第71話 ラビと出会った記念日ちょっと前だよ配信3

「ではまず、1番大きなフライパンで焼く、パン生地を作っていこうと思います。生地ができたらお肉を入れていきますからね。もともと好きなお肉を用意していますが、その中でも1番好きなお肉を、入れてあげると良いかもしれません。なにしろ1番大きなパンになるので」


“なるほど”

“1番好きなのが1番多いのが良いよな”

“はい質問です!! お肉以外でも良いですか? 好きなお野菜とか”


「もちろん、お肉以外でもぜんぜん良いですよ。ただパンから中身が出てしまうような物や、焼いている最中に生地に染み込んでいってしまう物は、なるべく避けてください。後で食べる時、中身が見えた方が楽しいと思うので」


“何が入ってるんだろう? 的な感じか”

“中身が入ってる方が豪華に見えるし”

“色々入れすぎるのもダメだよな”

“良い具合に、いっぱいが良き良き”


『そうです。何事も適量が良いですね。ではまず、ラビはツノうさぎのお肉が好きなので、1番大きなパンは、ツノうさぎでいこうと思います。まずお肉に味をつけて混ぜますね。それから……』


 俺はラビと一緒にネタを作っていく。次はププちゃんとクーちゃんと一緒にやるぞ。ちょうど3つ作るからな。ブーちゃんは待つ係だから関係なし。


 そしてお肉が終われば、次はパンの生地を作っていって。袋に入れてコネコネするから、ラビ達でもできるんだ。


 こうして焼くまでの準備はすぐに終わった。


「お肉を入れるのが難しい、初めてと言う方は。生地を半分にして、まずフライパンに半分生地を敷き、その後お肉を乗せて、その上から残りの生地を乗せて包んでください。ちゃんとわきをしっかりくっ付けてくださいね。


「ではさっそく焼いていきましょう。そして焼いている間に、次にパンの準備をします。あ、ちなみにこちらのパン生地は、発行させなくても良い材料を使って作っているので、その辺は気にせずに、すぐに焼いて大丈夫ですよ」


 こんな感じで、俺達はどんどんパンを作っていった。なにしろ本当に特別な事はしないパンだからな。ラビ達でもお手伝いできるし。慣れている人達がやればさっさか作れて、初めての人でも、そこまで時間をかけずに作ることができるはずだ。


 そうしてそれぞれじっくりゆっくり、それぞれ焼くこと30~40分。あたり一面に良い匂いが漂い、ふっくりとパンが焼き上がった。


「さぁ、これで出来上がりです。良いですか、火を強くして早く焼こうとは思わないでくださいね。じっくりゆっくりですよ。では次の作業です」


“これで終わりじゃないの?”

“綺麗に焼けたし”

“みんな今すぐ食べたそうな顔してるよ?”


「食べるのはもう少し後ですよ。これは記念日などのパーティーの料理なんです。なのでやっぱり飾り付けをしないとです」


“ああ”

“なるほど”

“確かにこれをドンと置くだけじゃな”


「ではまず、1番大きなパンを置いても、余裕がある大皿を用意します。使い捨て用の大きなお皿でも良いですよ。そのお皿をフライパンの上に置いて、そのままひっくり返します。重い時は誰かと一緒にやってくださいね。では……、よっと。こんな感じです」


“なんだ、失敗しなかった”

“そこはパンをちょいずらさないと”

“それでラビたん達に怒られるw”

“待って待って、ラビたんのパンだから”

“失敗したらしたでその後が怖いからw”


 いやいや、うん。本当だよ。何恐ろしいことを言っているんだ。


「ははは、そうですよ。後が怖いので、なるべく失敗をしないように心がけていますからね。では次です。つぎは2番目に大きなパンを、お皿に移動させるんですが。まず1番大きなパンと同じように、お皿に取り出します。……こうですね」


 俺は1番大きなパン同様、2番目に大きなパンをお皿に乗せた。でも今回はここで終わりじゃない。


「いいですか、この2番目に大きなパンを、1番大きなパンの上に、お皿の上を滑らせながら乗せます。……こうです。そして1番小さなパンも、同じように2番目に大きなパンに乗せます。……こうです!」


“え? 乗せるの?”

“全部?”

“あ、なるほど”

“この形、段ケーキと同じか!!”


「そうです。お気づきの通り、これは段ケーキのパンバージョンです。ただここで大切なのが、このBBQの鉄串です。ケーキは柔らかくて大変ですが、パンの方は周りがカリカリ、ツルツルで滑りやすいので、この鉄串で真ん中から刺して、パンを固定してください」


“なるほど、それの棒だったか”

“固定大事”

“絶対ズレる”

“そうして倒れる”

“みんなが絶望する”

“暴動が起きる”


「そうです。暴動が起きないように、しっかりと固定してください。ではこの後です。この後はパンに合うソースを用意します」


 ソースも簡単。すでに既存であるソースを数種類買ってきて、それを混ぜて温めればOKだ。


「どうです? 簡単でしょう? 残った物は他の料理に使えるので残りませんし。このソース、案外いろいろな物に合うので、是非使ってみてください」


“それぞれ量を変えるだけで、美味しそうなソースができるなんて”

“今日、作ってみるかな”


「では次です。次は飾り付けです。星型に型抜きで抜いたハムとか、花形にくり抜いた野菜でも、皆さんの家族の魔獣が喜ぶ物で、飾り付けさせてあげてください。ラビは野菜とハムが好きなので、それを中心に飾り付けをしていきます」


 ラビとププちゃんとクーちゃんが、次々パンを飾り付けしていく。そのおかげでパンは派手派手に。


“すごっw”

“独特w”

“でも好きなように飾り付けできるのは、みんな喜ぶよね”

“パンが見えなくなってるw”

“見えるのは鉄串の先だけに”

“これだけ見ると肉と野菜の山だなw”


 ラビ達が用意した物を全部飾り付けに使ったもんだから、段パンが隠れ、ただの肉と野菜の山に見になっちゃったんだよ。まぁ、本人が1番良いと思う姿が1番良いけどさ。段パンの意味よ。


「それでは最後、用意したソースを真上からかけます。ラビがやるか?」


『きゅい!!』


 元気な返事と共に、俺と一緒にソースをかけるラビ。そうして……。


「これで段パンの出来上がりです!!」


“おお!!”

“最後は肉と野菜の山の段パン、お疲れ様です!”

“www”

“山w”

“でもこんなにボリューム満タンで、魔獣と一緒に作れるパンなんて”

“俺、今度の記念日には絶対に作ろう!”


「では、この辺を切ってみましょう。大きめに切ってきますね。……良かった。3段上手く一気に切れました。断面はこんな感じです」


“綺麗な断面!!”

“みんなお肉が違うから、ちょっとずつ焼き上がりの色が違って綺麗だな”

“綺麗に焼けてる!!”

“美味しそう”

“大変です!! 保護者様!! 後ろで我慢限界の子が、面白いままめちゃ睨んでます!!”


 視聴者さんに言われて、急いで後ろを見る。そこにはパーティーメガネを付けたままの、面白い格好で睨んでいるブーちゃんの姿が。


 急いで段パンを取り分ける俺。そしてブーちゃんのお皿に乗せた途端。5分もしないで完食されしまい。そしてブーちゃんはおかわりを狙った。


 が、それに待ったをかけたのが、自分の記念日練習パンだと、パンの前に立ちはだかったラビだ。


 そうして始まるパン争奪戦。それぞれのお間白い格好のまま戦ったラビ達に、視聴者さんは大盛り上がりだった。半分は爆笑だったか?


 俺の作ったパンの話は一体どこへ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る