第7話
♬あんたが愛しい……あんたが欲しい
愛梨は激しい愛の歌を歌っていた。
クリアホールは満席になっていた。
愛梨は東京以外では歌えていない。
地元の水戸からも仕事のオファーが殺到しているが、スケジュールが開かないのである。
「私、常盤君が好きなの」
「拓ちゃん?そうなんだ」
愛梨はキョトンとしている。
「先に訊いとくよ。愛梨は彼の事をどう思っているの?」
美歩の眼差しは真剣そのものである。
「幼なじみだよ。それ以上でも以下でもない」
「男の子として見てはいない?」
「うん」
愛梨はしっかりと頷いた。
「良かったあー!」
美歩は胸を押さえてホッと息を吐き出した。
学校の屋上に突然呼び出されて、愛梨は美歩から拓音への気持ちを聞いた。
「頑張ってね。美歩。私、応援するから」
愛梨は美歩を抱き締めた。
「ありがとう」
一緒に勉強しながらも拓音は心ここにあらずと言った様子だった。
「拓ちゃん、どうしたの?」
「実は……藤谷に告白されたんだ」
「そうか。それで拓ちゃんはどうするの?」
愛梨は真っ直ぐな目で拓音を見る。
「どうしようかな」
拓音はそう言いながら愛梨の様子を探る。
「付き合ったらいいと思う。美歩はいい子だ
よ」
「本気でそう思うのか?」
「うん」
愛梨は迷いなくすぐに答えた。
「うわぁ!馬場ちゃん全く気付いていないのか?」
佐久間宙(そら)が言った。
「全く。挙句に、藤谷美歩と付き合えって言った」
「あーあ」
宙はそう言いながら拓音の肩に手を乗せた。
「馬場ちゃんはまだ恋を知らないのかもなー」
「…… 」
「それで如何する?藤谷と付き合うのか?」
「付き合ってみようかな。愛梨とは世界が違うし」
「そうか…… 」
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