第10話 偽りの英雄
「おい、まだ動ける奴はいるか、ガッロ」
キャプテンは
「だめです。無事なのは、ここにいる三人だけです。キャプテン、俺、そして
「なんでおまえらは無事なんだ」
「なんで、って。なあ、ガッリナ」
「うん」
草を
「あ、そうか。ごめん」
「いえいえ、気にしないでください、キャプテン」
「それにしても、ただもんじゃないな、あのお嬢さんたちは」
キャプテンは、ひとつ息をついた。
「ええ、まったく。なんて恥知らずな女たちなんだ。野郎どもは片っ端から喰いつぶされて、幸せそうに泡を吹いてます」
「サクラのお嬢ちゃんはどうしてる」
「見張りがやられた隙を見て、銃を取り返して逃げました。でも、
「それならまあ、いいか」
がくん、と
「なんだ」
キャプテンが前方を睨んだ。そこには黒い人影が立っていた。土煙の舞う中、トレンチコートが乾いた風に揺れている。
「来たか」キャプテンの口もとに
グリューネローゼとヴィオレッタの
「抜けよ、黒騎士。銃を持っているのならな」あざ笑うようにキャプテンが叫んだ。「おい、おまえたち。怖がる必要はない。目をつぶって素手で殴れ」
ガッロとガッリは顔を見合わせている。ふたりとも、膝が震えていた。
「やれ。それとも、俺に撃ち殺されたいか」
ふたりの男たちの足もとで爆発が起きた。
ハンドガン、というよりはハンドキャノンと呼ぶべきだろう。ふつうなら両手で構えてさえ射撃主がうしろに吹っ飛びそうなクレイジー・ガンを、キャプテンは片手で軽々と発射した。
「う、うわー」
ガッロがヤケになって走りだした。目をつぶって黒騎士に殴りかかる。黒騎士は避けない。まともに顔面に拳を受けて、うしろにひっくり返った。
「え……」倒したガッロの方が驚いている。「なんだ? もしかして、弱い?」
ガッリナも仕掛けた。寄ってたかって殴る蹴るの暴行を加える。ぼろぼろになりながら、黒騎士は反撃しない。いや、手も足も出ない。
「おい黒騎士。おまえのことはとっくに調べがついてるんだ」キャプテンの声は落ち着いている。「ただ目つきが鋭いだけの、なんにもできない奴だ。決闘どころか、銃を撃ったこともない。
ガッロたちの動きが止まった。
「仕上げは俺がやる」キャプテンがパイファー・ツェリスカを構えた。命中すれば肉片しか残らないかもしれない。「おまえ、うっとうしいんだよ。ちょろちょろ逃げ回りやがって。弱いくせに生き延びようとあがいてないでさっさと死ねよ。あいつの
引き金が
着弾音と共に湧き上がった土煙の中、ゆらりと立つ黒い影があった。
「くそ、
サクラに詰め寄ろうとしたキャプテンが、頭に手をあててよろめいた。そのうしろには、中華鍋を手にしたグリューネローゼが
「そうか、あんたもいたんだな。うちの連中が世話になったな」
キャプテンがディアンドルの胸もとを
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