第13話

有紀は金曜日の放課後、智也に校舎の裏に呼び出された。

「話って何?」

「俺と付き合って欲しいんだ」

智也は痛い程真剣な眼差しで有紀を見ている。

「梨央ちゃんへの告白が先になったけど」

智也は照れたように頭を掻いた。

「ありがとう……私で良ければ」

「本当か?」

智也が確認すると、有紀はほんのり頰を赤らめた。

そして小さく頷く。

「ありがとう!よろしくな」

「私こそよろしくお願いします」

有紀はペコリと頭を下げた。

「可愛い!」

智也は思わず有紀を抱きしめていた。


まだ静と別れてから2ヶ月しか経っていない。

他の人と付き合うのは早いかもしれない。

でも有紀はもう前に進みたかった。


「日曜日とかデート出来るかな」

智也が言った。

「土曜日なら。日曜日は梨央と遊ぶから」

「そう。良かった。俺も日曜日ダメなんだ」

智也はそう言って笑顔を見せた。

「日曜日何かあるの?」

「道場で師範代として剣道を教えてるから」

「カッコいい!」

有紀は思わず目を輝かせた。

「爺ちゃんが剣道を教えてるからその手伝い」

智也はそう言って照れたように笑った。


智也の竹刀を持った時の凛とした眼差しに有紀は釘付けになっていた。

梨央を迎えに行く前にほんの少しだけ剣道場を除くのが日課になっている。

今は気合いを入れながら素振りを繰り返していた。


土曜日は高校は休みなので、有紀は智也と夕方までデートしていた。午後5時には保育園に梨央を迎えに行かなければならないのでデートの時間は午後4時30分迄だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る