絶対に働きたくない男、BARのオーナーになる

辛酸鬼六

第1話 働きたくない男、一国一城の主となる

 少し薄暗いBARのカウンターで一人、男が酒を片手に呟いた。


「働かずして飲む酒は美味いねぇ。」


 彼、七里寧仁ななさとねいとはこのBARのオーナーである。


「しっかり働いてください。オーナー」


 カウンター越しにわかるほど、身長が高くまた、とても綺麗な濡れ羽色の髪をした美女がそんな彼の呟きに反応する。


「明美君は厳しいねぇ。何のために君に店長をやってもらってると思ってるんだ。僕はもう働きたくないんだよ。FIREしたんだよFIRE。」


 彼はカウンター越しにこのBARの店長である「新熊明美しんくまあけみ」に切り返す。


「そんなオーナーに、本日もご相談の依頼が来ております。どうせ暇なのはわかっていますのでキビキビ働いて売り上げに貢献してください。あとついでに、表の看板オープンにしてきてください。」


「働きたくないオーナーに対して、また勝手にお仕事を入れるの辞めてもらえるかな?僕の話ちゃんと聞いてたかな?」


いつも通りの時間にいつも通りのやり取りを行い、今夜も少し変わったBARがオープンする。


「いらっしゃいませ。BAR Protean へようこそ。」

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