第2話

それから9年後……


「やっぱり桜はいいねー」

星野紗来(さら)は満開の桜の木の下でレジャーシートに座って伸びをしながら言った。

目の前にはおにぎりや唐揚げ、卵焼きなどのお重が並んでいる。

「しかし、大河は遅いな」

小室真樹が言うと、紗来は思わず笑った。

「真樹、5分前にも同じ事言ったよ」

「ドラマの撮影が終わったらすぐ来るって言ってたんだけどな」

そこへ慌てた様子で桐生大河が走って来た。

平尾唯を連れている。

「ごめん!撮影が長引いてさ。多い方が楽しいから唯も連れて来た」

大河は手を合わせた。

「先に始めてりゃ良かったのに」

「俺はそう言ったけど、紗来が待ってるって言ったんだ」

「お花見は、みんな揃っての方が楽しいじゃない」

「これ、全部作ったの?」

唯が目を丸くしている。

「そう。早く食べて。お腹空いたよね」

紗来はそう言って大河と唯に割り箸と紙の皿を渡した。

「美味しそう。頂きます」

それぞれの視線が交差する中、唯はお重に手を伸ばしたのである。

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