第6話

歌うま物語という人気番組がある。

文字通り下は10歳からプロ歌手まで幅広い世代の歌うまを募集して、その中で優勝者を決めると言うものだ。

月に一度、3時間番組でゴールデンタイムで放送される。

審査員は不公平がないように7名が100点ずつ入れられる。700点満点が最高得点だ。

この番組に音源を送ってくる応募者は後を絶たない。

優衣はこの番組に小学5年生の時に応募して優勝した経歴がある。

1年に3回優勝した者のみに与えられるディーバの称号。男子は歌の帝王となる。

但し1年以上一度も優勝しなければ返上しなければならない。

年16回の放送である。

優衣は小学校の時から、この番組に出場している。

この番組のレベルはかなり高く、出演しただけでもその町のイベントに引っ張りダコだという人もいた。

優衣はディーバの称号を持っている。

10歳から番組に出演し続けて、12歳の時にディーバになっている。

優衣は町のイベントに引っ張りダコだった。


「優衣ちゃん、今日はよろしくね」

「よろしくお願いします」

出演者控室で優衣は吉住遼と会った。

遼も12歳からこの番組に出演している。

そして14歳の時、審査員だった成川育弘が遼に言ったのだ。

「本気で演歌歌手を目指しているなら僕が面倒見るよ」

スタジオ内はどよめいたが成川は本気だった。


「東京へ行くの?」

優衣は遼に訊いた。

「行くよ。夢みたいな話だよ。僕は演歌歌手になりたいんだ。喜んで行くさ!」

「もう会えなくなるね」

「先生が許してくれたら出場するよ」

こうして遼は歌の帝王の称号を返上した。

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