第58話 ギラギラ店主の剛健さん

 相変わらず、すっごい格好してるなぁと思いながら、俺は輝きを抑えようと、手で影を作る。それは晴翔も同じで、晴翔はサングラスをかけたよ。


 そしてラビとププちゃんは、うわぁって感じの顔をして体を引き。ブーちゃんは……。ブーちゃんの姿が見えない事に気づき慌てて周りを見れば、店の端の方で持ってきていたタオルを頭からかけ、たぶんあの体勢は寝の体勢に入っているだろう。


 ただ、寝る体勢になっているけど、しっぽの毛が逆立っている。剛健さんの格好があまりに凄くて、拒否反応が出ているんだ。


 そしてアトリエ・ギラギラが初めてで、剛健さんが初めてのクーちゃんといえば。


『くあぁぁぁ……?』


 目をくりくりさせて、変な声を出していた。さすがに驚いたんだろうな。と、この時はそう思っていた俺。


「よう、この前来たばかりだろう? 今日はどうした?」


「実は初めてプレゼント企画を考えたんですけど。そのプレゼントで……」


 俺は簡単に何があったか剛健さんに話す。


「ハハハッ!! それはお前さん達にとっては良いことでもあって、災難でもあったな。何とも言えんところだなが、まぁ、そっちのチビ助達は、よくそこまでやったぞ。何を作るのもやりきる事が大切だ!!」


『きゅい!!』


『ぷぷ~!!』


 元気よく返事をして、すぐにギラギラを避けるために、さっさと俺の後ろに隠れるラビとププちゃん。


「ちょうど今日、全部の色が入荷したところだったんだ。個々でも良いし、セットでも良いし選び放題だぞ!!」


「そうなんですか。試し書きをしても?」


「ああ、そっちに置いてある紙を使ってくれ。試し書き用の絵の具は用意してある」


「分かりました」


「と、さてと。そっちのチビ助は初めましてだな。やっぱり固まってるか? 倒れちゃいないだろう? それとも目を開けたまま気絶してるか?」


 剛健さんが真っ直ぐにクーちゃんを見てくる。たぶん気絶はしてないだろうけど、これ固まってるよな? 俺はそっとクーちゃんを揺らしてみた。


「クーちゃん、クーちゃん?」


 最初の呼びかけに反応しないクーちゃん。一応覗き込んで確認してみたけど、やっぱり気絶はしていない? 固まっているだけか? 足元を見れば、ラビとププちゃんがニヤニヤしていた。


 最初の反応が思った通りじゃなかったから、やっとクーちゃんが固まった姿を見てニヤニヤしているんだろう。俺は苦笑いしながら、もう1回クーちゃんを呼んでみる。


「クーちゃん、クーちゃん、ほら、この方がこのお店の……」


 と、話しかけている時だった。いきなりクーちゃんが叫んだ。


『きゃわあぁぁぁ!!』


 きゃわあぁぁぁってどんな叫び声だよ。というかいきなり叫んでどうしたんだよ。


『タクパパ、タクパパ!! ドラゴンがいるおみせなの!?』


「え? ああ、これは違くて……」


『ギラギラのドラゴン!! ぼくはじめて!! かっこいい!! かっこいい!! パパのつぎにかっこいい!!』


 クーちゃんの食いつきが凄い。目を輝かせながら、バシバシしっぽで、ゲシゲシ足で、俺を叩き蹴ってくる。


「い、いて、クーちゃん落ち着け。まず、確かにドラゴンだけど、本物のドラゴンじゃない。よく匂いを嗅いでみろ。クーちゃんと同じような魔獣の匂いがしないだろう?」


『ほんもの? ドラゴンじゃない? クンクン。……あれぇ? にんげんのにおいがする~』


「だろう? あのドラゴンの顔は兜って言って、そうだな。俺や晴翔、みんなも帽子をかぶるだろう? それと同じように、頭からかぶる物なんだぞ。剛健さん、外してもらって良いですか?」


『ああ。チビ助、お前固まってたんじゃないのか?』


「あー、どうもビックリじゃなくて、感動で固まっていたみたいです」


「感動? そうかそうか!!」


 嬉しそうな剛健さん。クーちゃんみたいな反応をされたのは、何回目くらいなんだろうか?


 そうして剛健さんがドラゴンの兜をとれば、かっこいい口髭を生やした、ちょっと強面の剛健さんが現れた。ガタイも良い剛健さん、こんなギラギラの格好をしない方が、カッコイイと思うんだが。


 実は剛健さん。鎧と兜を集めるのが趣味なんだけど。ほらギラギラが大好きだからさ、鎧も兜もギラギラなんだ。

 それで兜の方は、魔獣の形の兜が好きで、ホワイトタイガー、キラービー、ビックポイズンスネーク、カプリシャスキャットと。他にも100種類以上の兜を持っていて。その全てがギラギラしている。


 しかもこのギラギラ姿でダンジョンに行くもんだから、毎回パーティメンバーに怒られて、ダンジョン前で着替えさせられ、周りに迷惑をかけている。おばさま方には人気らしいけど……。


 ちなみに剛健さん、こんなんだけど、S級よりのAランクだ。


「よう、初めましてだな。俺は剛健だ、よろしくな!!」


『……ひとがでてきた!! タクパパ!! ドラゴンのなかに、ひとがいる!! たいへんたいへん!!』


「クーちゃん、だからこれはドラゴンじゃないんだよ。どう説明したらいい?」


「最初に見たのがドラゴンだったのがいけなかったな」


「このチビ助、俺がドラゴンに入ってると思ってるんだろう? なら俺がこれを脱いで洋服みたいなもんだって説明すれば良いだろう」


 そう言って、兜を棚の上に置き、剛健さんが鎧を脱ぎ始めた。


「ご、剛健さん!? 待ってくれ!!」


「剛健さん!! 他にもお客さんさんがいるから!!」


 慌てて止める俺達。だが、剛健さんはそのまま、全ての鎧を外し脱いでいまったんだ。

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