った。

「美味しいー!」

愛梨は満面の笑みを浮かべた。

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