第5話

紫の生地に牡丹をあしらった着物が、よく似合う。

そう愛梨は演歌歌手だ。

夜のヒットステージでアイドル達に混じって凛とした着物姿の愛梨がよく目立つ。

伸びのある声と鼓舞しが利いている。

こうして愛梨は12歳の時から歌っていた。

愛梨が歌う事で演歌にハマる若者が続出している。


艶のある声に鼓舞しが効いている。

「この子、まだ15歳でしょ。何処からその声が出て来るの」

姉の明日香が言った。

「愛梨は3歳から民謡習ってるの。おばあさんの影響でね」

美歩が言った。

「でも、オーディションで8500人の応募者の中でグランプリ取ったんでしょう?その時も演歌歌ったの?」

「そうだよ。愛梨は可愛いし、そのギャップが良かったみたいだよ」


サラリーマンの中年男性や、おじいちゃんだけではない。若い男の子もかなりいる。

そのステージで愛梨は歌っていた。

少し大人びた着物姿が堪らないとファンは増える一方である。

団塊世代の人には娘か孫のように見えるのだろう。

最近、愛梨には悩みがある。

ドラマの仕事が入っているからだ。

女優を目指している人から見れば羨ましい限りだが、愛梨は歌手である。

歌の仕事が少なくなるのは辛い。

ドラマに出るとなると、演技の稽古ももちろんしなければならない。

歌のレッスンと演技稽古、CMや雑誌の撮影、ステージやドラマの撮影と寝る間もないぐらいの忙しさだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る