第2話 モテたい男と働きたくない男

「ほんっっっとに俺、モテたいんです!だから俺にモテる方法を伝授ください。」


 店に入ってくるなり、そう言って頭を下げるサラリーマン風の男。 見た目の年齢は30歳くらいか?話し方はもう少し若い印象を受けるが。


「初めまして、何故かわからないがこのBARで客の相談役をやっている七里寧仁ななさとねいとと言うものだ。まずはお名前を伺っても?」


 とりあえず落ち着かせるためにも自己紹介をし、名前を聞いてみることにした。


「失礼しました!田中と申します!この前、先輩にこのBARに連れてきてもらって、明美さんに相談させてもらったところ、ネイトさんのこと紹介してもらいました!」


 うん、声がでかい。あといきなりすぎて何が何だかよくわからない。


「わかった。わかった。とりあえず田中君、明美君にどんな相談をしたのか教えてもらえるかな?あともう少し声のボリュームを抑えてもらえると助かる。」


 一旦、田中君に対して詳しい説明を求めることにした。


「失礼しました。俺、今年で25歳になるんですが、生まれてこの方、彼女ができたことがなくて・・・仲がいい先輩もそのこと知っていて、色々なお店に連れて行ってくれたりアドバイスしてもらったりしてたんですが、それでも全然だめで。そしたら先輩がここに連れてきてくれて。このBAR、アレじゃないですか?なので目の保養と少しの期待を胸にこの店にきたんですが、僕だけ散々でして、カウンターで一人飲みながら愚痴ってたら明美さんがネイトさんのことを紹介してくださったんです。」


 思ってたより若かった。そして明美君、君の中で私のハードル上がりすぎじゃないか?


「あのさ、明美君、僕にモテモテの秘訣を教えるってのは中々ハードル高くないかい?もっと他にも良い人材がいただろう。例えば蒼君とか。」


 軽く彼女を睨みつつ思いを伝える。働きたくないでござると。


「ネイトさん。蒼君はそもそも素材が違います。蒼君は黙っているだけでも女性が寄ってきますが、ネイトさんはそうじゃないでしょう?だから、それなりに年齢がいっていて、素材もそれなりなのに女性との交友関係が広いネイトさんが適任かと思いまして紹介いたしました。」


 こいつ、オーナーに向かってストレートに悪口いいすぎだろう・・・


「君の刃は鋭いね・・・僕も田中君も心がスタボロだよ・・・」


 とりあえず、これ以上、明美君としゃべっていたら傷口に塩をさらに塗られそうだから話を元に戻そう。


「で、田中君、モテるといっても色々な種類があると思うんだ。例えば彼女が欲しいだったり、色々な女性と深く遊べるようになりたいだったり。君のモテるはどういった意味かな?」


「ネイトさん!俺は色々な女性と深く遊べる男性になりたいです!目指しています!」


 この野郎・・・


「不特定多数の女性とスケベがしたいと。下衆ですね。」


「明美君ちょっと黙ってくれるかな!?」


 お客さんになんという事を言うんだこの店長は。まぁ僕も同意見だけど・・・


「OK田中君、とりあえず話をしようか。君がモテることを保障するわけでもないし、不特定多数の女性と遊べるようにしてあげられるわけでもないけど、すこーしくらいならアドバイスができると思うよ。」


「ありがとうございます!よろしくお願いします!」


さてさて、今夜も迷える子羊に責任感のないアドバイスを行いますか。

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