第48話 え? シャンプー配信? 魔獣達が喜ぶおもちゃを作ろう!!配信2

「今日は2種類のボールを作ろうと思います。1つはふわふわボール、もう1つは分からなボールです」


“あのボール作るんだ!”

“あれって作れるんだ”

“そういえばお店でふわふわボールを作る実演販売してたかも”

“分からなボールの方は見た事ないかな”

“そうか、でも作れるなら、ウチの子に作ってあげたいな”


「この2つのボールは、たぶん皆さんが思っているよりも簡単に作れるんですよ。この頃はお店でも作るセットを売っていたり、個々で材料を売っているので。オリジナルのボールが作れます。では最初に、ふわふわボールの方から作っていこうと思います」


 ふわふわボールの材料は、まずボールの部分は柔らかいふわふわしている素材の物と、ツルツルしている物を選んだ。ふわふわの方はみんなで遊ぶ用で、ツルツルはクーちゃんがツルツルが良いと言うのでそれを選んだ。


 それからボールの中に素材を入れるために、入れる場所を開かないといけないから。その開くための道具として、今回は500円玉くらいの幅の円柱の筒を使う。

 入れる場所にこの円柱を差し込んで、円柱にボールの中に入れたいものを通せば、しっかりボールの中に物が入るぞ。


 それからふわふわボールのふわふわ部分。飛びワタを袋に入れた状態で用意した。この飛びワタというのは、ダンジョンに生えている、淡い青色で花の部分がふるふると可愛く揺れる、フルリーという可愛い花があって。

 そのフルリーが種を飛ばす時、たんぽぽみたいな綿毛を飛ばすんだ。その綿毛のことを飛びワタって言うんだけど。

 

 このふわふわボールは、この飛びワタがないとできないんだよ。1つだけで売っていたり、まとめて売っていたりと自由に買えて。失敗した時用とまた後で作るかもしれないから、今回は15個入りを買ってきた。


 あとは飛びワタをボールに入れた後に、蓋をするんだけど。そのままでも良いが、よりしっかりと止めるために接着剤を用意し。


 そして最後、このボールを作る上で1番大事な道具、虫取り網もしっかり用意した。


“虫取り網? 何に使うの?”

“ああ、あれ飛ぶからな”

“飛ぶっていったって、たんぽぽの綿毛と一緒なんだろう?”

“あれくらいなら、飛んでもすぐに捕まえられるだろう”

“でも虫取り網なんて、それくらいにしか使わなくないか?”


「皆さんの言うとおり、この虫取り網は、飛びワタが飛んでしまった時に使います。まぁ、1つずつ袋から出すので、問題はないと思うんですが。ダンジョン産の物を勝手にその辺に飛ばしたり、捨てたりするのはダメですからね。もしもの時のために用意しておいてください。俺達は今日、天気が良いの今回は外で作業していますが、慣れていない方は部屋の中が安全です」


“それはそうよな”

“俺は部屋の中でやろう”

“注意はちゃんと聞かないとだな”


 別に罰金とか、何か罰が与えられるわけじゃないけど。研究や、もうすでに一般で売られている、地球の物とダンジョン産のものが組み合わされている物以外は、なるべく外に出すなって感じかな。


 もしかしたら勝手に飛んだ物や捨てた物が、地球の何かと合わさることで問題が起きる、有害な物ができる可能性もあるから。そうならないためにも、外へ出すのはあまりよろしくない。


「まずはどちらのボールも、入れる箇所を広げてしまいましょう。こうボールの皮を広げるようにして筒をはめ込めば……、このようにスッと筒を差し込む事ができます。どうです? ここまでは簡単でしょう」


“へぇ、軽くやってる感じだな”

“こうギュウギュウ、力を入れて差すんじゃないんだ”

“これなら良いな”


「では次に、いよいよ飛びワタを入れていきますが。ここからは1つずつ終わらせていきましょう。飛びワタの入っている袋は大きく開けないでくださいね。少しだけ開いて、ピンセットでワタを1つ掴みます。その後はすぐに袋を閉じてと……。こんな感じです」


 俺の手元で、ピンセットに挟まれている飛びワタが、ふわふわ今にも飛びそうに揺れている。


「そうしてすぐに、ボールの中へ。ここからはスピード勝負です。中へ入れたらさっと筒を外してください。そうしないとすぐに筒から出てきてしまうので」


“え? そんなにすぐ?”

“だって入れただけじゃん”

“少しは中に止まってないの?”


「これがふわふわボールを作る上で、1番難しい所ですね。本当にすぐに出てきてしまうので……」


『ねぇねぇ、このワタねぇ。いっぱいとばすと、とってもきれいでかわいいんだよ。きょうはねぇ、おそとがはれてるから、もっともっときれいでかわいいし。おそとではとばしていいんでしょう? どうしてふくろ、とじちゃったの?』


 は? クーちゃん今何て言った?


“あっ……!”

“横!!”

“まずい!!”


 視聴者さんの達の慌てるコメント欄を横目に、俺は急いでいま閉めたばかりの、飛びワタが入っている袋の方を見る。

 そこには袋を持って、今にも袋を開けようとしているクーちゃんが座っていた。そしてそんなクーちゃんを止めようと、慌てて駆け寄ってくるラビとププちゃん。


 だが俺もラビ達も間に合わなかった。普通に袋を開けるどころか、思い切りバンッ!! と袋を破いたクーちゃん。その思い切りの良さに、中の飛びワタが一気に周りに飛び出した。そうしてどんどん空へ向かって飛んでいく飛びワタ達。


「晴翔、虫取り網だ!!」

 

「こっちは任せろ!!」


「何でたくさん買った時に限って!! と、わわっ!? 向こうに飛んだぞ!!」


 マズイまずい!! これじゃあボールを作るどころか、外へ全部飛ばして、母さん達にどれだけ怒られることか。康伸叔父さんにも何て言われるか分からない。


 ラビとププちゃんがクーちゃんに、あれだけ飛ばすなら部屋の中でって言ったのにと、怒りながら一緒に飛びワタを集めてくれる。クーちゃんはそうだっけ? お外は良くてお家の中がダメじゃなかった? と、逆に覚えていた事が発覚。


“何て言ってるんだ!?”

“うわ!? こんなに飛ぶのかよ!?”

“これは虫取り網がいるわ”

“ああ、向こうの飛びワタが!?”

“拓哉さん、後ろの飛びワタがこれ以上飛ぶと!!”


 そうなんだよ。飛びワタは他のワタよりも浮遊力が強くて、どこまでも飛んで行ってしまう。

 だからその浮遊力を使って、少し重みのある物の中に入れると。今みたいにどこまでもは飛んでいかないけど、ふわふわ良い感じに浮かんで、面白い物が出来るんだ。

 

 ラビ達もこの飛ぶワタをいれて、ふわふわ浮かぶふわふわボールが大好きで、よく遊んでいるぞ。


 って、それは良いんだけど。どうしてこんな時に限って!! タイミング悪く強く吹く風。一気に舞い上がる飛びワタ。


 と、これはもうダメだと思いかけた時だった。急に飛びワタが、浮いているけてどその場に止まった。


『にょおぉぉぉ、ぬにょおぉぉぉ!』


 寝ていたはずのブーちゃんが、いつの間にか起きていて、結界を張り、飛びワタが飛んで行くのを阻止してくれたんだ。


『何騒いでるんだ、寝れないだろう!』


 と言ったブーちゃん。ブーちゃんナイス!! じゃない。ブー様、ナイスです!! 


 フンッと鼻を鳴らせて、再び仰向けになり寝始めるブーちゃん。それから急いで全ての飛びワタを回収した俺達。本当にブーちゃんのおかげで助かった。これでボールも作れるし、誰にも怒られないで済む。


“え? 逆に覚えてたの?”

“それであの豪快な袋破きかw”

“ラビたん達が怒ってるw”

“それだけ何回も言ってたんだろうなw”

“クーちゃん、次は気をつけようねw”

“ブーちゃんさすが!!”

“ここぞの時のブー様ですw”


 全てを集め終わった後に今の流れを話したら、視聴者さん達は大爆笑。喜んでもらえたようで良かった。でも俺は、まだ1つもボールを作っていないのに、体力と精神力をかなり削られたよ。

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