第57話 アトリエ・ギラギラ

「いやぁ、昨日は凄かったな」


「本当だよ。あんなにみんな喜んでくれるなんてな」


「だから言ったろ? みんなそんなに手の込んだ高い物じゃなくても、喜んでくらるってさ」


「ラビ達の、あんな子供のイタズラみたいな物まで喜んでたぞ? プレゼントって言っておいてなんだけど、あんな鼻やしっぽやらをくっ付けたので良いのかね。ププちゃんなんて顔、ただの楕円形だったんだぞ」


「クククッ、俺達やラビ達みたいに、色々な物が出たり引っ込んだりしてないもんな。ツルツルプヨプヨたから、何か形を形成してくれないと、確かにただの楕円形だわ」


「あれだけじゃちょっとだから、裏に俺達のチャンネル名と、丸の中にラビ達の顔写真でも付けておこうかなって」


「そうだな。じゃあ帰ったらやろう。まずは絵の具を買いに行かないと」


「まったく、よく全部使いきったよ」


 昨日の配信は、プレゼントを発表し終わってからも、視聴者さんの盛り上がりが止まらなくて。配信時間を30分延長する事になった。


 そして今朝あげた、昨日の配信のアーカイブへのコメント欄には、コメントが殺到していて。ブーちゃんの緊急配信とまではいかないけど、それくらいの勢いで、今もコメントが増えている。


 そして俺達といえば、それからの撮影に使う事もあるだろうし。もしかしたら何かでまたプレゼントを作るかもしれない。というかその前に、ラビ達が遊ぶのには欠かせないものだから、これから絵の具を買いに行くところだ。


 絵の具は協会の販売店よりも、そういう絵に関係する物を売っている専門店があるから、そこへ買いに行く。


 お店の名前は『アトリエ・ギラギラ』で、お店の外見もギラギラしている。店主の剛健さんがギラギラしたものが好きで、名前も外見もギラギラにしちゃったんだよ。

 何も知らずにお店の前を通った人は必ず驚き、何かやばい物でも売ってるお店なんじゃと、急いでお店から遠ざかる。それであとから絵関係のお店だと聞き、2度驚くっていうな。


 俺と晴翔が生まれた頃には、もう普通にあったお店だし、何を売っているか知っていたから、いつお店の前を通っても別にって感じだったけど。


 母さん達によると、赤ん坊の俺達が初めてお店を見た時は、赤ん坊ながらにかなり驚いていたらしい。見つめたまま固まり、少しすると2人同時にひと言、「ばぶぅ」と言ったって。その時の表情が、何だこれ、と言っているみたいで、みんなで大爆笑したそうだ。


 赤ん坊の頃の話しだから、もちろん記憶になんてないけれど、赤ん坊も驚く、それが『アトリエ・ギラギラ』である。


 ちなみに、ラビ達が初めて見た時も、いつもは初めての物には、何にでも興味を示すラビ達が、呆然として立ち尽くしていたぞ。あのブーちゃんまでもが目を見開き、口をポカンと開けて固まり。少しの間動かなくなってしまって、俺がおんぶする羽目に。

 まぁ、いつもおんぶしてるけど、あの時は固まっていたから、いつもみたいにしっかり背中におぶさってくれなくて、後ろにそのまま落としそうで本当に困ったよ。


 クーちゃんはどういう反応をするか。たぶんみんなと同じ反応になると思うけど。もしも、もしもだ、お店の外装に耐えられても。お店の中でも驚く物、じゃなかった。驚くかもしれない人が待っているからな。


「よし、着いたぞ。ここからは歩くからな」


 駐車場に着いて5分程歩く。が、あまりのギラギラ具合に、遠くからでもギラギラしているのが分かる。そしてそれを見たクーちゃんは、大丈夫か? 固まらないか? と心配する俺の気持ちも知らないで。ワクワク顔で、早く早くと俺の洋服を引っ張り。


 そしてついに、お店の前に着けば。


『かっこいいっ!! すごいっ!! ねぇ、タクパパ、かっこいいっ!! すごいギラギラ!! ぼくだいすき!!』


 と、大喜びだった。もしからたらダンジョンから出てきて、色々な物を見て喜んでいたけど。今日が1番かもしれない。

 あまりの喜びように、逆にラビ達が引いていた。そんなに喜ぶほど? これが? って感じにな。みんなクーちゃんが驚いて、固まるのを楽しみにしていたんだけどな。まるっきし真逆の反応だった。


「今日はここで買い物をするんだぞ」


『はやくはいろう!! タクパパ、はやく!!』


「分かった分かった」


「凄い反応たな。これなら中に入って、あの人に会っても大丈夫なんじゃないか?」


「俺とお前は初めて会った時、泣いて逃げ出したのにな。まぁ、小さ過ぎて覚えてないけど。ラビ達もせっかく復活しても、また固まってたし」


「そういや俺達の時は、ホワイトタイガーの兜に、ギンギラの鎧を着てたって言ってたよな」


「ラビ達の時はキラービーと、ビックポイズンスネーク。ブーちゃんの時は、たまたまカプリシャスキャットだったな」


「今日は何だろうな?」


「何だろうと、ギラギラだろうさ。さぁ、入ろう」


 俺は一応、くーちゃんをしっかり抱っこしてお店の中に入る。と、すぐにクーちゃんがあれ? と言った。


『ギラギラじゃない?』


「はははっ、お店の中は商品がたくさん置いてあるだろう? みんながギラギラだと、商品の色が分からないから、ギラギラじゃないんだ。でも、ギラギラもちゃんといるからな」


『ギ~ラギ~ラ、ギ~ラギ~ラ』


「お前、そんなにギラギラが好きだったのか」


「その声は拓哉と晴翔か?」


 話しているとお店の奥から、店主の剛健さんが話しかけてきた。


「はい!! 拓哉と晴翔です!! ラビ達も一緒です!!」


「新しい奴も一緒か!!」


「はい!!」


「そうか。じゃあ固まるか倒れなきゃ良いんだけどな。そっちに行くぞ!!」


 そう言った剛健さん。その後にガシャン、ガシャガシャッ!! という音がして。少しすると俺達の方へギラギラが近づいてきた。


『ギラギラ……?』




     *・゜゚・*:.。..。.:*・'.。. .。.:*・゜゚・**・゜゚・*:.。..。.:*・'*:.。. .。.:*・゜゚・*


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