第3話

「話って何?」

朱音は静に呼び出されて屋上に来ていた。

「俺、立野が好きなんだ」

「え?」

朱音の顔色が変わった。

「いつの間にかお前の事好きになってたんだ」

静の言葉を聞いて朱音は震えている。

「そんな…… 」

朱音は青ざめていた。

「加藤君、それはダメ。それだけはダメ!」

「立野…… 」

「そう言う想いは胸に秘めてるもの!」

朱音は堪らずに叫んでいた。

「私には有紀が大事。その為なら恋なんて幾らでも諦められるから!」

「え?」

朱音はそのまま走り去ろうとした。

だが、静が朱音の手を掴んだ。

「待てよ。今のどう言う意味だ?」

朱音は静の手を振り払おうとする。

だが静は離さなかった。

「離して……!」

「立野も俺が好きなのか⁈」

「そんなわけないじゃない!」

朱音は静から目を逸らしている。

「本当は俺の事を好きだったのか?」

「違うって言ってるでしょ」

朱音は何とかして平静を保とうとしていた。

その次の瞬間、静は朱音を抱き寄せていた。

「離して!」

「立野が本当の事を言うまで離さない」


「……そうよ。私は加藤君が好き。でも有紀だから諦めたの。もういいでしょう。離して」

静は朱音を離した。

涙ぐんでいる。

その顔を見た瞬間に静の頭の中は真っ白になった。

そして静は朱音の唇に自分の唇を押し当てていた。


「……!」

朱音には今の状況が把握出来ていなかった。

暖かな唇をまともに受けている。

朱音は静を突き放した。

「立野……!」

朱音の瞳から涙が幾つも零れ落ちる。

そしてそのまま朱音は駆け出して行った。


泣かせてしまった……!

好きになった女の子を。

有紀も朱音も二人共に。

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