第49話 え? シャンプー配信? 魔獣達が喜ぶおもちゃを作ろう!!配信2

 ブーちゃんのおかげで何とか飛びワタを全て回収した俺達。すぐにクーちゃんのふわふわボールを作ってあげるから、大人しく隣に座っていてくれ、とクーちゃんに頼めば。クーちゃん用の小さな椅子に、すぐに座ったクーちゃん。


 やってしまったと、本当は分かっているんだろう。最初はちょっと困った顔をしていたが。途中から、さっきのは自分が原因じゃありません、って感じで、ニコニコしながら俺がボールを作るところを見ていた。


 そんなクーちゃんを、反対側の自分専用小さな椅子に座りながら、じっと見ていたラビとププちゃん。


 そんなみんなの様子に、俺が何とか挽回しようと、ここを注意した方がいい、ここはこうやった方がやりやすい、と説明をしている途中で。コメント欄は時々、俺のボール作りよりも、クーちゃん達の様子で盛り上がり。


“あの目つきw”

“そこから動くなよっていう圧よw”

“www”

“ダメだ。隣が気になるw”

“めっちゃ2匹に監視されてて草”

“クーちゃん知らん顔してるしw”


 ……俺のボール作りにも注目してくれ。


「それでは最後に蓋の部分を接着剤でくっ付けます。……はい、これでふわふわボールは出来上がりです。浮かせてみますね」


 俺が出来たてほやほやのふわふわボールから手を離せば、ふわふわとボールは勝手に浮き上がり。ラビの前に飛んでいってラビがチョンとボールを触ると、ふわふわボールはププちゃんの前へ。


 次にププちゃんがチョンと触れば、クーちゃんの方へ飛んで行って。クーちゃんは待ってましたとばかりに、しっぽで叩いて俺の方へ戻してきた。うん、ちょっとした問題はあったけど、ふわふわボールは成功だ。


“やべ、3匹見てたら終わってた!?”

“え? いつできたの!?”

“しまった、見逃した!!”


 ……やっぱりか。見逃した視聴者さんは、アーカイブの方でお願いします。


「どうですか。あの飛びワタを気をつけさえすれば、簡単にふわふわボールを作ることができます。ぜひ皆さんも作ってみてください」


“www”

“え? 簡単?”

“簡単って何だっけ?”

“さっきみんな虫取り網を持って、バタバタ動いててなかったか?”

“どうしても簡単って言いたくて草”


「ゴホンッ、では次に、もっと簡単な、分からなボールを作っていこうと思います!」


“あっ、流したw”

“そそ、次は分からなボールだw”

“次も何かあるといけないから、早く始めないとw”


 次こそは何も起こらないさ。今言った通りふわふわボールよりも簡単なんだから。そう思いながら、材料を紹介していく。


 今回はツルツルしたボールの皮と、ゴワゴワした物を用意。みんなの共通ボールががツルツルで、ゴワゴワがクーちゃんのだ。それとさっきと同じで円柱の筒と、蓋をくっ付けるための接着剤。


 そして最後に、分からなボールに必要な、分からな石だ。分からな石というのは、ダンジョンでよく見かける石で、ちょっとの衝撃で勝手に石が転がる石だ。

 ただ転がるんじゃないぞ。どこに転がるかも分からないから、それが魔獣達は面白いらしく。ラビ達はよくこの石を追いかけて遊んでいる。人の子にも人気だぞ。


 名前は、どこに転がるか分からない、といのから取って、分からな石という名前が付いた。


「それでは先ほどのように、筒をボールに差し込みます。石は少し深い入れ物に入れておけば大丈夫ですよ。衝撃で転がりますが、別に飛ぶわけではないので、」


“そうそう、大丈夫w”

“この石は飛ばないもんなw”

“え? 飛ぶんじゃないの?”

“もふっとチャンネルの石は飛ぶでしょうw”

“みんな信用してなくて草”


「残念ながら飛びませんよ。ただ、遊びで転がす時の注意点ですが、転がる方向が分からないのはもちろんですが、その時その時で転がる速度も違います。突然早く転がって、小さな子魔獣や人の子がビックリしてしまい転ぶこともあるので、そこは注意してあげてくださいね」


 俺は視聴者さんに注意しながら、どんどん作業を進めていく。飛びワタと違って、素早く筒を外さなくても良いから、それも楽でいい。そして最後にしっかりと蓋をつければ、分からなボールの出来上がりだ。ふう、こっちのボールは普通に作れたよ。


「これで分からなボールの出来上がりです。さっそく遊んでみましょう」


 俺は分からな石が入っている入れ物をどかし、他の道具もささっと片付けて、作業台に分からなボールを置く。ラビがチョンとボールを触れば、横へボールは移動。

 続いてププちゃんが触れば、斜めに転がるボール。と思ったら急旋回してラビの方へ転がってきて。こんな風にどう転がるか分からないのが、このボールの面白い所だ。


「こんな風に、簡単に面白いボールを作ることができます。そうですね。ふわふわボールよりも、分からなボールから作った方が良いかもしれません。ぜひ作ってみてください!!」


“お疲れ様ぁ”

“確かにこっちのボールから作った方が良いかも”

“さっそく今日買いに行くかな”

“ボールの素材は何でも大丈夫ですか?”


 視聴者さんの質問に答えていく俺。その間も新しいボールで遊ぶラビ達。ラビ達の遊ぶ姿も、視聴者さんは好きだからな。これも大事な時間だ。


 そう。大切な時間だったんだけど。クーちゃんが今日最後のやらかしをした。やらかしたというか、まぁ、今回は仕方がなかったっていうか。俺がちゃんと別の場所へ移動すべきだったっていうか。

 

 自分用のボールに、ニコニコだったクーちゃん。とっても喜んでくれたのは良かったんだけど。


 嬉しくていつもよりも、ブンブンしっぽを振って遊んでいたら、分からなボールが、分からな石がは入っている入れ物の方へ飛んで行って。それを追いかけたクーちゃん。

 その時に、見事入れ物にクーちゃんのしっぽが命中。入れ物が倒れて、そこら中に石が転がった。


 慌てて石を集めようと立ち上がる俺と、手伝ってくれようとしたラビ達。その時だった。転がった石の1つが、けっこう勢いよく転がっていたみたいで。

 そのスピードのまま、何かにぶつかり。そのぶつかった角度と速さが合わさって、ヒュッ!! と思い切り飛んだんだ。そう、飛んだんだ。


 飛んだ先は機材が置いてある所で、石は機材にぶつかると、今度は晴翔の方へ飛び。晴翔が避けると、今度は家の窓枠に当たり。

 その後は庭に刺さっているガーデニングライトに当たると、次に俺の頬をかすめ。最後は家の壁に当たり、ようやく止まった。


 頬を押さえて石を見る俺。それぞれ石を拾ってくれた格好のまま、飛んだっっp石を見るラビ達。帽子を押されたまま石を見る晴翔。そしてし~んと静まり返る中、ブーちゃんのいびきだけが聞こえて。


“え?”

“飛んだ?”

“飛んだよな?”

“見間違いじゃないよな?”

“え? あの石飛ぶの?” 

“いや、転がるだけだろう?”

“でも飛んだぞ”

“え? え?”

“みんな落ち着け!”

“状況を整理しろ!”

“分からな石は飛ぶ!!”

“だな”

“みんな気をつけような”

“うんうん”

“何を起こすか分からない。それがもふっとチャンネルの可愛い子達だ”

“だな”

“了解です!!”

“メモOKです!!

“そしてブーちゃんは色々と最強!!”

“それもだな”

“了解!!”

“OKです!!”


 まぁ、何だ、うん。みんな1度落ち着こうか。 

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