第13話

翌日の撮影では愛梨はちゃんと恋心を表現する事が出来た。

そのまま啓哉の役克己に抱き締められた。

「はい、カット。OK」

演出家からOKが出て、その日の撮影は終わった。

次は歌番組に出演が待っている。

着物に着替えると身体にスイッチが入る。

歌手としての馬場愛梨に切り替わる。

控室で発声練習を繰り返す。

今はマネージャーが観客だ。


毎週水曜日の夜にある演歌番組、日本の心には名だたる演歌歌手が登場する。

愛梨は15歳で一番年下である。

全てが目上の人なので控室に挨拶に行く。

「馬場愛梨と申します。今日はよろしくお願いします」

「よろしくね」

愛梨はこの番組に12歳の時から出ていた。


「それでさ……遥希のヤツ」

休憩時間になると啓哉が積極的に話して来る。

愛梨はその話を聞いていた。

「それでどうしたの?」

「彼奴には変わった所があって、必ず靴下を裏向きに履くんだ」

「へえー。面白い。でも何で?」

「いい事があるらしいよ」

「ふーん」

「今度は愛梨ちゃんの話を聞きたいな」

「私の事?」

「どんな事でも君の事を知りたいんだ」

休憩時間が終わると撮影に入る。

愛梨も大分NGを出さなくなって来た。

それもこれも演技練習に付き合ってくれる拓音のお陰だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る