第4話

「有紀……ゴメンね。私なの。加藤君に告白された」

朱音はその足で有紀の家に来ていた。

「……朱音は何て言ったの?」

「断ったよ。当たり前でしょう?」

「何かあったの?」

朱音はポロポロ涙を零した。

「ゴメン……加藤君にキスされたの」

「そんな…… 」

有紀も涙ぐんでいる。

「別れるにしても2.3発引っ叩いてやらなきゃ気が治らないよ!」

「有紀…… 」

「ゴメンね!朱音の気持ちに気付かない

で…… 」

「有紀ぃー!」

朱音は有紀に抱きついて泣き出した。


予告通り、有紀は放課後、静を屋上で引っ叩いた。

「1発目は私を泣かせた事」

「2発目は朱音を泣かせた事」

有紀はそう言って涙ぐみながら、静を引っ叩いた。

「これでおしまいよ。朱音を泣かさないで」

有紀はそのまま駆け出して行った。


「白藤、お前凄いな」

哲哉が教室に戻って来た有紀に声を掛けた。

「普通なら絶交ものだろ」

「朱音が私を裏切る訳ないじゃない。

朱音は裏切ってたんじゃなくて苦しんでたんだよ」

有紀はスポーツバッグを抱えた。

「じゃあね」

「お前、カッコいいな」

「男の子からカッコいいなんて言われても嬉しくないよ」

有紀は教室の入り口で振り返るとそう言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る